こうした整備の背景には、岡山市中心部にある2つの人が集まるエリアをどうつなぐかという課題がある。
その2つの人が集まるエリアというのは岡山駅周辺と、駅から東へ約1km離れた表町だ。
まず、岡山駅周辺は、1891年に神戸から下関を目指して建設が進められてきた山陽鉄道(現・JR山陽本線)が岡山まで延伸開業して以降、鉄道の結節点として発展してきた。そのため、岡山駅周辺は物流倉庫や工場が点在し、現在のような商業集積地となるのは1972年の山陽新幹線岡山開業以降となる。近年では2014年にイオンモール岡山が駅前に開業し、駅周辺の人の流れにも大きな影響を与えた。
一方の表町は1597年の岡山城築城以降、城下町として発展してきた以前からの商業地だ。百貨店「天満屋」をはじめ、飲食店や商店、文化施設などが集まる。ただ、近年は空き店舗も目立つなど、集客面で課題を抱えている。
路面電車を活用し、市街地の回遊を促す
このように岡山市中心部には2つの人が集まるエリアがあるものの、それぞれ1km程度の距離があり、双方を行き来する人の流れが十分ではなかったことが、岡山市の長年の課題だった。そこで、この2つのエリアをつなぎ中心市街地全体を回遊してもらうために、路面電車の活用による課題解決策が浮上した。
これまで岡山駅から路面電車に乗るには、信号を2回渡るか地下通路を通る必要があった。初めて岡山を訪れる人には電停の場所が分かりにくく、乗り換えにも時間がかかっていた。
岡山市としても、路面電車が駅から見えにくいことを課題として挙げている。
今回の事業では、軌道を岡山駅前広場まで延ばし、JRと路面電車の乗り換えをよりわかりやすく、便利にする。
ただ、岡山市が目指しているのは利便性の向上だけではない。
岡山市の大森市長は今回の事業について、岡山駅周辺と表町の回遊性を高めることが目的の一つだと説明する。駅に到着した人を駅周辺だけにとどめず、路面電車を使って表町などへ呼び込み、中心市街地を歩いて回ってもらう。路面電車を、駅と街をつなぐ都市交通として活用する考えだ。岡山市も駅前広場へ乗り入れる目的を「公共交通の利便性向上」「中心市街地の回遊性向上」「岡山駅の交通結節機能の強化」と位置付けている。

