「人の熱量」が都市を動かす、さいたま市の成長力 スタートアップが生まれ、成長し続ける街の条件

撮影場所:まるまるひがしにほん(東日本連携センター)
大宮駅東口から徒歩1分の好立地に2019年に開業。1Fはシティプロモーションフロア、2Fはビジネス交流サロンフロアとなっており、東日本の「ヒト・モノ・情報」の交流・発信拠点。
成長する都市の条件
“人の熱量”が街を動かす
AuB代表取締役CEO
鈴木 啓太氏
元プロサッカー選手。2000年〜16年1月Jリーグ浦和レッズ在籍。06〜07年日本代表選出。15年にアスリートの腸内細菌の研究成果より、ヘルスケア、フードテック事業を展開する、AuBを設立
鈴木 2000年に浦和レッズに加入してから16年間、さいたま市の変化をずっと見てきました。浦和・与野・大宮が別々の自治体だった時代から、さいたま市誕生、日韓W杯開催、岩槻との合併と、街は一気にスケールを広げていきました。現役時代に強く感じたのは「地域の人」の存在の大きさです。街が元気ならスタジアムも満員になる。その関係性はつねに意識していました。全国的に人口減少が進む中、さいたま市では若い世代が増えている。2000年から街の成長を見てきた立場として、まだまだ伸びる力を持った都市だと感じています。
清水 政令指定都市への移行は、さいたま市にとって大きな転換点でした。大宮駅には新幹線6路線が乗り入れ、高速道路網も充実し、東京へも近い。しかも賃料は首都圏の中では比較的抑えられる。この“地理的優位性×コストメリット”は企業にとって大きな魅力です。BCPの面でも、内陸都市であり、安定した地盤があることから比較的災害リスクが低い。人口の面でも若い世代が増え、多様な人材を確保しやすい環境も整っています(図1)。スタートアップ支援をはじめ、企業支援も充実しており、企業の成長を支える都市としての基盤が広がっています。鈴木さんのようにアスリートの経験を生かして事業を立ち上げる姿は、本市にとってひとつの目指すロールモデルであり、非常に心強く感じています。
スタートアップが越えるべき“最初の壁”
行政が生む時間価値
鈴木 創業初期は“ヒト・モノ・カネ・情報”すべてが足りない状態でした。研究開発型ベンチャーとしてゼロからの資金集めに始まり、研究、製品化、販売と必要な人材もフェーズごとに変わっていく。走りながら学ぶ日々で、10年経ってようやく理解できたことも多いです。大学との研究開発、行政の支援・補助金、産学官金の協力と、そして浦和レッズとのパートナー契約など、多くの方の力をいただきながら事業を続けてきました。
さいたま市長
清水 勇人氏
1962年埼玉県生まれ。2003年埼玉県議会議員就任、2009年より現職(現在5期目)
清水 スタートアップは研究開発から広報、人材確保、資金調達、販路拡大など、さまざまな課題に直面することと思います。そこで行政が果たせる役割は小さくありません。さいたま市には専門家による相談や経営のアドバイス、創業や経営の支援など、総合的な相談窓口として活用できる「さいたま市産業創造財団」があります。登記や資金繰り、補助金獲得支援など創業前後の“最初の壁”に対して専門家が丁寧に伴走支援を行う体制があります。芝浦工業大学や埼玉大学とのイノベーション協定を通じた産学連携の橋渡しも強化しています。創業者の思いを形にするための支援は、以前より大きく前進しています。
鈴木 スタートアップにとって最も大切なのは“時間”です。前に進めない時間が長くなるほどコストだけが膨らみ、成長が見えなくなれば会社は簡単に潰れてしまう。だからこそ、早い段階で相談し、外部の専門家に客観的に見てもらう価値は大きいと感じました。私たちはすべて自力で切り開いてきた分、どうしても遠回りが多かった。いろいろな課題を乗り越えるために、まず相談させてもらい、適切なアドバイザーにつないでもらえるだけでも、事業のスピードは劇的に変わると思います。
清水 創業者はアイデアや思いがあっても、各プロセスで課題にぶつかることもあるかと思います。私たちは、その“最初の壁”を越えるために、総合的に支援する体制を整えています。令和7年度よりスタートアップ支援として、「さいたま市アクセラレータープログラム」を実施し、伴走支援や補助金の交付などの支援を提供し、事業成長加速をサポートしています。また、本市に、新たに事業所を開設する場合にご利用いただける補助金やさいたま市中小企業融資制度もあり、行政が支援することで、課題の早期解決にもつながります(図2)。
産学官金が生む“信用と加速”
スタートアップを支える見えないインフラ
鈴木 創業当初、私たちのような研究開発型のスタートアップにとって、産学連携を行うことは重要な意味がありました。無名の会社が新しい研究を始めても信用は得にくい。だからこそ大学の先生と組むことで、「この会社は本気で研究している」という裏付けが生まれ、大きな支えになりました。研究から製品化、サービス、認知などさまざまなプロセスで企業にとっての産学連携のメリットは大きくなると思います。
清水 鈴木さんがおっしゃるとおり、研究開発型企業にとって産学連携は“信用の基盤”です。さいたま市では大学発スタートアップ創出・成長加速エコシステムの共創を実現するための「IJIE」に参画しており、大学発スタートアップの事業化推進にも取り組んでいます。また、企業間のオープンイノベーションの推進にも取り組んでおり、ビジネスマッチングを実施し、商談後のアフターフォローも経験豊富なコーディネーターがサポートすることで確度の高いマッチングを実現しています。
また、さいたま市が抱える地域課題は多様化、複雑化しており、それを解決していくためには企業の方々と共に取り組んでいかなければならないと考えています。25年度、地域課題解決に向けた新たな取り組みとして、盆栽村100周年を機に市の伝統文化である盆栽とビジネスを融合した「盆栽ビジネスコンテスト」を開催しました(図3)。全国から134件の応募が集まり、伝統産業の未来を開く、新たな価値を創出するプランが多数生まれました。受賞者に限らず、有望なビジネスプランに対しては産学官金で伴走支援を行い、次の100年をつくる産業へ育てていくことを目指しています。

鈴木 スタートアップは、創業したときはまだ「何者でもない」という立ち位置で始まります。だからこそ、行政などとの連携が社会・地域の方々から信頼してもらうきっかけになるのではないでしょうか。私たちもアカデミックな領域との取り組みから始めたことで「ちゃんと研究してプロダクトを生み出しているんだね」とステークホルダーに感じてもらえていたと思います。
生活と産業を支えるさいたま市の未来
鈴木 創業時に今日の話を知っていれば、東京だけでなく、さいたま市での創業の可能性もあったかもしれません。私には創業当初から「まちづくりに関わりたい」という思いがありました。さいたま・浦和に育ててもらったという実感があり、引退後に残ったのはファンや地域の方々とのつながりでした。だからこそ、街が元気で、好きなことを楽しめる場所であってほしい。ヘルスケアは健康そのものが目的ではなく、人生を豊かに生きるための手段です。健康や教育、スポーツなどの分野で、育ててもらったさいたま市のまちづくりに貢献できれば、それ以上の喜びはありません。
清水 鈴木さんのお話を伺い、私たちも大きな可能性を感じています。さいたま市は交通利便性や防災の面で、ビジネスに適しているだけではなく、教育・環境・スポーツといった分野でも全国トップクラスの評価を得ており、「生活都市」と「産業都市」の両面を持つ都市です。生活都市だからこそ、職住近接が可能で働く人の定着も見込めます。ヘルスケア、スポーツ、教育は、市としてまさに育てたい分野。街の強みを生かした事業が根付くよう、伴走支援をさらに強化します。
生活しやすく長く働ける環境があるからこそ、地元で人材が定着し、企業も成長できる。きめ細やかな支援を取りそろえておりますので、スタートアップを含め、多くの企業の方々にさいたま市をビジネス拠点として活用していただきたいと思います。
さいたま市で活躍する創業者の声
デジタルベリー
当社はホームページ制作やデジタルマーケティング、クロスメディア提案や、製造業支援に特化した「製造業ドットコム」を運営しております。創業時にはさいたま市に住んでおり、埼玉大学時代の経験や人脈を活かせると考え、さいたま市浦和区で創業し、2022年には社員の働きやすさや採用力向上を目的に、さいたま新都心へ移転しました。
さいたま市で事業を行うメリットは、支援体制の充実、職住近接による働きやすさや人材確保の優位性、産学官金との強いつながり、交通アクセスの良さなど多岐にわたります。創業当初は資金繰りや顧客開拓に苦労しましたが、市や産業創造財団の支援、ビジネスコンテストの受賞などを通して飛躍するチャンスをいただき、現在でも成長を続けることができています。
今後、さいたま市から日本を代表するようなスタートアップが生まれ、さらに成長していけるような場所となっていくことを期待しています。





