
“フルターンキー”企業を目指す
2017年4月1日、設計・研究開発を提供する「日本テクシード」と設計・実験/検証サービスを手掛ける「DRD」が統合し、新会社「パーソルR&D」が誕生した。この2社は、共に自動車など輸送機器関連業界を中心に、設計・実験の受託開発、開発のプロジェクトマネジメント、コンサルティングサービス、技術者派遣サービスを提供し、成長を遂げてきた。新会社「パーソルR&D」の宮村幹夫代表取締役社長は、統合の背景となった、自動車業界をめぐる環境について次のように説明する。
「自動車業界は今、グローバル化による競争激化の中で、ハイブリッドや電気自動車(EV)の開発、IoTやAIをはじめとした最新テクノロジーなど、多様化するニーズへの対応が必至となっています。こうした中、海外で進んでいる大きな動きが、優れた技術を有するパートナー企業への開発委託です。世界の自動車メーカーは、上位工程を含めた高度な開発プロセスにも対応できるパートナー企業と提携することによって、製品の高付加価値化を進めています。日本でも今後は、こうした高度な開発技術を提供できるパートナー企業が必要になってくると考えられます」
日本テクシードは自動車業界や航空機業界など輸送機器関連業界を中心に技術者派遣サービスを行っており、最近ではオンサイトでの開発請負や自社での受託開発で成長を続けている。一方、DRDは商用車メーカーの開発部門としての成り立ちを背景に、設計と実験を併せ持つエンジニアリング企業として受託開発に強みを持っている。統合の効果を宮村社長はこう語る。
「日本テクシードは1500人強、DRDは500人強の社員がおり、統合後には約2000人を擁する開発のプロ集団となります。日本テクシードは制御系にも強く、DRDはメカ系に特化しているという特色の違いがあるため、統合によって互いの強みを生かし相乗効果が生まれるでしょう。高度な設計開発を一貫して手掛けることを"フルターンキー"と言いますが、世界には先進的なフルターンキー企業が存在します。われわれも統合によって、自動車関連を中心に、航空、産業機械、家電など幅広い領域において一貫して高度な技術提供が可能な企業になることを目指していきたいのです」
"尖った技術"に磨きをかける
宮村社長によれば、パーソルR&D誕生の背景には、技術者業界の課題として挙げられる高齢化や人材不足、技術の伝承への対応の必要性もあったという。
「日本テクシードは平均年齢33歳と比較的若い企業です。自動車、航空機、電気機器など日本を代表する大手企業に技術サービスを提供し、若手人材の採用・育成力を強みとして事業を拡大してきました。一方、DRDは商用車領域を中心に、設計から実験までトータルな開発請負を行い、高い技術力を強みとして多くの熟練したエンジニアを育ててきました。しかし平均年齢が43歳と高いこともあり、DRDの持つ高度な技術をどのように伝承するかが課題になっていました。
さまざまな角度から調査・分析をして検討したところ、人を大切にするという文化も共通しており、2社の親和性が非常に高いことがわかりました。そこで両社の人間が一緒に働き、請負化を進めていくことで、優秀な若手に技術が伝わり、次のリーダーを育てていけると考えたのです」
宮村社長が目指すのは、設計から実験まで一貫した製品一括請負から、部品単位の請負、技術者派遣まで幅広い顧客ニーズに対応できる集団を育成することだ。
「フルターンキーを手掛ける海外のエンジニアリング企業は、開発請負やコンサルティングを軸とした企業がほとんどですが、われわれは請負モデルに加え、先端技術を得るために技術者派遣などの日本型のエンジニアリングサービスも戦略的に行う、ハイブリッド型の事業モデルを目指しています」
こうした方向性を目指すパーソルR&Dを象徴するキーワードが、"尖った技術"だ。その意味を宮村社長はこう解説する。
「フルターンキーを実現していくには、われわれはどこかでメーカーの技術を超えるような"尖った技術"を持つ必要があります。そのうえで、派遣も請負もコンサルも可能な、開発工程のさまざまな領域に対してシームレスに技術を提供できる企業として、真っ先に想起されるような企業になっていきたいのです。
たとえば、われわれの強みの一つが数百名に及ぶ実験部隊です。一人前の実験要員を育てるのには、最低でも10年と言われるほど、非常に長い時間がかかります。フルターンキー企業となるためには、実験は欠かせない部門です」
このほかにも、パーソルR&Dでは、グループ企業で映像技術に長けたAVCテクノロジー、AVCマルチメディアソフトと連携を図り、自動運転をはじめとした高度な技術サービスの提供に取り組むなど、"尖った技術"を磨いていく考えだ。さらに、モデルベース開発など自動車業界における先端技術を取り込み、将来的にはコンサルティング事業などの高付加価値ビジネスへの展開を進め、世界のモノづくりを支える技術者集団を目指していきたいという。
人を大切にする会社
パーソルR&Dの「R&D」は、「研究開発」を表す。この冠を社名に掲げることは、自社の研究開発に投資していく姿勢を示していることにほかならない。そして、モノづくりに深く携わる技術者にしかできない価値を提供し続けることを通して、社会に貢献していきたいと宮村社長は語る。
「そのために、採用には力を入れています。エンジニアとして研究開発に従事したい方にはぜひ来てほしい。優秀な人材であれば、海外の学生も積極的に採用していきたいと考えています」
パーソルR&Dがもう一つ重視しているのが「教育」だ。宮村社長によれば、パーソルR&Dでは、顧客の開発部門内でプロジェクトマネジメントを任されることもあり、一緒に働く先輩社員が後輩社員を支え育てるという文化もあるそうだ。また社内では専門技術のみならず、マネジメントや一般教養などさまざまな研修制度も充実しており、エンジニアとしてのキャリア形成をサポートしているという。
「社員にはよく『君自身の成長が会社の成長になるんだよ』と言っています。会社の成長は、社員の成長の総和によってもたらされるのです。
多くのエンジニアがパーソルR&Dで働いていることを誇りに思ってほしい。そのために、時間やエネルギー、おカネを使うことは惜しみません。『人を大切にする会社』であるということを、何よりも大事にしていきたいと考えています」