NTTデータグループの「骨格」をデザインする ビジネスを支えるグローバルガバナンスの挑戦

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右から/熊田 良太氏、藤井 稔乃氏、豊田 麻子氏、布施 健太氏
2023年に大規模な組織再編を行ったNTTデータグループ。その中で、グローバルビジネス全体のガバナンスを担うのがグローバルガバナンス本部(以下、GGH)だ。GGHは、世界各地にある600社超によるグローバルビジネスを支える仕組みづくりを担っている。近年、日本企業のガバナンスのあり方が注目される中、具体的にどのような取り組みを展開しているのか。GGHのトップと、現場の最先端を走るメンバーに取材した。※当ページの内容は、2025年3月に取材したものです。

約20万人を擁するグループに必要な「枠組み」をつくる

――2023年に大規模な組織再編を行ったNTTデータグループ。その中で、GGHはどんな役割を果たしているのでしょうか。

豊田 現在、当グループは世界50カ国・地域に600超のグループ会社があります。従業員は約20万人で、そのうち約15万人は外国籍です。

会社がグローバルに拡大しながらスピード感をもってビジネスを進めていくには、日本の常識や暗黙知に頼るのではなく、世界中の社員が共通認識として有すべき「枠組み(フレームワーク)」を策定・明文化し、浸透していくことが大切です。

この一連の取り組みを推進し、グループ全体のビジネスの持続的な成長につなげていくことが、GGHの役割です。

常務執行役員 CRO グローバルガバナンス本部長 豊田 麻子氏
常務執行役員 CRO
グローバルガバナンス本部長
豊田 麻子
1990年郵政省(現・総務省)入省。 2008年広島市副市長兼CIO(Chief Information Officer)、 2012年NTTデータ入社

――ビジネスとガバナンスのバランスをどのように考えればいいのでしょうか。

豊田 企業としてまず目指すのは、ビジネスの成長による企業価値の向上です。ガバナンスは、ビジネスを健全に進めるためのリスクヘッジや、意思決定のプロセスを支えるものでなければなりません。

IT業界はスピードが重要であり、ガバナンス部門がビジネスの足かせになることがないよう、つねに迅速な対応を心がけています。

また、グループ全体のビジネスを支えるためには、地政学リスクなどのグローバルレベルでのリスクマネジメントや、コンプライアンスの徹底が必要です。

そのためにも「枠組み」の策定、各種ルール・体制の整備、グループ全体への浸透・実装、適切な運用をグローバルメンバーとの連携により実施し、好循環をつくり出すことが大切です。

多様な枠組みづくりに多様なメンバーで取り組む

――GGHという組織について、教えてください。

豊田 GGHは下の図のようにさまざまな機能を担っています。メンバーの構成は多様で、機関法務・知的財産・人事・経営管理などのコーポレート業務に精通した者、ビジネスの現場で営業やシステム開発を担ってきた者、また他社・他業界の経験を有する者もいます。

最近では、海外のグループ会社のメンバーも参画しており、それぞれの多様な専門性や経験を掛け合わせることがGGHの強みになっています。

グローバルガバナンス本部の機能

――GGHが担っている業務について、具体的に教えてください。

熊田 私はグループマネジメント担当として、グループ全体を統括するさまざまなルールやポリシーの策定と運用を担っています。グループ会社への浸透・実装を通してガバナンス体制を安定させることが目的です。

グループ各社が抱える固有の事情を踏まえ、出資・M&AやAI、財務、人事など多岐にわたる分野でどこまで詳細なルールが必要かを検討し、統一した指針を策定しています。また、各制度をつかさどる当社の各部署からフィードバックを受け、ルールの浸透と改善を進めています。

組織再編以降、グローバルでの規模拡大により、よりいっそうルールの明文化が重要性を増す中、グループ経営管理の使命を果たすべく日々奮闘しています。

グローバルガバナンス本部 グループマネジメント部 グループマネジメント担当 課長 熊田 良太氏
グローバルガバナンス本部
グループマネジメント部 グループマネジメント担当 課長
熊田 良太

藤井 私は出資・M&Aマネジメント室で、ビジネス部門から提案された案件に対する投資回収の実現可能性や出資目的の確実性の審査を担っています。その案件のビジネスモデルが当社の戦略に適合しているか、リスクの洗い出しや最小化ができているかも審査の重要なポイントです。

また、そうした審査のためのルールづくりや出資後のモニタリングにも携わっていますが、異なる文化や価値観を持つ国々への対応はとくに難解です。

国際取引が前提となると、例えば各国の会社清算に対する心理的ハードルの違いなど、国ごとの常識にも左右されます。そのため、国内外のパートナーや弁護士と連携し、確実かつ柔軟な対応を心がけています。

グローバルガバナンス本部 グループマネジメント部 出資・M&Aマネジメント室 課長 藤井 稔乃氏
グローバルガバナンス本部
グループマネジメント部 出資・M&Aマネジメント室 課長
藤井 稔乃

豊田 熊田はこれまで人事本部で長く培ってきた経験を生かして、各部署と連携してフレームワークやルールの策定、運用をリードする、いわばコーポレートの中核を担う業務を担当しています。

藤井は以前ビジネスの現場で顧客とのアライアンスを担当していた際に培ったビジネス感覚を生かし、ビジネスを前に進めるためのリスク評価やヘッジ策を講じる重要な役割を果たしています。

布施 私はAIガバナンス室で、グローバル共通のルールやポリシーを策定・運用する業務を担当しています。海外拠点の担当者とコミュニティーを形成し、AIのリスク管理を軸に議論し、AIを活用するためのよりよい仕組みを構築しています。

また、AIシステムの開発プロジェクトに対してAIに関するさまざまなリスク(倫理面、権利侵害、情報漏洩など)を低減するためのコンサルテーションを実施するなど、幅広い業務を担っています。

ミッションは、NTTデータグループの全社員が安心して、安全にAIを使える環境を整備することです。海外メンバーや社外の有識者の知見を取り入れたり、先進的な事例から学んだりしながら、手探りで切り開いています。

グローバルガバナンス本部 AIガバナンス室  課長 知的財産室兼務 布施 健太氏
グローバルガバナンス本部
AIガバナンス室 課長 知的財産室兼務
布施 健太

豊田 布施が携わる「AIガバナンス」は、IT企業であるNTTデータグループならではの先進的な業務です。AIに限らずあらゆる先端技術のテックガバナンスは、ビジネスチャンスと安全性の両立に欠かせません。

当社では安全なサービス提供のため、2019年からAI活用の運用ルールの整備を開始し、第三者の有識者によるアドバイザリーボードの整備、リスクチェックやコンサルテーションの実施など、ビジネスを進めるうえで必要な具体的な取り組みの強化を行ってきました。

AIガバナンス室は、もともと当社の技術革新統括本部に属していましたが、テック領域だけでなく知的財産や法律の知識も重要であることから、GGHに移し、各分野の専門家を交えたチームに刷新しました。

これからも、グローバルレベルでITビジネスを牽引する当社として、先端技術を活用するためのテックガバナンスにフロンティアスピリットをもって挑戦していくつもりです。

会社の骨格をデザインするというやりがい

――GGHの仕事のやりがいについて教えてください。

豊田 いちばんは「会社のデザイン」に携われることです。ガバナンスの枠組みづくりは、会社という大きな組織の設計図を描き、その中ですべてのメンバーが安全かつ効率的に働きビジネス成長を実現するための、基盤や骨格をつくる仕事です。

組織全体が進む方向を見据え、何を守り、何に挑戦していくか。自らの手でそれをデザインして、形にするGGHの仕事は、会社組織・経営管理の根幹を担うものです。

熊田 私は、グループマネジメントの方針を示しながら、メンバーの叡智を結集し、組織をよりよい方向に導くために仕組みやコミュニケーションをつくり上げていく過程にやりがいを感じています。NTTデータグループという非常に大きな組織全体に及ぶ仕組みをつくること自体、貴重な機会だと感じています。

藤井 日々ダイナミックな変化を感じられる当社のガバナンス業務は、やりがいがあります。とくに、世の中の流れと連動した課題に取り組めますし、変化を敏感に感じ取る姿勢が求められる仕事です。

また、「ガバナンス」というとルール違反を取り締まる面倒な部署と思われてしまいがちですが、GGHはビジネスを支え、その困り事を助けるレスキューのような存在であろうとしています。そこもGGHの仕事の魅力ですね。

布施 私たちが取り組んでいるのは、守りではなく、むしろビジネスの拡大に寄与する"武器"として、AIを適切に活用することです。いろいろな分野の専門家たちと協力して挑戦できる環境は魅力的です。

何より、ガバナンスがビジネスの成長を後押しし、社会からの信頼を得る手段として機能することにやりがいを感じます。

豊田 ガバナンスは終わりのない取り組みです。社会や会社の変化に対応して、改善を続けていかなければなりません。ルールが決まっても、時が経てば形骸化してしまうリスクがあります。

機動性と統制のバランスの取れたガバナンスをアップデートし続けるには、多様なメンバーが必要です。GGHでは、さまざまな分野のノウハウやスキル、専門性を持つ人財を歓迎しています。ガバナンスの領域でキャリアを築くことに意欲的な仲間を迎え、組織を成長させていきたいです。

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