大和ハウスグループが描く「成長戦略ストーリー」 トップが語る「価値創造の新たなステージ」とは

BtoB領域の成長を担うデータセンター開発
大和ハウス工業が成長ドライバーの1つに据えるのが、データセンターの開発だ。生成AIの爆発的普及や、さまざまな業界で起きているDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速が、データセンターへの需要を全国規模で押し上げている。
こうした潮流を捉え、データセンターの構築を社会的使命とし、データセンターブランド「DPDC(ディープロジェクト・データセンター)」を始動させた。代表取締役社長の大友浩嗣氏は戦略についてこう説明する。
「データセンター事業は3つの柱で進めています。1つ目は、千葉県印西市で展開している『郊外型データセンター』です。これらは大規模変電所などの巨大な電力インフラのバックアップがあり、継続的に事業を動かすことができています。
2つ目は、東京や大阪といった需要地に近い『都市型データセンター』です。ユーザーとの距離が近いほどデータの遅延が抑えられるため、都市部での展開は極めて重要です。立地の制約は厳しい側面がありますが、そこはわれわれの土地開発力を生かして、適切な場所をしっかりと選定・確保していきます。
そして、3つ目が2026年1月から新たに提供を開始したモジュール型データセンター『Module DPDC』です。当社のプレハブ技術を応用したモジュール型データセンターで、建物の外側だけでなく、内側の設備まで含めた提案をしています」
「Module DPDC」の用途の1つとしては、大学などの教育機関が挙げられる。学生の教育はもちろん、学内の研究や運営において重要な役割を果たすインフラになるとみている。ほかにも、個別の課題を抱える地方自治体や大企業でも、柔軟に配置できる「Module DPDC」の活用余地は少なくないだろう。
一方、こうした「建物と設備を一体で提案する」モデルをはじめ、データセンター事業を本格的に伸ばすには、電気・冷却・空調といった高度な設備領域まで含めたエンジニアリング力の強化が欠かせない。そこで大和ハウス工業は、住友電設を完全子会社化する大型M&Aに踏み切った。
「住友電設が培ってきた創業75年の技術力やノウハウに加え、半導体関連や高度な空調システム領域などの知見がグループに加わることで、われわれグループの技術基盤はさらに厚みを増します。今回のTOBは2025年10月に発表し、買収総額はわれわれとしては過去最大となる約2920億円となります。住友電設の技術力と事業領域は『技術の大和ハウス工業』への変革を加速する重要な推進力になってくれると確信しています」
不動産ストックを再価値化
データセンターに加えて、もう1つの成長軸が既存住宅の売買・リノベーション・リフォーム事業だといえる。2018年1月に創設した住宅ストック事業のブランド「Livness(リブネス)」には、「Live(住む)」とグループシンボルマークであるエンドレスハートの「Endless」を掛け合わせ、建物を未来へつなぐという意志を込めた。
「かつて、われわれの住宅ストック事業は、統一したブランド名がなく外部から事業内容が見えにくい状況でした。そこで、まずBtoC領域から土台を固める戦略をとりました。戸建てやマンションの買取販売から仲介、賃貸まで、ライフスタイルの変化にグループ全体で応える体制を整え、ブランドを統合しました」
こうした取り組みを進める中で、市場にも変化が起きた。賃貸住宅のオーナーの間で、相続を機に価値を維持して売却したいというニーズが顕在化。それにより、対応領域がおのずと拡大していったという。
事業規模が拡大する中で、大和ハウス工業がかたくなに守り続けている一線がある。
「住宅もマンションも、購入した物件には何かしらの付加価値を加えることを遵守しています。例えば、断熱性能や環境性能をアップデートする、ニーズに合わせた間取りにリフォームするなど、良質な住宅ストックとして社会にもう一度提案していく。それがLivnessの鉄則です」
2024年5月には商業・事業施設に特化した「BIZ Livness」も本格始動させた。工場、倉庫、オフィスといった企業不動産を対象に、建物の戦略的な再活用を加速させている。
サーキュラーエコノミーの観点からも建築ストックの有効活用はさらに注目されていくだろう。
※1 施工中・売却物件含(2025年3月31日現在)
独自領域で拓く木造・木質化事業
戦後、不足する木材の代わりに工場加工の鋼管を用いて「建築の工業化」を実現した大和ハウス工業は、現在、「木造・木質化建築」の拡大に注力している。
「Future with Wood」と名付けた新たな事業は、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルという社会的要請に応える、大和ハウス工業の創業精神に基づく事業ともいえるだろう。
「木質化という表現をしているとおり、木造だけでなく、鉄骨造やRC造に木造を組み合わせる混構造や内外装の木質化に新たな可能性を見いだしています。例えば、宿泊施設の最上階のみを木造化する、工場の別棟に平屋の木造を配するなど、機能性とウェルビーイングを両立させた柔軟な提案が、すでに成果を上げ始めています。とくに保育所や介護施設といった領域は木質化建築との親和性が高いのではないでしょうか」
さらに、民間の事業者が店舗やオフィスを木造で建設する事例も急増しており、木材の積極活用のニーズは高まっているという。
そればかりではない。注目すべきは、大和ハウス工業が見いだした「戦略的地帯」である。木質化建築では、4階建てまでの中低層建築を主戦場に定めた。
「建築基準法や消防法の規制が大きく転換する『4階建てまで、1棟3000平方メートル以下』というボリュームゾーンに絞り、これまで培ってきた鉄骨造建築のノウハウを最大限に生かすことで、われわれの強みが発揮できると確信しています」
この戦略を実行するため、全社を挙げた新プロジェクトとして垂直統合型の支援体制を構築した。全国各地の事業所からあがってくる現場の熱量を、本社の専任チームが高度な技術実装力で支える。専任チームの組成にあたっては社内FA制度で、精鋭35名を結集させた。
設計、施工、そして複雑なサプライチェーンの再構築など、各領域で豊富な経験と知見を持つプロフェッショナルたちが、自らの意思でFuture with Woodに合流。木質化建築の「新スタンダード」を目指している。
こうした成長領域に注力する一方、大友氏は「戸建事業は成長のコアであり続ける」と明言する。その自信の源泉は、創業の原点である「建築の工業化」が、現代の社会課題を解決する1つの解になると確信しているからだ。
「住宅市場にはネガティブな予測も少なくありません。しかし、当社の根底にある『工業化』をもってすれば、現場の職人不足が深刻化する今、工場生産比率を高めることでコスト競争力のある、高品質な建物を安定供給できると考えています」
そしてもう1つの成長エンジンが海外事業。グループの幅広い事業領域を生かし、北米やASEAN、欧州に展開。とくに北米は海外売上高の約8割を占め、今後の成長の大きな柱となる。
「変革」と「不変」が成長の源泉
2025年4月には従来の7事業本部制から「住宅系」と「非住宅系」を軸とする2大ソリューション本部体制へと刷新した。
「戸建てや賃貸住宅、分譲マンションを統合したハウジング・ソリューション本部と、商業施設や物流施設開発、環境エネルギー事業を統括するビジネス・ソリューション本部に再編しました。これまで各事業本部に分散・重複していた事業管理や技術機能を集約することで、経営リソースの最適化と業務効率の向上を図ります。縦割りの壁を取り払いグループの総合力を最大化させる。この組織再編が、さらなる成長の土台となるのです」
創業から71年を迎え、100周年に向けたダイナミックな変革の次の一手とは。大友氏はこう結んだ。
「今後の成長戦略においても、新たな展開が盛り込まれるでしょう。しかし、社会の要請に応えるという考えは創業以来変わらない当社の成長の源泉です。『変革』と『不変』。これらを両輪として、これからの不確実な社会に求められる商品・サービスの提供に真摯に取り組んでいきます」
「良質なストック」を提供し続ける使命感を抱きながら、データセンターを筆頭に新たな社会基盤をも支える大和ハウス工業。新たな成長ステージに入り、次にどのようなニュースが発信されるのか。その動向に注目だ。



