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日本規格協会グループが描く未来へのロードマップ。「標準化」が産業競争力強化のカギを握る理由

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標準化を支える人材と組織の力とは
標準化を支える人材と組織の力とは
  • 日本規格協会グループ 制作:東洋経済ブランドスタジオ
国際競争の構図が変化する中で、技術そのものに加え、それをどのようなルールのもとに広げていくかが企業競争力の1つの要素となっている。その点で、標準化は規格整備にとどまらず、新たな市場形成にも重要な役割を担っている。創立80周年を迎えた一般財団法人日本規格協会も国際標準への対応やデジタル化、人材育成などを通じて機能を拡張している。

TOP Interview
80周年は次のステージへの転換点

――日本規格協会は創立80年を迎えました。

日本規格協会グループ 代表
日本規格協会 理事長
朝日 弘

朝日 1945年12月、終戦からわずか4カ月後に産業を立て直すという強い思いのもとで設立された組織です。その後、復興期、高度成長期、グローバル化の時代を経て、日本の産業基盤を支えてきました。80年は1つの区切りであり、次のステージへの歴史的な転換点だと認識しています。

――あらためて、「標準化」の役割をどのように捉えていますか。

朝日 標準は、ものづくりや社会の前提となる「最低限の決め事」です。サイズや相互接続の基盤だけでなく、用語や品質、安全の基準も含まれます。見えにくい存在ですが、なければ社会は成り立ちません。

――近年、標準化は国家戦略として位置づけられています。

朝日 技術競争に加え、ルールをどうつくるのかが市場獲得を左右する時代になりました。中国・米国・欧州など標準化戦略を明確に打ち出し、ルールメイキングで市場獲得を狙っています。そうした中で昨年「日本型標準加速化モデル」や「新たな国家標準戦略」が打ち出され、産学官による戦略的対応が進みます。私どもも、政府のリードに応え、これを伴走するため、4月に「国際標準化戦略推進センター」を設立し、国際標準の知見や国際標準化機関とのネットワークも蓄積してきました。今後は政策と連動し、国際規格の開発支援、知識共有、人材育成まで一体で支える役割を強化し、「つくる」「伝える」「使う」を一貫して支援する存在へと進化していきます。

――企業にとって、標準化はどのような意味を持つのでしょうか。

朝日 自ら関与した標準が採用されれば、その内容を理解した状態で市場に参入でき、有利なポジションを取る可能性が高まります。標準化は技術開発や事業戦略と一体で考える必要があり、市場形成や競争力の観点で不可欠です。

――「中期経営計画」で、サービスの量と質の向上を掲げています。

朝日 日本規格協会グループの事業規模は、欧米の主要標準化機関の数分の1と小さく、デジタル化が進む中で、国家戦略が進み、さらなる成長が期待できると考え、中期経営計画では2035年に100億円の事業規模の達成を目標に掲げました。例えば、規格は、デジタル情報として、ライセンシングされる時代に向かいます。AIの利活用に関するルールをはじめ、規格の販売法や利用方法など、ビジネスが大きく変わります。世界の標準開発機関は、デジタル商品の開発やサービス提供を行う体制の構築を急いでおり、とりわけ、デジタル人材の育成は待ったなしです。

――最後にメッセージをお願いします。

朝日 日本企業が自ら標準化に取り組む機運が高まっています。私たちも主体的に動き、標準化をリードする機関として成長し、戦略的な役割を果たしていきます。80周年を契機に、次の時代に向けて産業界とともに取り組みを進めていきます。

【座談会/若手社員が語る】
標準化の現場と担い手たち

若手社員が集まり、標準化の現場で何が起きているのか、日々の業務を通じてどのように産業界の競争力向上に関わっているのかを語り合った。ファシリテーターは、日本規格協会ソリューションズ代表取締役社長の下境健一氏が務めた。

下境 まずは、それぞれの業務内容についてご紹介ください。

ファシリテーター
日本規格協会ソリューションズ
代表取締役社長
下境 健一

西山 私は、規格の開発と活用の両面で、ITツールの導入や利用支援を行っています。現在、ISO・IECで使用されているツールの国内展開や、ユーザー向けのサポートなどで大きなテーマになっているのがJISのXML化で、約1万件を超える規格を構造化データとして整備しています。これにより、従来の文書形式では難しかった検索や再利用が可能になり、規格の使い方そのものが変わっていくと考えています。

標準化企画・管理ユニット
規格管理・情報化推進チーム
西山 幸宏

小谷 担当業務はJISの英訳やISO・IEC規格の邦訳に加え、海外の標準化機関や流通事業者との契約管理も行っています。規格は従来、紙やPDFとして提供されてきましたが、現在はデータとしての提供が進んでいます。それに伴い、著作権や流通の仕組みも変わりつつあり、海外との調整も含めて対応しています。

制作・出版部
国際規格課長
小谷 由紀子

野田 規格開発を支える制度運用と横断的な支援を担当しています。JIS原案作成の支援制度や、民間機関が規格作成を担う仕組みの運用などが主な業務です。加えて、デジタル化の推進にも関わっており、翻訳や委員会運営の効率化を進めています。

標準化企画・管理ユニット
規格管理・情報化推進課長
野田 孝彰

黒田 ISO規格やJISの開発に携わっています。国内委員会の事務局として、企業や研究者などの意見を取りまとめ、日本としての提案を国際の場に持ち込む役割もあります。規格は1つの組織で決めるものではなく、多様な立場の合意形成が欠かせません。社会に影響を与える成果につながる仕事だと感じています。

システム系・国際規格開発ユニット
基本規格チーム
黒田 優香

山田 企業向けの教育研修を担当し、品質管理やISOマネジメントシステムを中心に幅広い業種の企業に対応しています。品質管理は製造業に限らず、サービス業などでも必要とされる「管理技術」であり、さまざまな分野のお客様にご利用いただいています。その中で、環境マネジメントシステムに関する研修や、設計段階で品質不良を抑える品質工学の講座を受け持つほか、最近ではAI活用に伴うリスクをテーマとした研究会の運営にも関わっています。リスクがあるから使わないのではなく、リスクを理解したうえで活用するための支援を行う取り組みです。

下境 政府が進める「日本型標準加速化モデル2025」に見られるように、グローバル市場での日本の産業競争力向上において「標準化」ならびに標準化機関の果たす役割が期待されています。業務の中で、あらためて「標準化」の重要性を実感する場面はありますか。

野田 標準は日常生活やビジネスのさまざまな場面に存在していますが、普段は意識されません。しかし、製品やサービスを成立させる前提条件であり、不可欠な基盤です。近年は、企業が自ら標準化を活用して市場を広げる動きが増えています。ルールを守る立場だけではなく、ルールをつくる側に回ることで競争力を高めるという発想が広がっています。

黒田 国際標準化の現場では、日本が主導する案件もあります。例えば日本のある中小企業が、新しい測定技術を国際規格として提案し、それが採用されることで関連製品の市場拡大につながった事例があります。標準化が企業の競争力に直接影響することを実感しています。

下境 デジタル化が進展する中、規格のデジタル変革によって産業界での開発プロセスはどのように向上しているのでしょうか。

野田 規格開発のプロセスはこれまで人手に依存する部分が大きく、とくに翻訳や資料共有に負荷がかかっていました。近年は機械翻訳による仮訳の提供や、クラウド型のプラットフォームの導入により、議論の準備段階の効率化が進んでいます。今後はAIを活用した支援も行いたいと考えています。

西山 国際標準の執筆や合意形成を支援するツールの導入も進めています。これにより、複数の関係者が同時に作業できる環境を整え、日本としての意見発信の効率向上に向けた後押しを行っています。また、XML化により、規格がデータとして扱えるようになることで、企業のシステムとの連携などの可能性も広がります。

小谷 翻訳業務においても、データ活用により効率化が期待されており、提供価値そのものが変わっていくと感じています。これまでは紙に書かれている規格を人手で読み取り、打ち直すといった作業が必要でしたが、データとして扱えるようになることで、こうした工程は大きく変わります。規格の提供形態の変化に伴い、より迅速に届ける体制づくりを進めています。

※XML化:データをXML(Extensible Markup Language)というデータ記述言語に書き換えること。規格をXML化することで文章に修飾情報を与えることが可能となる。

標準化を支える人材と組織の力

下境 山田さんは教育・研修という面から、日本の競争力向上に寄与していますね。やりがいについて聞かせてください。

研修事業部
研修チーム
山田 泰聖

山田 規格は使って初めて価値が出るものです。その活用を支えるのが品質管理やマネジメントシステムであり、研修はその定着を支援する役割を担っています。受講をきっかけに社内展開に広がるケースも多く、企業の成果に結び付いていると感じます。また、オンラインやオンデマンドなど、提供方法も多様化しています。限られた時間の中で学べる環境づくりが重要になっています。

下境 標準化の動向など、私たちを取り巻く環境も変化しています。そうした中で、働く環境や制度、組織文化などをどのように感じていますか。

野田 標準化は専門性の高い分野ですが、実務を通じて習得できる環境にあります。若手にも早い段階で責任ある業務が任されるため、成長機会は大きいと感じます。

小谷 海外との関わりも多く、グローバルな視点で業務に取り組める環境があります。専門性を深めながら、他部門と連携して仕事を進める点も特徴です。

黒田 規格開発は合意形成が重要であり、調整力が求められます。国内の第一人者である専門家や企業の方々と議論を重ねながら進めていく中で得られる経験は大きく、社会に影響を与える仕事に関われる手応えがあります。また、働く環境面においては、ライフステージに応じた柔軟な働き方を選択できる制度が整っています。

西山 前例のない分野にも積極的に挑戦することができます。とくにデジタル化の分野では新しい取り組みが多く、試行錯誤しながら進めています。変化に対応しながら、自分の役割を広げていける環境だと感じています。

山田 先輩や上司には、標準化や規格に関して高度な専門知識を持っている人も少なくありません。それでいて、若手でも裁量を持って仕事ができ、上司や同僚とも相談しやすい環境です。自分の仕事が社会や企業活動に反映されている実感を持てる点が魅力です。

下境 皆さんの話を聞き、標準化は見えにくい存在でありながら、産業や社会の基盤として重要性が高まっていることをあらためて感じました。規格の開発から活用、人材育成までが連携することで、その価値はより発揮されていきます。企業にとっては競争力の基盤となる領域であり、同時に挑戦しがいのある分野だと思います。こうした役割について、より多くの方に関心を持っていただければと願っています。

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