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農業の6次産業化で、ふくしまを元気に 三菱商事復興支援財団

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
去る10月27日、福島県郡山市に「ふくしま逢瀬ワイナリー」が完成した。全国的に美味しくて有名な福島県産の桃や梨、林檎を使い、また新たに醸造用葡萄の生産を開始する農家を支援して、ワインやリキュールをつくろうという挑戦が始まったのである。いま、福島と聞いてワインをイメージする人はいないかもしれないが、将来ここが「ふくしまワインバレー」などと呼ばれる日が来るかもしれない。

「最初は、本当にワイナリーなんてできるのかと半信半疑でした」と、郡山市の箭内勝則氏は振り返る。「市としても、セミナーなどを通じて、農業の6次産業化について周知、理解を進めてきました。ですが、生産者である農家が独自で加工、販売までを手掛けるには負担が大き過ぎると感じていました」。

郡山市農林部園芸畜産振興課
課長補佐兼鯉係長
箭内勝則

6次産業化とは、第一次産業である農林水産業の生産者が、農林水産物の生産にとどまらず第二次産業、第三次産業である加工、販売までを手掛けることをいう。現在、農林水産省を中心に国をあげて推進しており、農業経営の多角化、第一次産業の振興を図るとともに地域活性化の起爆剤になると注目されている。ただ、農林水産業者が単独で進めるのにはハードルも多く、「企業が持つ資金力やビジネスのノウハウが6次産業化を進める大きな力となるのは言うまでもありません。企業が支援してくれるのは本当にありがたいと実感しています」と箭内氏は話す。

だが実際、6次産業化プロジェクトが始動するまでには時間がかかった。地元の人たちも「本気なのか……」と、箭内氏と同じように半信半疑に感じる人が多くいたからである。そこを何度も農家に足を運び、膝を突き合わせて熱く説明を行ってプロジェクトへの参加を呼びかけたのが、三菱商事が東日本大震災の復興支援を目的に設立した三菱商事復興支援財団だった。

待望の「ふくしま逢瀬ワイナリー」が完成

2011年の震災直後、三菱商事は4年間で総額100億円の復興支援基金を創設し、大学生向け奨学金の提供や、被災地で活動するNPOなどへの助成、被災地の企業に対する投融資で産業復興や雇用創出に寄与する取り組みを、財団を通じて行ってきた。2015年度からは5年間分の活動資金として35億円の追加拠出を決定。従来の活動を継続するとともに、郡山市と連携協定を結び、新たに「果樹農業6次産業化プロジェクト」を始動することとなったのだ。

「三菱商事復興支援財団が、郡山に事務所までつくったのには正直驚きました。本気度を感じましたね。三菱商事から多くの社員ボランティアの方がいらっしゃって、畑の整地や抜根作業を手伝って下さったことで、地元の方との信頼関係も徐々に強固なものとなっていきました」(箭内氏)。

ついに、そのプロジェクトを推進するエンジンとなる待望のワイナリーが、このたび郡山市逢瀬町に完成した。古くは三菱の創業者・岩崎彌太郎とのゆかりも深いこの土地に、醸造施設が本格稼働を始めたのだ。今後は、地元農家が生産する葡萄や桃、梨、林檎を年間30~50トン調達し、ワインやリキュールを製造、加工、販売していく予定である。早ければ2月にも出荷を開始するという。三菱商事・常務執行役員で復興支援財団の副会長を務める廣田康人氏は「当面は、ワインとリキュールを各6000リットル生産します。福島県内での地産地消を中心に旅館やホテルなど地元で販売していきますが、将来的には三菱商事グループの流通網などを活用することも検討しています」と話す。

 

ワインやリキュールが福島ブランドを向上させる

地元農家
菅野 豊

プロジェクトに参加する地元農家の菅野豊氏は観光葡萄園を経営していたが、震災の影響で客足が途絶え、閉じざるを得なくなった。これまでもワインに興味があり、メルローなど醸造用葡萄を10数年前から独学で栽培し、猪苗代や山形のワイナリーに醸造を委託したワインを仲間内で楽しんできた菅野氏だが、今回新たにカベルネソービニヨンとシャルドネの栽培を開始した。「いい葡萄でなければ、いいワインはできません」と説く菅野氏は、「これからも試行錯誤を繰り返しながら、郡山の土壌や気候に合った、福島らしいいい葡萄をつくる勉強を重ねて、必ずこのプロジェクトを成功させたい」と意欲を見せる。

地元農家
中尾秀明 中尾一明

一方、これまで生食用の葡萄を栽培してきた中尾一明氏、秀明氏の親子にとっては、醸造用葡萄の栽培は初めてとなる。「新たにメルロー、リースリングの栽培を始めました。葡萄栽培に必要な技術は、生食用も醸造用も基本的なところは変わらず、いままでのノウハウが活用できると考えています」と話す中尾親子は、「ワインを福島県の新たな特産品にしたい。そのためにも、品質の良い葡萄の提供を第一に、新しいことにも果敢に挑戦して福島のみんなを元気にしたいです」と意気込みを語った。

農家にとって6次化は冒険かもしれないが、そこに企業の力があれば心強いことだろう。実際、農家は経営の安定化を図ることができるというメリットもある。生食用だけでなく醸造用の葡萄も栽培したり、生食用の桃や梨、林檎を醸造に新たに活用することに加え、生産から加工、販売までを一貫して行うことで、農家は打ち手の選択肢が増えリスクを分散できるからである。また、ワインやリキュールが全国的に認知を得るようになれば、地元産の果物の価値がさらに高まり、ひいては福島県の農産物のブランド力向上にもつながる。

まだ、挑戦は始まったばかり。6次産業化が新しい復興のかたちとなるか、という期待の声もあるが、それにとどまらない日本の農業の新しい未来が、ここにあるのではないだろうか。