
GCMは日本企業が競争に
勝ち抜くための経営のベース
GCMの構築はどのように進めればいいのか。細かな技術論はともかく、そのアプローチは企業の置かれている状況により大きく異なる。すでにグローバルに事業を展開している企業では、グループ各社でできあがっている資金管理の体制を整理しながらGCMを再整備する。一方、これからグローバルに事業を展開していく企業は、GCMを意識した商流や資金流を設計してグローバル化のインフラとして整備を進める。
GCMの構築に向けた企業のパートナーに目を向けてみる。まず挙げられるのは銀行だ。邦銀はメガバンクをはじめ、GCMへの取り組みを強化している。日本企業のビジネスモデルを熟知した邦銀では、昨今、海外のサポート体制を強化しており、海外進出においても心強いパートナーとなるだろう。また、早くからGCMに取り組んでいる外資系金融機関は、多くのグローバル企業を顧客としてきた経験値を蓄えており、さらに海外での決済業務や為替取引などに強みを持っている。
GCMを支えるシステムも重要だ。銀行が提供するシステムも昨今は機能が拡充され、また、国内外の口座情報を集約、管理するためのパッケージ化されたソフトウェアが複数のシステムベンダーから提供されている。大規模なシステム構築を始める前に、まずは海外の銀行口座の情報を集約するなど、小さくスタートすることも考えられる。
コンサルティングファームに相談するのも有効な手段だ。現状分析や課題整理はもちろん、事業の規模や今後の展開に合わせたグループ全体のスキームの提案やその実現に向け、どの金融機関やシステムベンダーのサービスを組み入れるべきか、中立的なアドバイスが期待できる。
ますます複雑化しているビジネス環境下、日本企業がGCMを構築するにはある程度の時間がかかるであろう。しかし、日本企業がグローバル競争に勝ち抜き、成長を続けていくためには、GCMは欠くことのできない経営のベースとなるはずだ。


スイフト・ジャパン
ディレクター
原 大介 氏
SWIFTはベルギーに本部を置く、金融機関の取引に関するネットワークを提供する国際的な組織。世界200カ国以上、10000を超える金融機関が参加している。企業がSWIFTネットワークに参加することで、保有する銀行口座情報の集約が可能となる。
同社の日本法人スイフト・ジャパンでは、デロイト トーマツ コンサルティングをコーディネーターとして、事業会社の財務担当者向けにGCMのワークショップを開催している。毎回10社近くの企業が参加し、最新のGCMの事例について学んだり、それらを自社の財務にどのように取り入れるべきかなどの意見交換を行っている。
スイフト・ジャパンの原大介氏は「GCMの普及と発展のため、今後も情報提供を続けていきたい」と話す。

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