製品やサービスを正確に伝えるのが Webサイトの役割

 ビジネスにおけるWebサイトの役割は、ますます重要性を増している。まずはインターネットで調べてから店舗へ出向く、メディアで紹介していたからWebで詳細を確認するというように、製品やサービスの購入、利用に至るまでにWebを活用する消費者が増えているからである。

 ただでさえ製品やサービスだけで差別化が難しいコモディティ化の時代だ。企業側も、そうした製品やサービスの購入、利用に至るプロセスを含めて顧客の期待を超えた「経験」を提供し、差別化を図っていこうという「カスタマー・エクスペリエンス」(顧客経験)向上の中核としてWebサイトを位置づけ、抜本的な改革に取り組み始めている。

 「まずは製品やサービスの情報を正確に伝えるのがWebサイトの役割」と話すのは、カシオ計算機・コーポレートコミュニケーション統轄部・ウェブ戦略部の増渕浩氏だ。同社では、1000モデル以上もある時計やデジタルカメラをはじめ、電子辞書、電子楽器、電卓、プロジェクターなど多種多様な品目をWebサイトで紹介している。総ページ数は言語あたり実に4000~5000ページに上り、欧米、中国を除く、海外エリアおよび日本のWebサイトの管理を日本で行っている。

 「製品やサービスをより深く知ってもらいたいのに、新興国のWebサイトは、ほぼ英語で展開していました。たとえ英語がわかる人であっても、母国語で読まないとわからないことってたくさんありますよね。母国語で展開すれば新しい顧客層も開拓できますし、現場からも、早期に母国語化してWebサイトをマーケティングに活用したいという声が上がっていました」(増渕氏)。

 しかし、と渡辺優子氏が続く。「既存のCMS(Webサイトを編集・構築することのできるソフトウエア)では、膨大なページを一つひとつ各国の言語に変換しなければならず、更新管理を行っていくのは不可能でした」。

Webサイトを多言語で展開したい

 現在、カシオの海外売上高比率は約55%。国内市場が縮小を続ける中で、今後も成長を描くには海外事業の拡大は欠かせない。しかも、組織体制が不十分な新興国での営業活動をバックアップするのに、Webサイトの母国語化は当然あるべきインフラ。これからカシオファンを獲得するためのコミュニケーション手段としても、大きな可能性があると考えられた。

 そこでカシオでは、手間をかけずに効率的に情報を配信できる新たなCMSの導入を検討。3社の製品を徹底的に比較した結果、「Oracle WebCenter Sites」の導入を決めた。「『Oracle WebCenter Sites』は、多言語管理と製品管理の両方が実現できる唯一の製品でした。“ページ単位”ではなく“部品単位”で管理するCMSなので、ページごとに修正を加える必要がない。製品のスペックや画像など、基本となるエレメントに変更を加えるだけで、すべてのサイトに変更が反映される、更新作業を劇的に効率化できる点が優れていました」(渡辺氏)。

 多言語化の対象となったのは、中南米向けのスペイン語版とポルトガル語版、韓国語版、タイ語版、ベトナム語版、トルコ語版に加え、中国語の繁体字版、インド向け・シンガポール向け英語版だ。翻訳とWebサイトの統合は日本本社が担当し、アジア・オセアニア地域の英語サイトを基本サイトとして2012年6月から順次多言語化していくことになった。

 その結果、母国語化前のサイトと比較してPV数が大幅に増加。タイ、ベトナムは380%アップ、韓国は175%アップ、インドは2倍、トルコは1.3倍と、集客数を伸ばした。「多言語化によってサイト数は増加しましたが、編集作業の効率化とメンテナンス性の向上で以前と変わらない人員で管理ができています」と話す渡辺氏は、「今回、新興国で急速に普及するスマホへの最適化も同時に実施しました。スマホからのアクセスも順調に増えています」と自信を見せる。

 「次はアラビア語への対応を進める」と意欲を見せる増渕氏は、「販売店経由の売り上げ比率が高い新興国では、Webサイトとリアル店舗を結びつけるO2O(Online to Offline)が、これからテーマになってきます。日本本社で一元的に管理することでガバナンスを効かせつつ、今後はローカル化にも力を入れ、各国拠点、リアル店舗、お客様から深く支持されるWebサイトをつくっていきたいですね」と語る。グローバル戦略のカギとしてITが機能している好例である。

  • コーポレートコミュニケーション統轄部 ウェブ戦略部 部長 増渕浩氏
  • コーポレートコミュニケーション統轄部 ウェブ戦略部 グループマネージャー 渡辺優子氏

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