体系的に専門性を極める学び、中央大学経済学部の「シンカ」とは より良い社会のために「行動する知性」を育む

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中央大学経済学部 後藤孝夫 学部長
社会に活きる多角的な視点を養い、仕事を「楽しいコト」にする
「實地應用(じっちおうよう)ノ素ヲ養フ」という建学の精神の下、時代に合わせて進化してきた中央大学経済学部。目まぐるしく変化し、複雑化する社会課題に向き合える力を育むため、さらなる「シンカ」(研究に基づく教育を「深化」「進化」させ「真価」を発揮し続けること)を目指して2027年春、現在の4学科から2学科へと再編予定。学科再編の目的と意義、目指す学びについて後藤孝夫経済学部長に聞いた。

※シンカ:研究に基づく教育を「深化」「進化」させ、「真価」を発揮し続けます

人や物の、より効率的な移動を経済学で追求

中央大学経済学部の後藤孝夫学部長の専門は、交通経済学。交通に関する様々な課題に対して主にミクロ経済学の視点から分析し、解決策を探ることでより良い社会の実現を目指す分野だ。「例えば渋滞などの道路混雑をどのようにコントロールするのかを考える際、社会にとってプラスになる方法としてどのような可能性があるのかを考えます。その1つとしてロンドンやシンガポールですでに実施されている混雑課金というものがあります。混雑しているということは、供給よりも需要が多いということ。それをコントロールするために、価格を上げたり下げたりすることで調整できないかなどということを研究しています」。

ロンドンの自転車レーンと混雑課金の標識
ロンドンにおける自転車レーンと混雑課金の標識

混雑するシーズンや時間帯で有料道路の料金を上げ下げし、交通量がどう変化したかというデータは公表されている。そうしたデータを分析することで、渋滞という社会課題の解決の糸口を探っていく。

「どれだけ価格が上がったらどれだけ需要が減るのかは、計算することができます。混雑そのものも経済学の理屈で説明することが可能です。しかし、理論上解決可能でも社会に仕組みを実装するには、多くのハードルが存在します。これから経済学を学ぶ学生には、データを分析し理論を深めるとともに、それを社会に活かすために、多様な立場が絡む諸問題に対し、最適解を導くための力も磨いてほしいと考えています」

現行4学科から2学科へ、専門性の高い学びを実現

中央大学は若き法律家たちによって1885年に「英吉利(イギリス)法律学校」として創設され、140年の伝統を持つ。経済学部は1905年に経済学科からスタートした。建学の精神である「實地應用ノ素ヲ養フ」の下、社会のニーズに合わせて進化し、現在は経済学科、経済情報システム学科、国際経済学科、公共・環境経済学科の4学科で構成されている。

「その時々で、関わってきた教職員や学生が進化させてきた経済学部ですが、歴史があるだけに今のニーズには合わない学問分野や学び方が混在してきていました。4つの学科それぞれに学びの目的がありましたが、社会の中でも経済学に求める役割が変化してきていることもあり、再編に踏み切りました」

経済学科、経済情報システム学科、国際経済学科、公共・環境経済学科の4学科は、2027年4月より新たに経済学科と社会経済学科の2学科に再編予定だ。再編の大きな目的は「経済学の基礎から応用までを体系的に学べるカリキュラムで、専門性の高い学びを実現すること」。変化のスピードが速い現代社会において複雑な課題に向き合い、解決のために考え、行動できる人材の育成を目指す。

※両学科とも仮称・設置構想中
「中大経済のシンカ」のヴィジュアルイメージ

新たな経済学科では、ミクロ経済学やマクロ経済学をベースに経済理論を深く学び、企業・産業・国際・環境などの広い範囲の問題に対して、理論とデータを用いてその本質を見抜き、政策提言などができる「分析力」と他者をおもんぱかる柔らかな「感性」を育んでいく。

社会経済学科では、経済学・統計学・経営学・会計学の専門知識をベースに、様々な立場、前提等から導き出される多様な考え方を深く学び、貧困やマイノリティー、ジェンダー、地域格差など多様な立場が絡み合う問題に対し、最適解に挑む「実践力」を養っていく。

「これまでの4学科では、学科を横断して比較的自由に履修科目を選択できました。再編に当たりカリキュラムも変更し、学生がより体系的に学べるように大学側で道筋を整えました。社会に出る際『自分が何を学び、何を身に付けたのか』を明確に提示できるようになってほしいと考えています」

新施設「7laBo(なならぼ)」
アクティブラーニングも可能な新施設「7laBo(なならぼ)」

すべての事象と行動を経済的視点で考える面白さ

後藤学部長は、「世界で起きている事象や人の行動の多くは経済学の視点から捉えることができます。諸問題について考え、解決策を導き出せる可能性があることが経済学の魅力」と話す。

「経済学部では、3年次にゼミ履修者を対象としたプレゼンテーション大会を開催します。その中で、学食のフードロス削減を行動経済学から考えたグループがいました。メニューの位置を変えることで、フードロスを減らすという試みです。生協や学食に協力をいただいて調査したのだと思いますが、視点を変えることで人の行動が変わる、変わったことでどのような変化があるのかを考察していました。これはナッジ理論といって行動を少し後押しするという行動経済学の考え方です。学生の新鮮な視点を経済学という専門分野と結び付けることで、新たな可能性や社会課題に対する画期的な解決策が生まれるチャンスは広がっていくはずです」

世界を今よりも幸せに、心地よく変える——。中央大学経済学部での新たな学びは、それを実現させる力を身に付けた人材を育んでいく。

これからの交通の課題解決の糸口をディスカッションしながら探る

後藤学部長のゼミでのフィールドワーク風景

「交通事業・公益事業を経済学で考える」が演習テーマの後藤学部長のゼミでは、ミクロ経済学をベースとした分析方法で学生が自ら決めた研究テーマを掘り下げていく。ゼミでは、国内外での合宿やフィールドワークを行っており、2019年の羽田空港でのフィールドワークを皮切りに、2025年には中部国際空港でフィールドワークを実施。「空港の利用者を増やすためにできることは何か」といった課題について、実際に空港で働く人に学生がアイデアを提案し、ディスカッションした。「座学では実施可能だと思われたアイデアが、現場の人にとってはまったく現実的ではなかったり、逆にこれは無理だろうと考えられていたことがきらりと光る意見となったり。学生たちは社会での課題を現場で見つけ、持ち帰って解決方法を探ることを通して、研究を深めています」(後藤学部長)。