実現までには長い時間がかかったが、大森市長は、事業を進めるうえで「市民の理解を得ることが一番大変だった」と振り返る。
駅前広場に路面電車を乗り入れれば、岡山駅前から出るバスや近くを走る自動車に影響し、渋滞が悪化するのではないかという懸念の声は大きかった。公共交通の利便性を高める一方で、自動車を利用する市民への影響も考えなければならない。
岡山市は交通量調査などを行い、事業による影響を検証してきた。実際、2019年には都市計画決定に至り、2020年にはバスの出入りへの影響についても検証。市は「ほとんど問題はない」と説明している。
路面電車の延伸は、軌道を延ばすだけではない。限られた駅前の空間を、路面電車、バス、タクシー、自家用車、歩行者がどう使うかという都市空間の再編でもある。
岡山駅前広場乗り入れの「次」にあるもの
岡山市の路面電車に関する事業は、岡山駅前広場への乗り入れだけで終わらない。
その先に計画されているのが「ハレノワ線(仮称)」だ。
2029年度末の運行開始を目標に、岡山芸術創造劇場ハレノワなどを結ぶ約600mの延伸を計画している。それにより環状化も実現する。既存路線の大雲寺前電停と西大寺町電停を結び、新たに「ハレノワ前」電停を設ける。路線は、単線左回りで、一部区間には歩道沿いに軌道を整備する「サイドリザベーション」を採用する計画だ。ハレノワ前の電停から信号を渡ることなくハレノワへ行くことができる。概算事業費は約27.4億円で、ハレノワ前電停の利用者は1日約700人、年間の運賃収入増加は約3100万円と見込まれている。

