もう一つ、「藤田ほど稼いでいるならベビーシッターを雇えばいい」という意見にも、少し論点のズレを感じる。ベビーシッターを雇えることと、子どもを連れて仕事ができる場所があることも別の話だ。
そして何より、藤田一人の問題でもない。藤田のような人気タレントが声を上げたことで仮に託児所が作られれば、それを利用できるのはタレントだけとは限らないだろう。制作会社のスタッフや番組関係者など、子育てをしながらテレビの現場で働く人たちに利用対象を広げることもできる。
実際、8年前のNHK大阪のキッズスペースがそうだった。一人のために始めた環境整備が、結果として多くの人が使えるものになる。企業の福利厚生が手厚くなることは歓迎すべきことではないだろうか。
「この局の作品に出る」理由にすらなり得る
テレビ局に託児所が仮に設けられれば、子育てを理由に優秀な人材が仕事を辞めたり、仕事を断ることが減るだろう。そうすることはより面白い作品、質の高い作品にもつながっていく。企業にとっては大きな財産だ。
安藤が『まんぷく』への出演を決断できた理由は、もちろん家族の後押しなどもあったが、そこにはNHK大阪が一緒になって仕事を続けられる環境を考えたこともあった。その結果、我々視聴者は安藤サクラが演じる『まんぷく』のヒロイン・今井福子を見ることができた。
藤田の「テレビ局に託児所を」という言葉を、人気芸能人のわがままと捉えることは簡単だろう。しかし8年前には、すでにテレビ局が子育て中の出演者をきっかけに環境を整え、それを職員やスタッフにも開放した例がある。
そう考えると、今回問うべきなのは「藤田ニコルはわがまま」というような批判ではなく、8年前にNHKで似たようなことができていたのだから、むしろ26年にならばさらに進めた方がいいという前向きな意見ではないだろうか。
子育てをする人への支援に対し、「一部の人だけが特別扱いされている」という不公平感を抱く人がいるのは事実だ。また共働きが普通となり、日々の仕事と育児の両立に疲弊している人が多い今、人気タレントの要望が「恵まれた者のわがまま」に映る面もあるだろう。
ただ出生率は低下し、子育て支援が急務と言われながらも、環境整備が進まない今だからこそ、発信力を持つメディアの現場から率先して風穴を開けることには意味があるのではないだろうか。


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