●共催:森ビル、東洋経済新報社

開会挨拶
森ビル
執行役員
オフィス事業部統括部長
主催者を代表して挨拶に立った森ビルの森賢明氏は、フォーラムへの参加申し込みが定員を大きく上回ったこと、参加者への事前アンケートでは現状のオフィスに対して半数が不満を持っていること、2014年6月にオープンした虎ノ門ヒルズのオフィスがすでにほぼ満室であることなどを紹介。今後も「理想的なオフィスの研究に取り組んでいきたい」と語った。
基調講演
「イノベーションの本質」
一橋大学大学院
国際企業戦略研究科教授
有機ELテレビと4Kテレビではどちらがイノベーションと言えるのか。一橋大学の楠木建教授は満員の参加者にそう問いかけ、イノベーションの意味をひもといた。楠木氏は「イノベーションと技術進歩は異なり、進歩という概念ではとらえきれない現象を表現するためにイノベーションという概念が生み出された」と指摘。冒頭の答えは「双方とも技術進歩ではあるが、イノベーションとは言えない」とコメント。イノベーションのポイントは、非連続性にあり、価値次元の転換を起こすことなのだと説いた。
その事例として楠木氏は、19世紀の米国で起きたケーススタディを紹介した。コンバイン収穫機の特許を取得した発明家は、収穫機を売るために分割払いを導入。これにより「資金がないから買えない」という設備投資のジレンマが解消され、「先に使い、後で払う」という形に米国の消費は一変した。これこそがイノベーションだと楠木氏は言うのである。
技術進歩はどんどん加速するが、やがてコモディティ化する。だが究極のイノベーションは新しいカテゴリーをつくり出す力がある。技術の進歩は〝できるかできないか〟が勝負の分かれ目だが、イノベーションは〝思いつくかどうか〟が分かれ目であり、だからこそイノベーションの起点は基本的に組織ではなく個人にあると強調。技術進歩が悪いわけでもないし、イノベーションがつねに良いわけでもないが、企業はどちらの路線を行くのか明確にしたほうがいいとし、もしイノベーション路線で行くのなら、「絶対やれ」とかKPI(重要業績評価指標)などを言うべきではない、そもそもインセンティブがなくても止むに止まれず出てくるのがイノベーションだと述べた。
主催者講演
「東京を世界でいちばんの街にしよう。
~Mirai Tokyo! 虎ノ門~」
森ビル
取締役
常務執行役員
「虎ノ門ヒルズの下には環状2号線が走っており、幹線道路と一体的に造られたのがこの再開発の特徴」ということから森ビルの北川清氏は話を始めた。東京は平面的には過密だが、上空や地下は使われていない。だから一棟の高層ビルにオフィスや住宅などの機能をまとめ、空いた空間に緑を配し、文化・芸術の施設などを設けて、そこに住まう人や働く人のコミュニティとして使う。そうすれば東京は新たなアジアの中心都市となっていく。そういうコンセプトで街づくりに取り組んでいると、森ビルの理念を紹介した。
その理念に基づいた再開発の実績として、アークヒルズや六本木ヒルズを取り上げ、価値を高めるためにブランディングする「タウンマネジメント」の考え方で街を育むことにも取り組んでいることを紹介。六本木ヒルズでは田んぼを作って地域の子供たちが田植えや稲刈りをし、オフィスで働く人たちは「ヒルズブ!」を作って部活動をしている。そうした活動からさらなる交流が生まれ、場所としての価値を高めているとした。
また、米国では職種の陳腐化が凄まじい勢いで進行する一方、次々に新しい職種が生まれるとの予測があると述べ、これからの社会は変化のスピードがますます速くなることや日米で起業率に大きな差があることなどに触れた。森ビルは大企業とベンチャーのマッチングを支援しており、アートを取り入れた街づくりやMITメディアラボと共同研究を進めている。「都市とアートとテクノロジーをつないで、東京を世界に誇れる都市にしたい」と語った。
今後10年間で、虎ノ門周辺では10近いプロジェクトが動き出している。将来は新駅ができて交通の結節点になり、羽田や成田とも近い国際ビジネスセンターになる。虎ノ門ヒルズの完成は、そうした新しい街づくりの始まりなのだと結んだ。
事例講演&対談
「ADK POWER IDEA CAMP」
アサツー ディ・ケイ
コーポレート本部
本部長
大手広告会社のアサツーディ・ケイ(ADK)は6月、虎ノ門ヒルズに本社を移転した。旧本社ビルの契約期間の満了、縦長に細分化されたビルでの社員間コミュニケーションの不足、ITインフラ強化の必要性などが背景にあったが、移転を機に「コンシューマー・アクティベーション・カンパニー、すなわち消費者の具体的な行動を喚起するマーケティング施策を開発、提供することにより、広告主の業績に貢献する企業」という新しいブランディングを訴求することも目的だった。ADKの勝村良一氏はその経緯を語り、「ADKの強みは一人ひとりの力であり、“強い個がつながる”ことが大事」だとし、「キャンプのようなワクワクする雰囲気で、アイデアや発見が次々飛び出す『ADK POWER IDEA CAMP』というコンセプトで新しいオフィスづくりをした」と説明。さまざまなスタイルの会議室を設け、タブレット端末でその使用状況をすぐに確認し、その場で予約できるシステムも導入した。
ただし移転後の社員アンケートでは、移転に否定的な回答をした社員も少なくないことを明かし、「ワークスタイル改革をしていくという、われわれの目的や新しいコンセプトが、まだ十分には理解されていない」と述べた。
東洋経済新報社
東洋経済オンライン編集長
この後、東洋経済新報社の山田俊浩が登壇し、「東洋経済オンラインでは、オフィス関連の記事は人気コンテンツ。多くの企業を取材してきたが、ADKのオフィスはよくできている」と語った後、勝村氏に質問する形で対談を進行した。その中で勝村氏は、「移転が自分たちのワークスタイルなどを見直す契機になった」「虎ノ門エリアは東京都のアジアヘッドクォーター特区に選ばれている。ADKも2020年に向けて、よりグローバルな会社になっていく。会社とエリアの目指す方向性が一致し、シンクロすることも期待している」と述べた。
