日本の物流危機に挑む「自動物流道路」とは!? SFの世界を実現!?官民連携でつくる産業地図

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EC(ネット通販)市場が拡大し、物流件数が増加しているわが国で深刻な問題となっているのが、輸送能力の低下だ。少子高齢化が進み、とくに平均年齢が高いトラックドライバーの急速な減少が懸念される。さらに、ドライバーの長時間労働規制を強化した「2024年問題」などもあり、2030年度には輸送力が34%(9.4億トン相当)不足するといわれている。そんな日本経済全体のサプライチェーンをも揺るがす危機に対し、官民一体で取り組み始めたプロジェクトが「自動物流道路」だ。その概要と具体的な未来構想を国土交通省の担当者に聞いた。

拠点間を無人・自動で運ぶ物流システム

国土交通省 道路局企画課
道路経済調査室 企画専門官
久保 尚也

「自動物流道路とは、道路空間に物流専用のスペースを設け、クリーンエネルギーを電源とする無人化・自動化された輸送手段によって荷物を運ぶ、新しい物流システムです。荷下ろしや積み込みもすべて自動化し、省スペースかつ安定的な24時間貨物輸送を目指します」

そう話すのは、国土交通省 道路経済調査室 企画専門官の久保尚也氏。2022年度には国内の宅配便取り扱い実績が50億個を超えるなど、物流負荷が高まっている多頻度小口配送をメインターゲットとする。

自動物流道路での輸送イメージ
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自動物流道路での輸送イメージ。規格化された荷姿の荷物を拠点までドライバーがトラックで運び、拠点間を自動で輸送。拠点での荷下ろしや積み込みも自動で行う

「荷下ろし・積み込みに使うパレットのサイズは荷物の大きさなどによって異なりますが、荷物の規格を決めてパレットを標準化することで、より効率的な輸送が可能となります。また、道路は高速道路の中央分離帯や地下を活用し、専用空間を整備。一般ドライバーが走行する道路と分離し、24時間365日の安定した稼働体制を構築します」

道路空間の利活用イメージ
高速道路の中央分離帯や地下を活用。一般の走行車線と切り分けることで、渋滞に巻き込まれることなく、拠点間を定時で移動することができる

自動物流道路の実現は、輸送量やドライバー不足を補い、カーボンニュートラル達成の一助にもなると、久保氏は期待を寄せる。

「将来不足する輸送量の約8~22%がカバー可能と見込まれ、さらに、わが国でCO2排出量の約1割を占める物流部門において、240万~640万(t-CO2/年)の削減が可能と想定されています。環境に配慮した持続可能な自動物流道路が、未来の物流インフラを支えていくことになると考えています」

115社の民間企業が参画し、実証実験もスタート

2025年5月には、運輸関連の民間事業者や公的機関をはじめ、多種多様な業界の人々が情報を共有し、意見交換をする「自動物流道路の実装に向けたコンソーシアム」を設置。ビジネスモデル、オペレーションの技術的な検証、インフラ整備のあり方など、定期的な話し合いが行われている。

「コンソーシアムにはすでに115社の民間企業が参加(2025年12月時点)し、自動物流道路の実装に向けて動き始めています。『物流の安定は日本経済の生命線。自動物流道路の整備を通じて、未来の社会基盤を築いていきたい』(大林組)、 『安定した供給能力確保は日本のサプライチェーンの効率化を支える。物流インフラ強化に寄与する自動物流道路構築に期待している』(花王)など、インフラを担う企業や、ユーザーとして道路を活用することになるメーカーをはじめ、さまざまな企業からのコメントも集まっています」

さらに昨年末から、官民連携で自動物流道路実装の実証実験がスタートした。搬送機器の自動走行、異常検知および回避行動、搬送機器の通信安定性など、自動物流道路の実装に向けた技術的課題の検証および運用に必要な条件整理などを行うため、6つのユースケースをピックアップ。2025年12月から2026年2月まで、約3カ月かけて実証実験を行った。

「これらの実験結果を基にブラッシュアップを重ね、2027年度までに、新東名高速道路の建設中の区間(新秦野―新御殿場)などで実験を実施する予定です」

国土技術政策総合研究所(茨城県つくば市)で行われた実証実験の様子
2025年12月に国土技術政策総合研究所(茨城県つくば市)で行われた大成建設らの実証実験。自動物流道路の本線を模擬的に再現し、パレットを積載した車両がトンネル内を自動走行。GPS電波が届かないトンネル内に位置を補正する反射体を設置して、位置を正確に把握できるかどうかを検証した
成田市で2月に行われたCuebus・Plibotらの実証実験
成田市で2月に行われたCuebus・PLiBOTらの実証実験。自動物流道路の本線を模擬的に再現し、各社の搬送機器に荷物を積載した状態での自動走行実験を行い、自動走行時の走行軌跡の逸脱や速度、荷物重量を変更させた場合の加減速の所要時間等を計測するとともに、自動物流道路本線の構造の検討に必要な情報を収集した

目指すは、10年後に東京―大阪間の一部での実装

「今後は、2030年代半ばまでに先行ルートでの運用開始を目指し、さまざまなシミュレーション、実証実験を重ねていきます。そして早期に道路の整備や開発フェーズに移行していくべく、制度を含めた事業環境整備も促進します」

インフラ整備には長期間を要するが、20年後、30年後の日本社会における自動物流道路が果たす役割は大きいと久保氏は語る。

地理院地図Vector
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2030年代半ばまでに、わが国で物流量が最も多い、東京―大阪間の一部での実装を目指している
出典:国土地理院「地理院地図Vector」、国土交通省「第10回全国貨物純流動調査」より作成

「ドライバーの待ち時間の軽減や配送効率の向上、CO2排出量削減はもちろん、ほかにもさまざまな効果が期待できます。例えば、専用空間という特性を生かし、電力、通信などのインフラを収容する、防災機能性を付加することで、大規模地震や短期間の強雨や大雪など頻発化する自然災害へも対応できると考えています」

荷物の小口化・多頻度化へのシフトで倍増する物流件数、トラックドライバー不足など、迫る物流危機は、国だけでなく、国民全員が向き合わなくてはならない課題だ。10年後に東京―大阪間の一部での自動物流道路の実装を目指す、官民一体の挑戦はこれからも続いていく。