ウーバーの「遅延急増」現役配達員が語る"実情" 報酬減額で超高額案件が生まれる歪な背景とは

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マグロ・クジラ案件の実態

マグロ・クジラ案件とはその名が示す通り、釣れたら報酬的にものすごく得をする、高額な配送依頼のことである。マグロとクジラを区分する明確な線引きはないが、マグロ案件であれば1回の配送あたり3000円前後。クジラ案件は5000円前後が、報酬単価の目安になっているだろうか。

1回の配送で数百円の報酬を得ている配達員にとって、マグロやクジラを釣り上げることは、うまくいけば日給あるいは週給を稼ぐことを意味する。

私は2025年1月。クジラ案件を2件ほど釣り上げたことがある。スマホの液晶画面を見たときは目を疑った。ウーバー配達員は配送依頼があった際、受け渡しの地図。距離。時間。報酬の目安といった情報が通知される。私のスマートフォンには「2件配送・距離4.8キロ・時間30分・報酬4384円」といった情報が表示されていた。さらに別日には、「3件配送・距離6.2キロ・時間45分・報酬5382円」の配送依頼があった。

クジラ案件画像。5382円という、高額の報酬が特徴だが、逆に配達員のモチベーションを下げると筆者は感じている
(著者撮影)

上記2つの配送依頼を喜んで引き受けた私だが、リリース(配送依頼の拒否)してしまった案件もある。その注文は「2件配送・距離7キロ・時間50分・報酬5000円」といった条件だった。しかし、自転車では到底たどり着けない、激坂の上にある配送先だった。

しかも配送するのはピザ屋の商品……顧客へのサービスの質を考えると、ここはバイク配達員に譲るのが正解だろう。とはいえ逃した魚は大きいわけで、なんだか悔しさが残る。

けれど真剣な話、このような高額の配送依頼は「ウーバー配達員を腐らせる」だけのように私は感じてしまう。その証拠に、ネットでは配達員が投稿したであろう「どうやればマグロ・クジラが釣れるのか」といった情報が飛び交っている。

なおこれは私自身も感じているが、おそらく高額案件の配送依頼は「配達員が決まらない配送先の解決」が目的で、不適切な表現かもしれないが、とどのつまりお金の力で配達員を釣ろうとしている。

このやり方に潜むリスクは、高額案件以外は引き受けない配達員の増加。これに伴う「配送先顧客のたらい回し」が今以上に常態化してしまう恐れが挙げられる。

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