北朝鮮崩壊へアメリカが隠し持つ「極秘計画」 約20年間に作られていた「COPLAN 5029」

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中国はどうだろうか。中国共産党は北朝鮮と密接な関係を維持しており、中国は金政権に対する経済的および戦略的支援の主要な基盤となっている。アメリカ政府関係者は、北朝鮮の不安定な情勢に直面した中国がクーデターを引き起こし、新しいリーダーを打ち立てる可能性があることについて長い間予測してきた。

しかし、金が死去した際に起こるかもしれない内紛に対して、はたして中国に介入する能力があるのか、または介入する意志があるのか懐疑的な人もいる。「中国は北朝鮮での後継者問題については関与しないだろう。そして、その結果がどんなものであれ、朝鮮労働党の決定を尊重する。それで中国が広く軽蔑されるかもしれないにもかかわらず、だ」と千は分析する。

難民の大量流出を懸念

「中国はそれよりも北朝鮮からの難民の大量流出を懸念しており、難民の受け入れをできる限り避けようとするだろう。中国は人道支援を通じて、状況を安定させるためにできることはする。しかし、政治的には、中国は特定の派閥の側にはつかないよう注意している。実際、中国は北朝鮮の政治紛争の結果に直接影響を与えられるような実際的な手段を持っていない」。

中国が北朝鮮の政権崩壊に対処するため、アメリカと協力する可能性も低い。「かつてだったらあったかもしれないが、現在ではありえない」と元アジア太平洋担当第一副次官補のエヴァンズ・リヴィア氏は話す。

「米中関係の広がりが挫折したことや、中国がアメリカとの戦略的関係についての考え方を変えたこと、中国政府が北朝鮮政府との関係の再構築に重点を置いたこと、中国が南北朝鮮と良好で安定した関係を築けるという信念を持っていること、中国がアメリカを近隣から追い出したいという願望を抱いていること、そしてトランプ政権を追い出すための準備が明白に行われていること……これ全てから言えるのは、南北朝鮮に関する米中の協力関係の『古き良き時代』がおそらくすでに終わったということだ」。

秘密に隠された北朝鮮からは、新しいうわさが次から次へと出てくるだろう。さらに、その一部は本当であると判明するかもしれない。そして、OPLAN 5029は依然として計画から消えてはいない。しかし、それを実行する意志があるかどうかは明確ではない。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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