『休養学』著者お勧めの京都モデルコースを紹介 旅を「充実した休養」にするためのヒントとは

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南禅寺
初夏の京都の魅力を休養の専門家が読み解く(写真は南禅寺)
最近、疲れているな、と感じているビジネスパーソンに勧めたいのが、京都への休養旅だ。疲労を効果的に解消する休養のあり方について科学的に考察した『休養学』(東洋経済新報社刊)の著者で、休養に関するリテラシー向上に取り組む片野秀樹氏に、休養と旅との関係や京都のお勧めコースを聞いた。 

しっかり疲れを取る7タイプの休養とは 

休養と聞いて、多くの人がイメージするのは、睡眠をしっかり取ることや、家でゆっくりすることだろう。だが、ITが普及した現代のビジネスパーソンは、移動中も仕事をするほど忙しくしているため、身体のエネルギー消費を抑えて回復を待つ消極的な「休息」タイプの休養だけでは、疲れをうまく取ることは難しくなっていると、片野秀樹氏は指摘する。「仕事や活動をするための資本となる活力を蓄えるには、より積極的な休養の取り方が必要になっているのです」。

休養学では、7つの休養タイプを定義。これら多様なタイプの休養を意識し、複合的に組み合わせて休養することで活力が得られ、「濃厚な休養」につながると片野氏は提唱している。

片野 秀樹氏
片野 秀樹
博士(医学)。
東海大学健康科学部研究員、東海大学医学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現在は一般社団法人日本リカバリー協会代表理事、一般社団法人博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所公認講師(休養学)、一般社団法人日本疲労学会評議員も務める。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解消のためにリテラシー向上を目指して啓発活動や教育事業として休養士の育成活動に取り組んでいる。編著書に『休養学基礎 疲労を防ぐ! 健康指導に活かす』(メディカ出版)、著書に『休養学:あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)

まず、身体の機能・組織を整える生理的休養には、「休息」タイプのほかにも、軽微な動きで血流を促しデトックスを促進する「運動」タイプ、食事量を減らしたり、ゆったりと味わって食べるなどして体調を整える「栄養」タイプがある。

一方、心理的休養も大切で、家族や恋人、友達などと親しく交流して感情をポジティブにしたり、森など自然との触れ合いを通して活力を得たりする「親交」、自分がやりたい趣味・嗜好を追求して快楽体験する「娯楽」、創作活動や、空想・瞑想といった没入体験によって日常のストレスから自身を解放する「造形・想像」の各タイプが挙げられる。

さらに、社会的休養として、自身を取り巻く環境を変えてリフレッシュする「転換」タイプがある。

旅に出ることそのものは、環境を変える「転換」タイプの休養に当たる。「とくに日常では感じる機会の少ない『歴史的な雰囲気』に触れることができる古都・京都への休養旅の効果は大きいと思います。さらに、旅先で回る名所・旧跡などでの休養の仕方が、7つのタイプのどれに当てはまるのかを意識する。これが、より多様で、充実した休養を取るための助けになるはずです」。

活力を上げる7つの休養モデル

充実した休養になる京都旅のモデルプラン

初夏の京都旅。今回、片野氏の監修の下、JR東海が展開する「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンとの協働によって、効果的な休養を取れそうなモデルコースを提案する。哲学の道の散策に始まって、永観堂、南禅寺、京都市京セラ美術館を巡り、福寿園京都本店での茶道体験を経て、東福寺まで足を延ばすコースを紹介しよう。

コース紹介 マップ

哲学の道の散策

琵琶湖疏水分線に沿った約2キロメートルの小道の散策。片野氏は「疏水のせせらぎ、沿道の並木をゆったり楽しめるので、日常と異なる環境に身を置く『転換』タイプ、散策で身体を動かす『運動』タイプの休養にぴったり」だと語る。

「哲学の道」という名称は、大正から昭和にかけて、京都帝国大学の哲学者たちが、思索にふけりながらこの道を歩いたことに由来している。「そんな昔の哲学者たちの姿に思いをはせながらの散策はさらに『造形・想像』タイプの休養としてもふさわしいでしょう」。

永観堂

東山のふもとに立つ永観堂は、約3000本を数えるカエデの木が境内に枝を広げている。古くから秋の紅葉の名所として親しまれてきたが、初夏から夏にかけての青もみじも評判だ。「庭の木々や自然との触れ合いは、人との交流とともに『親交』タイプの休養のカギになります」と片野氏。

さらに境内の石段を上がった先に立つ多宝塔の脇にある休憩所からは、京都市内を一望することができる。「古都の街並みを俯瞰しながら休息を取り、さまざまな想像を膨らませてみるのも、『造形・想像』タイプのよい休養になるはずです」。

永観堂
境内にある約3000本の青もみじの表情をさまざまに味わうことができる永観堂
臥龍廊
山の斜面に架けられた臥龍廊は、階段を上がるたびに視点が変化する

南禅寺

南禅寺の三門は、江戸時代初期に藤堂高虎公が大坂夏の陣で犠牲になった家来を慰霊するため建立した。重要文化財に指定されており高さ約22メートル。ここから見渡す広い境内には、国宝の方丈をはじめとする歴史的建造物が立ち並び、東山山麓の木々の緑も鮮やかだ。また、境内の端にある明治期の水路閣も見逃せない。琵琶湖から京都に水を引くために設けられた琵琶湖疏水の一部で、古代ローマの水道橋風のレンガ造りのアーチは周囲の景観にも溶け込んでいる。

「木陰での休息、豊かな木々との『親交』タイプの休養のほか、禅院の静寂な環境の中で日常のストレスから離れる『転換』タイプの休養ができます。鎌倉時代の開山から室町、安土・桃山、江戸、そして明治と時代を重ねてきた歴史を思えば、『造形・想像』タイプの休養にもなり、濃厚な休養になりそうですね」

南禅寺の三門
南禅寺の三門。どっしりと構えた大きさに圧倒されそうだ
琵琶湖疏水の水路閣
琵琶湖疏水の水路閣は新たに国宝に指定されることとなった

京都市京セラ美術館

1933(昭和8)年に創建された京都市美術館は岡崎公園のシンボリックな存在として親しまれてきた。2020年に大規模改修を実施し、京都市京セラ美術館の通称を得てリニューアルオープン。国内に現存する公立美術館建築としては最古となる貴重な歴史的建造物で、その本館を保存しながら新たな機能を追加。それまで未利用だった本館の中庭は、多機能な大空間として生まれ変わった。京都画壇の名作をはじめとする京都の美術作品などを収蔵し、近代美術から現代美術まで、多彩な展覧会を開催している。

「美術ファンにとっては、趣味を追求する『娯楽』タイプの休養になり、作品の成り立ちや背景に思いを巡らせば、『造形・想像』タイプの休養を取ることができるでしょう。歴史的な建造物の中で美術品に囲まれ、日常とは違った空間の中に身を置くことは、『転換』タイプの休養としても効果的ではないでしょうか」

京都市京セラ美術館
撮影:来田猛
京都市京セラ美術館の鉄筋コンクリートの近代建築に和風の屋根をのせた特徴的な外観は、昭和初期に流行した和洋折衷の建築スタイルだ
京都市京セラ美術館 本館内2カ所の中庭
撮影:来田猛
これまで使われていなかった本館内2カ所の中庭は、竣工当時の意匠を生かした大空間として生まれ変わった

福寿園京都本店

1790年創業の老舗茶舗・福寿園が、京都中心部の四条通沿いに構える京都本店。お茶を通して出会いの場を創成すべく、「京の庭」「京の光」「京の技」をテーマとしたしつらえと演出が施されている。宇治茶のほか、宇治茶を使ったスイーツ・フランス料理、茶器・茶道具など、さまざまな角度から、宇治茶の魅力と、その文化を発信している。

4畳半の茶室「無量庵」では茶道体験も提供。茶のいただき方のレクチャーを受け、先生のお点前(てまえ)を見ながら主菓子と薄茶で一服。さらに、自分自身でお茶を点てる体験ができる。

「小さな躙口(にじりぐち)をくぐって茶室に入り、床の間の掛け軸を拝見する。わびさびの美意識が具現化された非日常の空間での体験は、『転換』『造形・想像』『娯楽』タイプの要素のほか、ビタミンやミネラルが豊富で温かい抹茶をいただくことは、『栄養』タイプの効果も期待でき、幅広いタイプをカバーした優れた休養となるはずです」

福寿園京都本店の1階「京の茶舗」
福寿園京都本店の1階「京の茶舗」では、京都本店オリジナルの宇治茶を取りそろえている
ゆったりと心落ち着く空間での抹茶体験
ゆったりと心落ち着く空間での抹茶体験を。いただき方のレクチャーもしている

東福寺

モデルコースの最後は、京都駅のさらに南に足を延ばし、大伽藍を有する東福寺へ。約6万坪もの広大な敷地には、国内に現存する中では最古とされる、国宝の三門をはじめ、1380年に架けられたという橋廊「通天橋」も名高い。鎌倉・室町時代の絵画、宋より持ち帰った書蹟(せき)類など、貴重な文化財が数多く収蔵。昭和を代表する著名作庭家による「八相の庭」も人気がある。

「禅宗寺院らしく、歴史的建造物と豊かな自然が調和した静かな空間が特徴で、初夏から夏にかけては、境内を横断する渓谷・洗玉澗(せんぎょくかん)に架かる通天橋からの青もみじが美しいと聞きます。木々の緑を楽しむ『娯楽』タイプ、自然との『親交』タイプの休養効果が期待できそうです」。

EXサービス会員向けの「EX旅先予約」では9月30日まで期間限定で、東福寺の拝観券と「そうだ 京都、行こう。」コラボお守りがセットになったプランを発売中。京都旅の記念になるだろう。

東福寺の八相の庭
近代禅宗庭園として名高い東福寺の「八相の庭」
新緑と東福寺をモチーフとした期間限定のお守り
「寺院×そうだ 京都、行こう。」コラボお守りを授与。新緑と東福寺をモチーフとした期間限定のお守りだ

「EX旅先予約」では、その他の寺院でも、青もみじや竹林の名所である寺院をモチーフにした「そうだ 京都、行こう。」オリジナル 刺繍お守りを授与いただける体験を購入できるそう。

オリジナル 刺繍お守り 左 高台寺、右 天龍寺宝厳院

プランのご購入はこちら

東福寺の青もみじを楽しむならこちらもおすすめ。

「EX旅先予約」では、紅葉の名所として知られる東福寺にて、拝観時間終了後に貸切で、本坊庭園と通天橋を人数限定でお楽しみいただける体験を発売中。
設定日:2025年6月21日(土)、7月19日(土)、9月20日(土)

東福寺 本坊庭園
国指定名勝 東福寺本坊庭園 東庭

プランのご購入はこちら

休養旅の目的を持って、自分のペースを大切に

充実した休養旅を過ごすには「休養という目的を明確に持ち、自分に合ったペースで行動することが大切です。より多くの皆さんが、休養の必要性を意識して、積極的に休む姿勢を持ってほしいと思います」と片野氏は訴えた。

JR東海の観光情報サイト「そうだ 京都、行こう。」では、今回紹介したコース以外にも、初夏から夏の京都を巡る、休養旅のモデルコースを紹介している。片野氏の解説も付いているので参考にしてほしい。

「そうだ 京都、行こう。」の休養旅モデルコースはこちら