PEの魔の手は、一般の会社員が老後のために積み立てている「401k(確定拠出年金)」にまで及んでいる。
かつて、401kのような個人向けの退職金口座は、その安全性を最優先するため、流動性が低く情報開示もないプライベート・エクイティへの投資は法律で厳しく禁止されていた。
しかし、PE業界による凄まじいロビー活動の結果、トランプ政権時の労働省は2020年、歴史的なお墨付きを与える書簡を発出した。個人の401k口座の資金を、PEファームのファンドに投資することを容認したのである。
ブラックストーンの共同創業者スティーブン・シュワルツマンは、かつて「人生には夢が必要であり、その夢の一つが、一般個人投資家の資金へのアクセスだ」と熱く語っていたが、その夢は現実のものとなった。
個人向けの退職資金という「数兆ドル」にのぼる天文学的な未開拓市場を手に入れたことで、PEファームの運用資産はさらに膨張することになる。
だが、情報開示も流動性もないPEファンドに大切な老後資金を預けることは、個人の確定拠出年金を極めて高いリスクに晒す行為にほかならない。
最悪のディストピアが目の前に
リーマンショック時、投資銀行は破綻の危機に瀕した。しかし「次の金融危機」において、PEファームは同じ轍を踏まないだろう。
なぜなら彼らは、過剰な負債の返済義務をすべて買収先企業に負わせ、投資のリスクをすべて国民の保険金や年金に押し付けるシステムを完成させているからだ。
企業や保険会社が破綻して何万人もの市民が老後資金を失う傍らで、PEファームだけが悠々と繁栄し続けるという、最悪のディストピアが目の前に迫っている。


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