武蔵大学

ADAD2023.11.20

武蔵大学外観
武蔵大学キャンパス風景
武蔵大学外観
武蔵大学外観
MUSASHI UNIVERSITY

複雑な世界に立ち向かうための
教養を磨き上げる

文理融合の専門知と総合知
「ゼミの武蔵」のリベラルアーツ

徹底した少人数教育を貫き「ゼミの武蔵」として知られる武蔵大学。
2022年には、学部横断で一般教養に当たる科目を強化するため、
リベラルアーツ&サイエンス教育センターを設立。
不確実で予測困難な時代を生き抜く力を大学4年間で養うべく、
文理融合型のリベラルアーツの学びを提供している。
リベラルアーツの強化に至った背景や、具体的な教育の中身に迫る。
制作:東洋経済ブランドスタジオ

PRESIDENT

学長 高橋 徳行教授

100年継承される
教育思想
リベラルアーツの
進化と深化

PROFILE 学長
高橋 徳行教授

財界で活躍した根津嘉一郎が、教育事業を通して社会貢献するために設立した「旧制武蔵高等学校」をルーツとする武蔵大学。
旧制高校創設時に掲げた人材育成の方針「東西文化融合のわが民族理想を遂行し得べき人物」「世界に雄飛するにたえる人物」「自ら調べ自ら考える力ある人物」を「建学の三理想」として教育の根幹に据え、「経済学部」「人文学部」「社会学部」「国際教養学部」の4学部を設置。少人数教育を基盤としたゼミを柱に「自ら調べ自ら考える力」の養成に力点を置いてきた。
そんな武蔵大学が注力するのが、学部や分野を横断した学び「リベラルアーツ&サイエンス教育」だ。高橋徳行学長はこう説明する。
「専門知は経済学や心理学など特定の領域の知見を指します。一方、総合知とは全体を俯瞰し、専門知と専門知をつなげて新しい知識を生み出す力のこと。いま世界には多様な価値観と膨大な情報があふれており、同時に予測不可能な事態や課題に直面する機会が増えています。リベラルアーツ&サイエンス教育はそんな問題を解決するために、複数の学問や専門知識を掛け合わせ、さまざまな角度から課題にアプローチを行うための力を養成することを目標としています」

学長 高橋 徳行教授

リベラルアーツとは「人間が自由かつ自律的に生きるための学問」の総称を意味する。発祥は古代ギリシア・ローマ時代にさかのぼり、当時は文法・修辞学・弁証法・算術・幾何・天文・音楽の理論と実践を含む、多様な学問で構成されていた。
武蔵大学は、リベラルアーツとサイエンスをつなげることで、今、盛んに言われているデータサイエンス教育の重要性もしっかり見据えている。リベラルアーツ&サイエンス教育は、文理の垣根を越えた複眼的知識を身に付けるため、「総合科目」ではデータサイエンスの基礎や自然科学を学ぶことできるなど幅広いカリキュラムを用意している。こうした幅広い分野の学びは、私たちの社会に革新をもたらすアントレプレナー(起業家)に必要な能力や、グローバルで活躍するための能力を鍛えることにもつながると高橋学長は話す。
「アントレプレナーには、異質なものに拒否反応を持たず、従来とは異なる考え方や発想で臨む姿勢が重要とされています。この姿勢はリベラルアーツ&サイエンス教育の学びを通して養われます。またグローバル人材も世界の多様な価値観や文化と接するわけですから、アントレプレナー同様に、異質なものを理解する力が不可欠です。その意味で、リベラルアーツ&サイエンス教育は、これからの時代を生き抜くために必要な力を養うものと信じています」

VICE PRESIDENT

副学長 リベラルアーツ&サイエンス教育センター長 踊 共二教授

学問分野を横断する学び
全学部をつなぐ
独自の組織

PROFILE 副学長
リベラルアーツ&サイエンス教育センター長
踊 共二教授

学問分野を横断する総合的な学びの仕組みづくりを進めていることも大きな特徴だ。全学対象のカリキュラムを充実させるため、2022年4月に「リベラルアーツ&サイエンス教育センター」を設立。同センターは、学生が「総合知」「専門知」「他者と協働する力」「実践力」をバランスよく習得できることを目標に、全学生対象の総合科目や副専攻の企画立案と運営を担っている。踊共二センター長は、組織の特徴を次のように説明する。
「旧来は各学部の教員が集まって全学共通の総合科目の内容を議論し、割り当てを決めて提供していました。センター開設後は、武蔵大学のリベラルアーツ&サイエンス教育を一元的に企画・立案・運営する体制の構築を目指しています」

副学長 リベラルアーツ&サイエンス教育センター長 踊 共二教授

リベラルアーツ&サイエンスの総合科目は「情報とコミュニケーション」「歴史と文化」「現代社会」「自然と環境」「心と体」「ライフマネジメントとキャリアデザイン」の6分野で構成。どの分野も講義だけではなく実験や実習が充実している。
例えば「情報とコミュニケーション」分野には、情報通信技術が人間社会をどう支えているかを概説的に論じる講義からデータ分析の演習まで、多彩な授業を用意している。
さらに、専門知を補強するため、リベラルアーツ&サイエンス教育センターでは副専攻の運営にも注力。経営の実践力を養う「アントレプレナーシップ副専攻」、グローバル化が進む経済と企業のあり方を英語で考究する「エコノミクス&マネジメント副専攻」、グローバルリーダーにふさわしい知見と高度な英語運用能力を身に付ける「グローバルスタディーズ副専攻」の3つを開設している。
踊センター長は「学部学科で専門知を深めると同時に、リベラルアーツ&サイエンスの学びを通じて総合知に磨きをかけてほしい」と語る。
「卒業後は総合知を基盤にしながら、多角的な視点でビジネスや社会が抱える課題にアプローチできる人材として、さまざまなフィールドで活躍してほしいですね」

TEACHERS

リベラルアーツ&サイエンス教育センター 新原 将義准教授

【教員養成とリベラルアーツ】 教育心理学を通して
人間を深く知る
幸福な社会を追求できる
人材を育成

PROFILE リベラルアーツ&サイエンス教育センター
新原 将義准教授

武蔵大学の教職課程は、1957年に設置され、現在は中学校・高等学校の8教科で教員免許の認定を受けている。教職課程はリベラルアーツの色合いが濃く、地球的視野に立った幅広く深い教養と、優秀な社会人として活躍するための基礎力の育成を目指している。いわゆる「知識の配達人」ではなく、自発性と先進性をもって教育界と社会に貢献できる教員の輩出を目指したカリキュラム編成が特徴だ。
教育心理学の分野で教鞭を執る新原将義准教授は、人間が学ぶことの意味や教育と学びの相関関係など、学術的な視点から人間の成長や発達に深く切り込んだ講義を展開している。

リベラルアーツ&サイエンス教育センター 新原 将義准教授

「教員の根本的な役割は、人間の成長を支えることです。授業はあくまでも授業であって、教育全体の一部でしかありません。教員自身が全然知らない世界に進む子どもたちを応援するためには、自分自身が世界の広がりを理解することが必要です。自分は関心のない物事であっても実は長い歴史や文化が内包されていることを知ることができる、それがリベラルアーツの価値です。リベラルアーツを通して得た教養は、授業計画の奥深さなどに表出すると考えています」
武蔵大学では授業の上手さにとどまらず、学校の風通しや雰囲気をよくしたり、子どもや同僚の教員にいい影響を与えたりと、周囲の環境や人が好転するように働きかけられる教員の養成を目指しているという。
「人間の心を起点に、他者との関わり合いや社会的なシステムを学ぶことは、教員だけではなく、官公庁や企業などあらゆる組織で仕事をするときに生きます。教員以外の進路を選んだ学生にとっても、有意義な講義となるように内容を構成しています」

授業風景
授業風景
授業風景
リベラルアーツ&サイエンス教育センター 李 天舒専任講師

【文系学生のためのサイエンス】 自然科学と生命科学の
知識は
情報化社会で
自分を守る術になる

PROFILE リベラルアーツ&サイエンス教育センター
李 天舒専任講師

リベラルアーツ&サイエンスの総合科目6分野のうち、「自然と環境」分野では、地球環境と生物の基礎知識を身につけ、自然と人間の共生について考えることを目標に理系科目を用意。自然科学の基礎を学ぶ講義と、環境調査や実験室でのラボワークなど体験を重視した実践の科目群が充実している。
細胞生物学と薬学の研究者でもある李天舒専任講師は、2023年度から生物学の5つの講義「人間と環境」「生物学と現代社会」「生物の進化」「生物多様性の科学」「生物学のフロンティア」と、実践科目の「サイエンスラボ講座(生物学)」を担当している。李専任講師は、科目の全体像について、次のように説明する。

リベラルアーツ&サイエンス教育センター 李 天舒専任講師

「細胞と分子の働きなど生物学の基礎から最新の治療法まで学ぶ講義や、微生物の顕微鏡観察、PCR実験などの演習を通じて、文系の学生でも生命のしくみを科学的に理解できる科目を設計しています」
文系の学生がサイエンスを学ぶ意義について、李専任講師はこう続ける。
「情報が簡単に手に入る時代ですが、サイエンスの知識は信頼できる情報を選び取る原動力になります。例えば、新型コロナウイルス感染症では、ウイルスの変異が人々に脅威を与えましたが、微生物の知識があると、落ち着いて感染予防対策を講じることができます。サイエンスを学ぶことは生物や地球のメカニズムを知ること。それは自分の体や健康を守ることにもつながります」
自然科学や生命科学は、人間が生み出した叡智。文系理系問わず、サイエンスの基本知識や研究方法の知見を持つことは、人間への理解が深まり、社会を生き抜く上で武器になる。まさに、自由で自律的な生き方を後押しする、リベラルアーツ&サイエンスの学びそのものだと言えるだろう。

授業風景
授業風景
授業風景
リベラルアーツ&サイエンス教育センター 荒牧 亜衣准教授

【スポーツとリベラルアーツ】 スポーツする
身体を通じて
自由や人権、
多様性の尊重を学ぶ

PROFILE リベラルアーツ&サイエンス教育センター
荒牧 亜衣准教授

「心と体」をトータルにとらえ、健康づくりのスキルと姿勢を身につける総合科目では、さまざまな講義や実践科目が用意されている。荒牧亜衣准教授は、総合科目「心と体」の特徴をこう説明する。スポーツの哲学や歴史に関する授業では、スポーツを通じて社会の課題を学ぶこともできる。
「例えば、トランスジェンダーのアスリートがスポーツに参加する権利を問いなおすことは、人間にとって自由とは何かという問いにもリンクしています。参加する権利や公正さを競技スポーツではどのように捉えているかを知ることで、人間にとって重要な価値に気づくことができるからです。リベラルアーツとしてスポーツを学ぶことは、人間の身体を通して世界を見つめるきっかけになります」

リベラルアーツ&サイエンス教育センター 荒牧 亜衣准教授

また荒牧准教授の国際的なスポーツ大会に関する講義では、他者や異文化の理解に重きを置いている。
「スポーツによる異文化交流を理想とした国際競技大会においても、現実にはさまざまな問題があります。講義では意見を求める機会を多く設けています。当たり前のことに疑問をもち、異なる意見に目を向けてほしいと考えています」
スポーツを通して間接的に人間とは何か、世界とは何かを学ぶことができるカリキュラムには自身の変容を促し、主体的に行動できる人に成長してほしいという思いを込めているという。
「講義だけではなく、自分で体験するカリキュラムが揃っています。私の担当するバレーボールの実技では身長差による難しさだけでなく、基本技術を習得すればチーム内で役割が果たせることを体感することができます。講義での学びと実践に連続性があることも、本学のリベラルアーツの特徴だと思います」

授業風景
授業風景
授業風景
リベラルアーツ&サイエンス教育センター トーマス・ガリクソン専任講師

【英語教育と異文化理解】 グローバル社会で
求められる真の英語力
カギを握る
「学生の自立」とは

PROFILE リベラルアーツ&サイエンス教育センター
トーマス・ガリクソン専任講師

グローバル化とデジタル化が急速に進む中、英語教育にも現代化と高度化が求められている。リベラルアーツ&サイエンス教育センターで教鞭を執るトーマス・ガリクソン専任講師は、いつの時代も「学生の自立」こそが英語学習のカギを握っていると話す。
「私の授業では適切な語彙と表現を選んで効果的にコミュニケーションを図る方法を教えています。しかし実践的な英語の習得において何よりも必要なのは、英語に触れる機会を自ら主体的に作ること。留学や海外旅行、MCV(Musashi Communication Village)などを活用した留学生との交流など、積極的に英語を用いる場面を自らつくり出す自立性が重要です」

リベラルアーツ&サイエンス教育センター トーマス・ガリクソン専任講師

そう話すガリクソン専任講師は英語を武器にグローバル社会で活躍するためのポイントとして以下を挙げる。
「デジタル化が進む情報過多な現代においては、有益なものを吟味しながら活用する『批判的思考』のスキルが不可欠です。またコミュニケーションにおいては異文化理解の姿勢を忘れず、扱うトピックの背後にある社会と文化に目を向ける『社会言語学的アプローチ』を取ることも必要です。いずれにおいても大切なのは、成長のマインドセットを身につけ、自分自身で高い目標を追求する『自立した学習者』になること。大学での学びを通じて、世界で活躍するために求められる知見を身に付けてほしいですね」
幅広いリベラルアーツとサイエンスの学びを重視し、世界の大学と交流しているのも武蔵大学の特徴だ。センターは実践的な英語力を磨くための最新の教育カリキュラムとすぐれたスタッフによって学生の自立を応援し、それぞれの持ち場で世界を変えることのできる人材の輩出を目指している。

授業風景
授業風景
授業風景

STUDENTS

  • 受講した学生
    英語の論文からプレゼンまで幅広く学ぶ。
    4技能を向上させるだけではなく、
    専攻の学びを深める語学力を習得
    人文学部4年

    幼少期から海外に興味があり、大学では英語はもちろんのこと、他国の社会や文化、宗教などを深く理解することを目標としていました。履修した英語の授業で、学術論文の書き方からプレゼンの仕方まで多様なスキルを身につけられたことは、専攻する「人の多様性」について留学先で学びを深めるためにとても役立ちました。自分の追求するテーマが明確になったのは、英語でリベラルアーツを学んだからこそです。大学卒業後は英語や専攻科目を活かして、日本と他国を繋げる仕事をしたいと考えています。

  • 受講した学生
    サイエンスを実践的に学べる魅力。
    身に付けた深い思考力を強みに、
    卒業後は人権問題の解決に挑戦
    経済学部2年

    幅広い分野を学ぶため自然科学領域の「サイエンスラボ講座」を履修しました。講義では生命科学の基本的な知識や研究方法を学ぶだけではなく、牛乳のタンパク質の量を求めたり、植物の染料でオリジナルの布を作ったりと、身の回りにある材料をもとに実践的な自然科学を学べます。武蔵大学のリベラルアーツは幅広い教養を身に付けられるため、人間と環境、人間と社会の関係などについて深く思考する力を養うことができます。とくに人種による教育格差に関心があり、卒業後はNGO団体で国際人権保護の活動をしたいと考えています。

  • 受講した学生
    教職課程で学んだコミュニケーションの重要性。
    『疑問』を言語化して他者に伝えられるように
    人文学部2年

    教職課程を履修しています。武蔵大学では、1年次春学期から専門的な内容について調べて発表し、教授から直接フィードバックをもらえるなど、早い段階から学んだ内容を実践できることが特徴です。今後一層デジタル化が進んだとしても、人間同士のコミュニケーションは形を変えて残るはずなので、教育というテーマを通してその分野を学べる教職の授業は重要だと感じています。武蔵大学のリベラルアーツの授業は「なぜそう考えるのか」という問いを多く投げかけられます。これにより疑問に思ったことを言語化する能力を養うことができました。

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