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半導体材料で存在感増す
JX金属の挑戦

トップが語る
「新たな成長ステージ」への布石

JX金属
(5016・東P)

資源・製錬事業で発展を遂げてきた産銅大手のJX金属が、大きな転換期を迎えている。祖業で培った技術力を武器に成長著しい半導体材料・情報通信材料の分野の成長にフォーカスし、先端素材を軸とした事業構造へと大きく舵を切った。「技術立脚型企業」を標榜し、さらなる飛躍を狙う。挑戦の背景について、代表取締役社長 社長執行役員の林陽一氏に聞いた。

2025/03/28
制作:東洋経済ブランドスタジオ
代表取締役社長 社長執行役員林 陽一

資源・製錬の会社から先端素材の会社へ

――まず、JX金属の歴史と事業概要について教えてください。

林 当社の始まりは、1905年の日立鉱山(茨城県日立市)の開業にさかのぼります。銅の資源・製錬を祖業とし、社会の発展に欠かせない金属素材の安定供給に貢献してきました。

その後、非鉄金属を活用した高機能材料を提供する技術を磨き上げ、半導体材料や情報通信材料などの先端技術分野に進出。現在、主力製品である最先端半導体向けのスパッタリングターゲットや、スマートフォンなどの内部にあるフレキシブル回路基板(FPC)向けの圧延銅箔は、どちらも世界トップシェアを誇っています。

2019年に策定した「2040年JX金属グループ長期ビジョン」では、われわれが持つ経営資源と今後の成長性を考慮し、半導体材料と情報通信材料を「フォーカス事業」と位置づけ、成長の柱としていく結論に至りました。一方で、祖業である資源・製錬事業を「ベース事業」とし、「フォーカス事業」を支えるものとしました。

代表取締役社長 社長執行役員 林 陽一 氏
「半導体材料と情報通信材料を『フォーカス事業』と位置づけ、
成長の柱としていく」と語る

――ビジョン策定の背景と、現在進めている具体的な施策についてご説明いただけますでしょうか。

林 ベース事業は、今後もフォーカス事業の成長を支える大事な基盤ですが、資源メジャーとの競争が激しく、資金力の面で課題がありました。とくに製錬事業は、世界的な競争力はあるものの、付加価値をつけにくく、大きな成長が見込みづらい分野です。

一方、半導体材料と情報通信材料は、生成AIやEVをはじめ、社会のデジタル化・脱炭素化に伴い、今後ますます需要が拡大すると予想されます。

こうした中、国内外での半導体材料を中心とした先端素材の生産能力増強、ベース事業におけるポートフォリオの見直しといった構造改革を着実に進めてきました。

攻めの事業戦略を展開

――「フォーカス事業」の強みを伺えますでしょうか。

林 半導体材料の主力製品はスパッタリングターゲット。われわれが銅やレアメタルなどの金属材料のスペシャリストとして蓄積してきた、不純物を極限まで低減して高純度な金属を製造する技術、溶解や圧延などの加工工程で金属の組織組成を精密に制御する技術、製造した材料が求められる特性を有しているかを分析・評価する技術を背景に成長を遂げています。顧客である半導体メーカーと同じスパッタリング装置や分析装置を自社で保有しており、顧客のニーズに迅速かつ的確に対応し、顧客と共に課題を解決できる点も強みです。

また、情報通信材料の主力製品の1つである圧延銅箔は、電解銅箔に比べて折り曲げに強く、耐久性に優れています。スマートフォンやウェアラブル端末、モビリティの分野で使用されるハイエンドなFPC向けに使用されています。デバイスメーカーの開発者と密接に連携することで、新たな製品開発を材料面からサポートしています。

主力製品である半導体用スパッタリングターゲット
主力製品である半導体用スパッタリングターゲット

――現在、2025年度中の試運転開始を目指して、ひたちなかに新工場を建設中です。建設の背景と狙いについて教えてください。

林 ひたちなかの新工場は、将来の半導体需要拡大を見据えた戦略投資です。創業の地である茨城県で、既存の主力拠点から近く、効率的なリソースの活用が見込めるひたちなか市を選定しました。半導体材料をはじめとする先端材料事業では、今後の市場成長を確実に捕捉するために、継続した増産投資が必要となります。既存の工場敷地・建屋ではこれ以上の拡張は限界に来ていたことから、新たに大規模用地を取得して、約40年ぶりにマザー工場の建設を行うことを決めました。

ひたちなか新工場(仮称)の建屋の完成予想図
ひたちなか新工場(仮称)の建屋の完成予想図

挑戦と称賛の文化で未来をひらく

――スパッタリングターゲット、圧延銅箔に続く、第三の柱にも挑戦されています。

林 成長が見込まれる「光通信」と「次世代半導体」に関連する新材料の開発に力を入れています。

生成AI向けのデータセンターの普及に伴い、データ通信量の増加と高速化が進んでいます。従来の電気信号ではなく、光信号で情報をやり取りする技術がより重要になっており、この光通信に使う化合物半導体ウエハーの需要が増加しています。

次世代半導体の分野では、より微細化が進む中で、細く深い箇所に均一に成膜することができる特殊な高純度金属化合物の開発を進めていましたが、現在、急速な需要拡大が見込まれることから、生産能力の拡大を進めています。その他にも、高性能サーバーのコネクター向けに、熱に強く、へたりにくいチタン銅合金も需要が拡大しています。

こうした収益の柱となるような新事業を育てるには、挑戦し続け、失敗から学び、技術を進化させ続けることが重要だと考えています。

JX金属PR大使 銅の妖精カッパーくん
JX金属PR大使 銅の妖精カッパーくん

今後も当社が成長していくには、リスクを取りチャレンジできる人材が多く必要です。そのためにも、社員の挑戦を積極的に支援し、互いに称賛し合う文化の醸成を進めていきます。

――2024年2月に東京証券取引所への新規上場が承認されました。

林 上場によってENEOSグループから独立することで、意思決定の迅速化と資金調達の柔軟性を高めることができます。上場は、われわれが真のグローバル企業へ飛躍し、社員、投資家、そして社会と共に持続的に成長するための重要なステップになると考えています。

⇒JX金属について詳しく知る

※スパッタリングターゲット:富士経済「2024年 半導体材料市場の現状と将来展望」(2023年実績、Al系を除く半導体用ターゲット市場における同社のシェア、販売金額ベース)
圧延銅箔:富士キメラ総研 「2024 エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧」(2023年実績、FPC向けのみ、出荷数量ベース)

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JX金属

https://www.jx-nmm.com/