
身なりや身だしなみといった外見は、ビジネスにどのような影響を及ぼすものなのか。これまで2万人もの人材と対面してきた日本最強のヘッドハンター・武元康明氏は、そこに人の「心」が表れると話す。
「優秀な人材は『心・技・体(しん・ぎ・たい)』が充実しています。人材の良し悪しを測る指針とされやすい専門知識やスキルにあたるのが『技』。第一印象や態度、行為にあたるのが『体』、人間性や心の有り様を表すのが『心』です。それらの資質を理解し、クライアントのニーズと合致しているかを見通してこそ、両者がWin-Winになれるマッチングを果たせると考えています」
ヘッドハンターの仕事は、比較的情報が公開されている『技』の資質を頼りに人材を見つけ、手紙を送り、面談のアポイントを取り付けるところから始まるという。ホテルのラウンジ、喫茶店やレストランで待ち合わせ、実際に対面する。
「『体』の部分で、第一印象は重要です。そこで、クライアントが求める人物像とはかけ離れた性格をお持ちなのだとわかれば、先に進むことはありません。もちろん、服装や腕時計にも注目します。そこにはその人の価値観や心の拠り所、すなわち『心』が表れるからです。なぜ、その服装や靴、腕時計、名刺入れを購入したのか、また今日という場に選んだのか。同じ会社で働く人間でもなければ、こうした『心』はその人の身なりからしか判断しようがないのです」
武元氏はその仕事柄、ファッションや服飾品のブランドにも精通している。面談した相手の全身を瞬時にチェックし、身に着けた製品を選んだ背景に考えを巡らせるという。「特に清潔感、いい意味でのこだわりがあるかを見ます。つめ、靴のかかとのケアなどは心の余裕がないとできません。やはり身綺麗な人はこだわりを持ち、自分をどう見せるかという自己プロデュース能力に長け、デキる人であるケースが多いのは、これまでの経験から確かです。決して高価なものである必要はなくバランスが大切です。多少背伸びする程度なら自己表現のツールとして十分活用できると思います」。
自分をどう見せたいか。身なりの点でも自己プロデュースを徹底できる人ほど、道は拓けていくようだ。"こう思われたい自分"を表現するツールとして腕時計選びを考えるのも一つである。