中小企業が直面する「IT対応力」の課題
――キヤノンS&Sのビジネスと、その実現のために求められる社員のスキルについて教えてください。
平賀(キヤノンS&S) 当社は全国に約150の拠点を持ち、主に従業員300人未満の企業のお客様に対する直販およびサポート体制でサービスを提供しています。中小企業、特に100人以下の規模になると、ITの専任担当者がいるケースは多くなく、ほかの業務と兼務されている状況が見受けられます。
実際、現場では「インターネットがつながらない」といったトラブルが起きるたびに、社長や担当者が一日中機器の前で格闘し、本来注力すべき本業が完全に止まってしまう。そんな光景が今も日本のあちこちで起きているのが実情です。
代表取締役社長 平賀 剛氏
しかしながら、中小企業にとってITの投資計画の策定から機器の選定・導入・運用・保守、さらには人材を育成するための社員教育までを自社で完結させることは、コスト面でも技術面でも大きな負担となり、非常に困難です。
こうした課題に対し、私たちはIT環境全体をトータルで支援する体制を整え、お客様を支えています。当社は従来、キヤノン製品のメンテナンスを主軸にサービスを提供してきましたが、今はネットワーク、サーバー、セキュリティ、さらにはネットワークカメラといったインフラ全体を私たちがまるごとお引き受けする能力を身に付けています。そして、その特徴を生かしたサービスとして「まかせてIT」シリーズを展開しています。
しかし、全国どの地域にも均一で高品質なサポートを提供するためには、エンジニア一人ひとりに、特定の製品だけではなく、インフラ全体を俯瞰できる高いスキルが必要です。多様化・複雑化し、ランサムウェアなどの脅威が忍び寄る中で、お客様の信頼を勝ち取り続けるための「人財力」の強化が急務となっています。
――アライドテレシスも、社員のスキル向上に力を入れているとのことですが、現代の企業におけるDX人財の重要性をどのようにお考えですか。
佐藤(アライドテレシス) 人財はもはやコストではなく、未来への投資と位置づけるべきものです。技術が急速に進化し不確実性が増す現代だからこそ、教育を通じて人財の力を最大化させることが、企業の成長を支える源泉であり、競争力を左右すると確信しています。
ただし、当社が重要だと考えているのは、単に技術がわかるエンジニアを増やすことではありません。得た技術をお客様の目線に合わせて、かみ砕いて提案できる能力の向上に力を入れています。
代表取締役副社長 佐藤 朝紀氏
例えば、製造業と医療機関では、抱えている課題も、響く言葉も違います。専門用語を並べるのではなく、相手のリテラシーや空気感を感じ取り、何に困っているのかを察して、最適な価値として提供する力。いわば人間力も含めた人財育成こそが、今のIT企業に課せられたミッションだと考えています。そして、単なるスキルの習得にとどまらず、自発的に学び続ける姿勢そのものを組織文化として根付かせることが、組織が進化し続けるためには欠かせません。
エンジニア教育に「実機を使える」ことの真価
――キヤノンS&Sでは、2023年度からエンジニア教育に、アライドテレシスが提供する教育・研修サービス「Net.Campus」(ネット・ドット・キャンパス)を導入されていると伺いましたが、自社の教育体制も持たれている中で、なぜ外部のプログラムを採用したのでしょうか。
平賀 当社のエンジニアにも、佐藤さんが話されたような能力が求められているからです。
最終的には、そのようなエンジニアを内製で育てる仕組みを持ちたいと考えていますが、今から自前でメニューを作り、研修センターを運営して全国のエンジニアを育成するには、今の世の中のスピード感に対して時間がかかりすぎると判断しました。特にネットワークの世界は変化が激しく、自分たちだけで網羅しようとすると、どうしても顧客へのフィードバックが遅れてしまいます。
アライドテレシス社の「Net.Campus」は、基礎から運用・設計まで体系化されており、何より「実機」を使ったハンズオン研修が組み込まれている点が最大の魅力です。座学やeラーニングだけでは、本当の意味での理解は得られません。実際に手を動かし、実機に触れることで、設定の意図やトラブルシューティングの視点が磨かれます。
また、アライドテレシス社は全国に拠点があるため、地方のエンジニアでも受講しやすい体制を整えていただけることも、全国均一の品質を目指すわれわれにとっては、重要なポイントでした。
佐藤 人間は、目で見て、耳で聞き、そして手で触れた感覚を最も忘れないものです。特にエンジニアは、自分が実際に触って、これは大丈夫だと納得し、安心感を得たものでなければ、自信を持ってお客様に提案することができません。この「触った経験」から生まれる安心感が、提案の説得力につながり、結果としてお客様の信頼を生むというサイクルが回っていくと考えています。
国内企業・地域密着のサポートが顧客の安心につながる
――両社の連携はエンジニア教育にとどまらず、ビジネス現場にも広がっているそうですが、どんな取り組みが行われているのでしょうか。
平賀 わかりやすい例が、ネットワークカメラのソリューションです。ネットワークカメラは、映像そのものだけで完結するものではありません。それを支えるネットワークインフラが安定してはじめて、本来の価値を十分に発揮することができます。高速かつ大容量の通信を24時間維持できるかどうかは、実運用の現場では非常に重要なポイントとなります。
しかし、ネットワークは重要なインフラではあるものの、その価値をお客様に伝えるのは簡単ではありません。特に展示会などの場では、機器を並べて説明するだけではお客様にその価値が伝わりにくいという側面があります。そこで当社は、アライドテレシス社と連携し機器との接続検証を共同で行い、「安心して動く」というエビデンスを得ています。
その結果、「この映像が途切れることなく映り続け、分析データが正しく出ているのは、裏側でアライドテレシス社のネットワーク機器が支えているから」と具体的に説明し、お客様に安心感を持っていただくことができています。技術者自身も、自分が学んだことが役立っているという自信を持って、お客様と深く向き合えるようになりました。

佐藤 キヤノンS&S社が持つ映像ソリューションの力と、当社の安定したセキュアなネットワークの組み合わせは、お客様の課題を解決する強力なソリューションであると自負しています。
当社はネットワーク機器専業メーカーでありながら、サーバーやクラウドを含めたITインフラをワンストップで提供できる強みを持ち、国内43拠点で地域密着のサポートが可能です。
特にお客様が気にされる安定した運用の面でも、当社の「Allied OneConnect」のようなクラウド管理サービスを通じて、ネットワークの可視化や迅速な障害対応を実現しています。
この「Allied OneConnect」と、キヤノンS&S社が提供されている「まかせてIT」を融合させた新たなサービスモデルの創出も進めていきたいと考えています。表側はお客様が安心できる「まかせてIT」でありつつ、その裏側の黒子として「Allied OneConnect」がネットワークを支えることで、より迅速で効率的な運用を提供できるのではないかと思います。
また、当社はさまざまな業種のお客様のご支援をしてきましたが、特に医療分野で培ってきた「止まらないネットワーク」の知見を、キヤノンS&S社が注力されている介護分野にも展開できると考えており、社会的に意義のある取り組みになると期待しています。
平賀 介護分野でもDXのニーズが高まっていますが、現場ではコストだけでなく「本当に信頼できるのか」をとても気にされます。トラブル時に誰がどのように対応してくれるのか、日常的な運用まで含めて安心して任せられるかといった点を不安に思われるお客様は少なくありません。
その点、当社と同様に全国に拠点を持つアライドテレシス社というパートナーがいれば、私たちは安心してお客様に永続的なサポートを約束できるのです。ITインフラの運用やトラブル対応は私たちが担い、お客様には本業にしっかりと集中していただく――その環境を整えることが、私たちの役割だと考えています。
ITの悩みから解放し、全国の中小企業の進化を加速させる
――今後、両社のパートナーシップはどう発展していきますか。
平賀 私たちのビジネスの目標は、中小企業の経営者や担当者の方が、ITのトラブルに頭を悩ませる時間をゼロにし、事業成長につながる活動に専念していただくようにすることです。
当社の「まかせてIT」を通じて、地域の企業が元気になり、雇用を生み、地域経済が回っていく。その一助となるよう、アライドテレシス社との連携をさらに深め、地域密着でのセミナーや共同提案の場を増やしていきたいです。
そして、多くのお客様にITがDXを加速させるだけでなく、自社の持続的成長を支える力にもなっていることを実感していただき、「ITで会社はもっと進化できる」という自信を持っていただきたいと考えています。
佐藤 今、日本の知的財産がさまざまな形で脅かされています。ITインフラの側面から日本の国益と知的財産を守っていくことは、IT企業としての当社の使命です。
そのときに、1社でできることには限界があります。教育プログラムで学んだ技術を、現場での実践を通じて確かな知識として習得し、そのナレッジを次の教育へと発展させるエコシステムを、キヤノンS&S社と共に作り上げていきたいと考えています。
今後、当社が直販で得た案件の構築や現場支援をキヤノンS&S社に委託するといったビジネス展開も視野に入れています。こうした取り組みも含めて、日本のあらゆる地域で、安心・安全なデジタル社会の基盤を支えていきたいです。

「Net.Campus」はアライドテレシスホールディングス株式会社、アライドテレシス株式会社およびグループ各社の商標または登録商標です。また、「Allied OneConnect」は現在、商標登録出願中の名称となります。



