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「見えない品質」を支える「象基準」とは PSアワード「優良賞」を獲得した象印ならではの品質・安全の取り組み

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品質・安全に対する真摯な取り組みがPSアワード「優良賞」を獲得するに至った
品質・安全に対する真摯な取り組みがPSアワード「優良賞」を獲得するに至った
  • 象印マホービン 制作:東洋経済ブランドスタジオ
2025年11月に発表された経済産業省「製品安全対策優良企業表彰(PSアワード)」において、象印マホービン(以下、象印)は前年度に続き、大企業製造事業者・輸入事業者部門の「優良賞(審査委員会賞)」を受賞した。受賞の背景には、「暮らしをつくる」メーカーとして「消費者の信頼に応える」という強い信念の下、独自基準「象基準」を設け、組織的に品質・安全を徹底する姿勢がある。品質・安全に対する象印の真摯な取り組みについて、品質管理に携わる3名に聞いた。

「PSアワード」で高評価。全社を通じた組織的な品質・安全体制

「PSアワード」は製品の安全確保に関する企業の優れた取り組みを表彰する制度であり、品質や安全性の高さを客観的に評価するものとして知られている。象印は、初めて応募した2024年度から2年連続で「優良賞」を受賞した。

「これまで積み重ねてきたことが評価され、改めて自社の品質・安全に対する自信を深めることができました」

開発部門の品質管理を任される村垣 雅人氏がそう振り返るように、象印は早くから品質・安全の重要性に着目。他に先駆けて安全基準を策定し、業界の安全性向上にも貢献してきた。

「1980年に発売した電気エアーポットでは、元々当社がマホービンの開発からスタートしたメーカーとして、お湯が漏れてやけどする危険性をどこよりも深く理解していたため、自社独自に転倒流水防止基準を策定したのが最初です。後にこの基準は、JIS規格(日本産業規格)にも取り入れられました。まだ業界に基準やルールがない頃から独自に高い安全基準を作り、品質と安全を追求してきました。それを評価していただいたことが、嬉しかったです」

品質情報室長 村垣 雅人

それに加えてPSアワードで高く評価されたのが、品質・安全を確保する組織的な体制・仕組みが整備されていることだった。その1つが、事業部の垣根を越えた「横ぐし会議制度」だ。毎月1回、設計・品質・印刷・電子といった各事業部の担当者が集まり、情報共有する機会を設けている。

「各事業部が把握した製品の不具合などの情報を共有することで、他の事業部で同じ過ちを繰り返すのを防ぐことができます」と、奥村 雅一氏はメリットを語る。さらには、全社を挙げて取り組むべき課題にいち早く解決策を見出す場としても機能。サプライヤーが独断かつ非公表のうちに材料や仕様を変えてしまう「サイレントチェンジ」についても同会議で議論され、チェックリストを用いた年1回の品質実地調査や部品業者への巡回などによるサイレントチェンジ予防体制を確立した。

第二事業部 マネージャー 奥村 雅一

また、「PSアワード」では消費者の声(Voice of Customer)を製品の改善や開発に生かす仕組みについても、高評価を得た。消費者からのさまざまな声や問い合わせ、営業や修理現場からの事故や問題に関する情報はCS推進部に集約され、すぐに関係部署に通達されることで、迅速な対策が可能になる。加えて、「ユーザー視点」のニーズを改善・開発に直結させられる利点も大きい。

「以前、炊飯中の炊飯ジャーのフタと本体の間から蒸気が勢いよく噴き出すという事例が起きました。剥がれてしまった底面の滑り止めゴムを、お客様がそうとは知らずにフタの蒸気口に詰めてしまったのが原因でした。CS推進部の報告を受け、製品を改良。滑り止めゴムが外れない設計にすると同時に、万が一外れても、蒸気口に入らない構造に変更したのです」と、西山 潤氏は語る。

このように、実際に起きた事例と同じことが起きないように改良をスピーディに対応していくことはもちろん、象印では、利用者のあらゆる使い方を想像した製品検証や、開発段階での厳しい品質試験、量産品の出荷前に製品を全パーツ分解して検査する「全バラ確認」による不具合品の流出防止対策なども受賞理由に挙げられた。

第一事業部 マネージャー 西山 潤

一般規格を上回る独自の「象基準」で厳格な品質・安全検査を実施

品質・安全に対する象印の本気度は、体制・仕組みだけでなく、求める水準の高さにも表れている。それを象徴するのが、一般的な業界基準を上回る厳しい自主規格、通称「象基準」だ。

「例えば、製品の電源コードの折曲げ試験に関しては、電気用品安全法で2000回の耐久性試験をクリアすることが規定されていますが、当社ではそれをはるかに上回る回数の試験を実施しています」と村垣氏は解説する。そのほか、スチーム式加湿器では業界基準にない転倒流水規格を適用、ステンレスボトルのハンドルの強度はJIS規格を上回る基準を設定するなど、極めて厳しい条件を自らに課しているという。

さらには、ユーザーが間違った使い方をした場合など、法令や一般規格では規定されていない状況も想定している。「日常生活では、取扱説明書をきちんと読まずに使われたり、お客様の判断で想定外の使い方をされたりすることもありえます。それを『お客様の問題』と片付けず、真摯に向き合う。それが他には真似できない品質・安全につながっています」。そこには、「暮らしをつくるメーカーとして、お客様の日常生活を守る」という“日常生活発想”の揺るぎない信念がある。

その他にも、製品開発段階の品質・安全試験は多岐にわたる。「炊飯ジャーの1機種だけでも、フタの開閉や各種スイッチの作動試験など、試験項目は300を超えます」と西山氏。ロボットを使った耐久試験では、製品の想定寿命を超える10万回以上の動作を繰り返し、壊れないことを確かめる。ロボットによる試験だけでなく、手動でフタを開閉したり製品を高所から落としたりと、人による検証も重視する。

「力をかける強さや場所が一定のロボットと違い、人の操作にはバラつきがあります。それでも品質が変わらないことを確認するのが目的です。またスイッチを押したときの微妙な違和感や触り心地といった、ロボットには感知できない人の『感覚』の検証にも役立っています」(西山氏)

しかし、これらの「象基準」のクリアは通過点に過ぎない。「『他社と同じレベルではダメ』という暗黙の認識があり、従来機種や他社製品とも比較し、わずかでもそれらに劣るという結果が出た場合は、検証からやり直します」と奥村氏。さらには「死に様」にさえ安全性を追求するという。最終的に製品が壊れるまで試験を繰り返し、壊れ方を検証。その際にユーザーに危険が及ばないことを確認して、ようやく合格となる。

こうした品質・安全を追求する姿勢を、サプライヤーを含めた事業領域全体で徹底するのは、容易ではない。「特別に研修などを実施しているわけではありません。日々の業務プロセスや評価基準にその考えが組み込まれているので、自ずと実践することになるのです」と村垣氏は明かす。品質・安全の確保が仕組み化され、企業文化として根付いている。それが象印ならではの強みといえる。

「象基準」をクリアするための品質・安全試験(一例)

  • 全パーツを分解して検査する「全バラ確認」 全パーツを分解して検査する「全バラ確認」
  • オーブンレンジの電波漏れ確認 オーブンレンジの電波漏れ確認
  • ステンレスボトルのフタ開閉試験 ステンレスボトルのフタ開閉試験
  • 炊飯ジャーのフタ開閉試験 炊飯ジャーのフタ開閉試験
  • 使用性の評価検証 使用性の評価検証
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  • 全パーツを分解して検査する「全バラ確認」
  • オーブンレンジの電波漏れ確認
  • ステンレスボトルのフタ開閉試験
  • 炊飯ジャーのフタ開閉試験
  • 使用性の評価検証

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「象印なら安心」というお客様の信頼に応える覚悟

品質・安全は、事故が起きて初めてその重要性が認識されることが多く、消費者には評価されにくいものだ。しかし象印は、そうした「目に見えない価値」こそ大切にしている。「『象印製品なら、安心して使える』というお客様の信頼を、決して裏切らない。その使命感が、モチベーションになっています」と村垣氏。消費者からの『目に見えない信頼と期待』に応え続けることが、『象印』ブランドをかたちづくり、企業価値を高めているのだ。

現在は、象印ならではの品質・安全をベースに、メーカーとして魅力ある製品の創出にも力を注いでいる。

「例えば製品開発においては、『使いやすさ』と『お手入れ性』を重視し、できるだけ直感的でわかりやすい操作性や、使った後の掃除のしやすさなどを追求しています。こうした機能は、品質・安全にも直結します。操作性が高まれば、誤操作による故障を防ぐことができるし、お手入れが簡単なら、汚れの蓄積による部品の劣化や故障も防止できるからです。今後も、お客様の『日常生活の価値向上』と『品質・安全』の両方を実現する製品を創っていきたいと考えています」(村垣氏)

品質・安全への追求に、終わりない。「当社に対するお客様の信頼が高くなればなるほど、品質のレベルも上げていかなければならないと考えています」と村垣氏は言う。

さらなる品質向上を見据え、品質管理に関わる社員を対象に「品質管理検定(QC検定)」の受講を推進し、個々の能力向上にも努めている。「QC検定を受講して専門知識の裏づけを得たことで、生産委託先に対しても、説得力を持って品質の良し悪しや品質管理の重要性を説明できるようになりました。今後は製品の開発においても、品質管理の視点から課題解決策を提案できるようになりたい」と西山氏。個々の能力向上が、全社の品質・安全の底上げにつながりそうだ。

「泥臭さ、粘り強さが、象印の真骨頂です」と口をそろえた3人。これからも愚直に、誠実に、品質と安全を追求し、日常生活に喜びと驚きを届け続けていく。

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