主催:ビービット
運営協力:東洋経済新報社
先進企業はいかにデジタル×顧客理解で
ビジネスを変革しているか
ダイエー取締役やam/pmジャパン(現ファミリーマート)社長等を歴任した相澤利彦氏より、まずは小売業界を例に、デジタライゼーションを背景にした業態間の栄枯盛衰を紹介。購買データを紐解けば、個別対応的なマーケティングに変革すべきなのは自明とし、CX(顧客体験)も個々に異なるべき時代と説いた。また、データは相関だけでなく因果を捉えることが重要とコメント。ローソンのアドバイザ時代に支援した、生鮮を購入する顧客の分析から経営戦略を構築した事例を紹介し、ビッグデータ分析は経営者こそが活用すべきもので、それによって投資判断などの経営の意思決定、戦略の構築に活用すべきと強調した。
後半は今後の顧客体験とリーダーの役割に関するディスカッションに発展。個客の髪型の違いと気象の違いに応じて日毎に異なるメッセージを出して売り上げを上げた最新のマイクロマーケティングの事例を紹介し、経営/現場リーダーは獲得できる情報を手繰るスキルを持ち、テクノロジーの進化に敏感になって、CXを常に進化させ続ける意志を持つべきと締めくくった。
デジタル体験を起点とした
顧客価値向上への挑戦
三井住友フィナンシャルグループの、グループCIO(最高情報責任者)谷崎勝教氏は、まず住友と三井のDNAは技術とマーケティングのイノベーションにあると言及。デジタライゼーションの現在はまさにこのDNAを見つめ直し、新たな挑戦をする時だと述べた。その例として、フィンテックといったテクノロジーの進化だけではなく、店舗における顧客体験も変革中であり、その一つが「GINZA SIXにオープンした新たな顧客価値を体現する店舗」と紹介。事務処理スペースをほかの拠点に移すことで顧客スペースを拡大するなど、従来の構造を一新し、開放的なラウンジや寄り添い型のブース、じっくり話せる個室などで構成した。また、デジタルを活用し伝票レスや印鑑レスを実現し、顧客との時間を創出。伝票処理や印鑑照合など長年続いた業務を変えることの苦労を尋ねられると、自ら担当者に対して変革の意義を説明したことなどを披露した。最後にデジタル化時代にあっても 「人を満足させるのは人、これは不変」と強調した。
ディスカッション
データ×顧客体験のPDCAで現場を進化させる
ディスカッションパートでは、デジタルマーケティングの現場で成果をあげている3氏が登壇し、実践事例等を紹介した。
最初のテーマは、「リーチ」勝負から「コミュニケーションの質」勝負。今の時代に成果を出し続けるには、個々の顧客の状況に寄り添った対応が必要であると3氏とも強調した。
中古車売買のガリバーを展開するIDOMの中澤伸也氏は、リーチした顧客と受注までどうコミュニケーションするかが重要になってきており、顧客の「検討度」と、自社と顧客の「関与度」を高めることがコミュニケーションの深さになると解説。その上で、「顧客と長時間つながれるチャットを作り、コミュニケーションのステージを一方的な情報提供から信頼関係が十分築かれる段階まで定量化する試みを行っている」と紹介した。
毎月一回、一つずつ商品を届ける「定期便」サービスを行う通販大手、フェリシモの橋本和也氏も、新規の顧客獲得を一律に見てはいけないと指摘。「ほかの商材も見てもらえているかどうか、サービスの全容を理解してもらえているかなど、それぞれの状況によって申し込みの継続が違ってくる」と述べた。

3氏の話の共通点として、質を重視するために、顧客を「属性」ではなく、行動履歴などをもとに顧客の「状況」を捉えていることと宮坂氏が指摘。属性だけでは次の打ち手が見えにくい一方、顧客は状況ごとに要求する体験が異なるために、状況で顧客を理解することによって施策が見えてくるという。
続いて宮坂氏が二つ目のテーマ、「ビッグデータ」×「個票データ」を提起。顧客一人ひとりの状況をとらえるためには、顧客データを個別・時系列に把握すべきであり、これはいわば、ビッグデータと対比するならば個票データと呼べると紹介した。ビッグデータは投資領域の判断など、組織が意思決定する際に効果を発揮するが、総花的で有効な打ち手につながらないことも多い。ビッグデータと個票データはどちらも大切なデータには違いないが、もっと個票データの価値に注目することも必要ではないかと訴えた。
中澤氏は、一人ひとりの顧客行動がわかるビービットのデジタル行動観察ツール「ユーザグラム」を活用していると紹介。「時系列の顧客の動きが非常に見やすく、イシューを特定して創造力を働かせるときに生かしている」と述べた。これを受け、自社でも導入しているという橋本氏は、「大きな意思決定をするときは、該当チームのメンバーを横断で招集して一緒に個別ユーザの行動データを見て問題意識をすり合わせている」とその効果を述べた。
ソニー損保の片岡氏は、「カスタマージャーニーマップ」を作るワークショップを部門横断で短いサイクルで行っていると紹介。その中で出てきた仮説を裏付けるため、コールセンターの通話録音を一人数十本ずつ聞いてから翌週の会議に参加する仕組みや、部門で毎週1時間、ユーザグラムを見る時間を取り、顧客の行動に対する「肌感」を身に付けてもらうようにしていると述べた。「自分も含め役員クラスから一般社員まで100人近くが、アンケートで満足度の低かったお客様全員に電話する」と全社的に顧客理解を行う仕組みも紹介した。
このほか、顧客を軸に部門横断で対話することで、各部門の協力が生まれるといった発言もあった。デジタル化時代にどうしたら顧客から選ばれる存在となれるのか。登壇者からの多くの示唆に参加者たちもさまざまな気づきを得たようだった。