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関係者の理解が進み、市場が活性化する中で、
品質の向上が進むことを期待します

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
今後ますます高齢化が進行する中で、高齢者がある程度自立しながら生活を続けられる環境が強く求められている。「サービス付き高齢者向け住宅」は、住宅の設計や入居者へのサービスに関して一定の要件を満たしており、今後の高齢化社会の新しい住宅サービスとして期待されている。「サービス付き高齢者向け住宅」をめぐる状況はどのようになっているのか。サービス付き高齢者向け住宅協会の向井幸一副会長に話をうかがった。
向井 幸一(MUKAI Koichi)
サービス付き高齢者向け住宅協会 副会長
1952年広島県生まれ。警視庁、不動産関連会社を経て、現在、株式会社シルバーライフネットワーク代表取締役。主に訪問介護事業、高齢者住宅の管理運営事業およびコンサルティングを行っている

サービス付き高齢者向け住宅は「施設」ではなく「住宅」

―― サービス付き高齢者向け住宅の現状はどのようになっているのでしょうか。

向井 「一般財団法人サービス付き高齢者向け住宅協会(サ住協)」の調査では、全国に約11万戸の登録があり(2013年4月30日現在)、その事業主体は、介護系事業者が63.6%、医療系事業者が16.1%、不動産業者8.7%などとなっています(同3月31日現在)。介護系・医療系事業者だけで約8割を占めているということになります。

こうした現況もあって、現在、多くのサービス付き高齢者向け住宅が「まず介護・医療サービスありき」になってしまっているのは、一つの課題です。

―― 国の「サービス付き高齢者向け住宅制度」の狙いにも一致していないということでしょうか。

向井 はい。「サービス付き高齢者向け住宅制度」の目的は、高齢者が安心して生活できる良質な住まいを地域に広めていくことにあります。制度で定められているサービスとは、ケアの専門家による「安否確認サービス」と「生活相談サービス」です。介護・医療、食事などのサービスは、それ以外のサービスです。

サービス付き高齢者向け住宅は、あくまでも賃貸の「住宅」です。「施設」ではありません。住宅ですから、介護・医療サービスについても、必要に応じて複数の選択肢から利用できるのが本来のあり方です。

ところが、実際には利用できる介護事業者が特定されているところもあります。また、食事の時間が決まっているというところもあります。これでは「施設」であって「住宅」ではありません。

「住まい」と介護・医療などの「ケア」は分離して考えるべきです。高齢者の自己決定を尊重し、自由な生活を送っていただくことが大切です。

―― 「住宅」としてサービス付き高齢者向け住宅の質の向上を実現するには、どのようなことが必要でしょうか。

向井 残念ながら、事業者、入居者、さらには都道府県などの自治体も、サービス付き高齢者向け住宅についての理解が進んでいません。

たとえば事業者について言えば、前述したように食事の時間が決まっているというところのほか、要介護度が上がると入居者を別のフロアに移動させるところもあります。入居者は現在の居室に借家権があるわけですから、別の居室に移すには新たな契約が必要です。これを事業者の都合で移し、契約書も交わしていないとなると、訴訟になるおそれもあります。

事業者に指導・監督を行う自治体についても、サービス付き高齢者向け住宅について正しく理解していないところがあります。当協会の会員は、ある県で「賃貸借契約書に遅延損害金の利率が記載されているのはいかがなものか」と言われたそうです。入居前の高齢者に向かってわざわざ家賃滞納の話をするなという意味だそうですが、不動産業の人ならびっくりするでしょう。家賃の滞納をすると、契約書に記載がなくても遅延損害金を請求できます。これは民法に定められています。契約書に利率を記載しないと、法で定められた最大の利率になってしまいます。

ここで紹介した事業者も自治体の担当者も、高齢者のために「よかれ」と思ってやっているのでしょうが、いずれの行動も借地借家法などの法律に違反し、入居された高齢者が不利益を受けるおそれがあります。

サービス付き高齢者向け住宅はまだ歴史が浅いことや介護系・医療系事業者が多いこともあって、不動産に詳しい人材が少ないのが現状です。こうしたこともあって、当協会ではサービス付き高齢者向け住宅の認知・普及活動のほか、事業者への研修・コンサルティングなど質の向上に関する活動、行政・業者間の問題解決、行政への提言などを積極的に行っています。

入念なマーケティングが事業の成否を決める

―― ビジネスチャンスという声がある一方で、過熱感も指摘されています。サービス付き高齢者向け住宅事業の成功要件は。

向井 大切なのは、マーケティングです。市場はどこでも同じではありません。たとえば、高齢者人口に占める介護・生活支援サービスの付いた住まいの整備状況を都道府県別に見ると、1位の徳島県(約7%)と、最下位の栃木県(約3.5%)では2倍の開きがあります。当然ながら前者では家賃は安くなります。都道府県別だけでなく、同じ県内の市町村でも、数倍の差になっている例が少なくありません。

また入居者によってニーズも異なります。部屋が狭くても、できるだけ家賃が安いほうがいいという人もいれば、ゆったりとした居室で、わが家のように暮らしたいという人もいます。最近では、後者のニーズも高まっており、協会員の物件では「広い居室から先に入居者が決まる」という例も少なくないようです。

参入にあたっては、将来にわたって競争優位性を保てるかどうか、しっかりと事業計画を描いたうえで判断すべきです。介護・医療サービスに偏った計画だと、リスクがあります。介護保険をはじめとする公的保険はいずれ縮小されるからです。介護・医療系事業者が参入する場合に、建物をすべて自前で建設すると大きなコストが必要です。建物や部屋のリースなども検討すべきです。

土地オーナーの場合は、どの事業者とパートナーシップを組むべきか、しっかりと考えるべきでしょう。私は、実際にその事業者が運営する住宅の見学を勧めています。「自分の親をここに住ませたい」、「自分が住みたい」と思えるようなところでないと、多くの高齢者の支持を得るのは難しいものです。加えて、顧問税理士や会計士、弁護士などがいれば、セカンドオピニオンとして意見をもらうといいでしょう。

サービス付き高齢者向け住宅市場が活性化することで、よい意味での競争が生まれ、品質が向上することを期待しています。