老化を防ぐ「前頭葉」日本人がほぼ使えていない訳 未経験のことに挑戦する時に使うのだが…

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日本という国は、前頭葉の機能が低下しやすい社会だといいます(写真:Fast&Slow/PIXTA)
年齢を重ねると、脳は「前頭葉」から萎縮しはじめる。だから、前頭葉を鍛えることが脳の老化を防ぐことになる。前頭葉は意欲などをつかさどる部位で、経験したことがないことに挑戦するときなどに使う。しかし、日本ではとかく「前例踏襲」が好まれ、日本人は前頭葉を使っていないと、精神科医の和田秀樹氏は指摘する。日本の教育も前頭葉を鍛えるものになっていないという(本記事は、和田秀樹『50歳からの「脳のトリセツ」』の一部を抜粋・編集したものです)。

詰め込み教育は「悪」ではない

日本という国は、前頭葉の機能が低下しやすい社会構造を持っています。簡単に言うと、前頭葉を働かせて新しいことをしようとすると、前頭葉を使わない「前例踏襲」の人たちにはじかれるという構造です。

少し考えただけでも思い当たるはずです。大多数の意見とは逆のことを言う人は、しばしば「異分子」として白眼視されます。人より目立ちすぎると、「出る杭」として打たれます。新しいアイデアを出しても、「前例がないから」と却下されることが多々あります。そうした社会から、新規性のある面白いビジネスが生まれるのは難しく、日本の国際競争力は落ちるばかりです。

その諸悪の根源は、教育システムにあると私は考えています。日本では、前頭葉を鍛える教育をまったくしていないのです。

こう言うと、50代の方は「詰め込み教育」を連想されるかもしれません。この世代は人数が多く、受験戦争が熾烈だったので、10代のころの猛勉強がつらい思い出になっている人もいるでしょう。そして、大量の知識を一律にインプットする初等・中等教育こそが「悪者」だとみなしがちです。

しかし、それは違います。小中高校での詰め込み教育は悪ではなく、むしろ不可欠なものです。この段階で詰め込まなければ、語彙も増えない、計算もできない、世の中のしくみにもまったく無知という状態で成人してしまいます。初等・中等教育において、必要な知識をひたすらインプットするのは、理にかなったことなのです。

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