
オフィス家具大手が仕掛ける共創空間「Sea」の狙い
2016年12月5日(月)、6日(火)の2日間、東京千代田区にある「Open Innovation Biotope “Sea”(オープン・イノベーション・ビオトープ”シー“)」で、カンファレンスイベント「SEA DAY02」が開かれる。同カンファレンスは、「働き方変革」と「オープン・イノベーション」について、企業や大学、研究機関などに属する人たちが一堂に集まり、ケーススタディの発表、トークセッション、ディスカッションなどを行うものだ。2015年5月に第1回目となる「SEA DAY00」、16年1月に2回目の「SEA DAY01」を開催し、今回が3回目となる。同カンファレンスを主催するのは、オフィス家具大手の岡村製作所(以下、オカムラ)だ。会場となる「Sea」は同社が15年5月に開設した。
ソリューション戦略部
未来企画室
庵原 悠(いはらゆう)
同社マーケティング本部 ソリューション戦略部 未来企画室の庵原悠氏は「Sea」立ち上げの狙いを次のように語る。「製品のライフサイクルの短縮化など、ビジネス環境が変化する中で、企業にとって新しい価値創造が求められるようになっています。それを従来のように自社のリソースだけで行うには限界が来ています。お客様も社外の企業や人材とのコラボレーションすなわち『共創』に関心を持つところが増えています。そこでさまざまな企業と人との『共創』を促すとともに、当社自身が『共創』のための知見をたくわえる場として『Sea』を設置しました」。
”オープン・イノベーション・ビオトープ“というネーミングは生物生息空間としてのビオトープをメタファーとしている。多様なステークホルダーが成功・失敗の循環を含めて知見を蓄積しながら、現在から未来へ変化のステップを設計することを目指しているという。
空間を作るだけではなくどう運営するかが重要
「オープン・イノベーション」という言葉を聞くことになって久しい。コラボレーションの促進を目指した場づくりに取り組む企業も多い。
それに対して庵原氏は「単に、新しい家具を入れ、きれいなレイアウトや内装にしたからといって、共創が進むわけでも、オープン・イノベーションが生まれるわけでもありません。大切なのは、その場を通じて、どのような『実行』をするのかということです。実行に向けた働き方そのものの変革が必要です」と指摘する。
少子高齢化にともない労働力人口が減少している。生産性向上やダイバーシティ(多様性)の観点でも課題は多い。政府も働き方改革に積極的に取り組もうとしている。
ソリューション戦略部
未来企画室 副室長
薄 良子(うすきりょうこ)
同社マーケティング本部 ソリューション戦略部 未来企画室 副室長の薄良子氏は、「企業の活動がグローバルに広がるとともに、これまでの日本の横並びの常識というものが通用しなくなってきています。女性や外国人、LGBTなども含め、多様な人たちと一緒に、限られた時間で高いパフォーマンスを出せる制度や仕組みを組織が構築できなければ、生き残れなくなります。企業同士でも、自分たちが持っているものと他社が持っているものを組み合わせれば、新しい価値の提供ができるかもしれない。これまでは、そういった柔軟な発想が日本の企業はなかなかできなかったのですが、今後は意識の変化が現場レベルでもより求められると思います」と語る。
むろん、仕組みを作るだけで勝手にダイバーシティや共創が進むものではないことは言うまでもない。庵原氏は「ハードとしての場所を作るだけでなく、その先、どのように運用・運営していくかが大切です。当社自身、ハードのデザインについての経験や実績には自信があります。しかし、運用・運営の知見はまだこれからであり、ハードとソフトを包摂するデザインスキルが必要だと考えます。『Sea』に参加いただく皆さんと一緒に、考えていきたいと思っています」と話す。
「はたらく」に
多様な視点からアプローチする『WORK MILL』プロジェクト
いま、岡村製作所では「はたらく」に多様な視点からアプローチするプロジェクトを進めている。本文で紹介している「Open Innovation Biotope “Sea”」のほか、「はたらくの見方を変える。はたらくの価値を挽きだす。はたらくを考える時間と。」をテーマにしたWeb マガジンを開設、2017 年春にはビジネス誌を刊行する予定。「ミル」にはさまざまな視点で「見る」ことと、価値を挽き出すコーヒーの「MILL」の二つの意味が込められている。「Sea」とともに、これまで以上に知見をため、ネットワークを築き、良質な情報発信をしていく予定だ。
okamura.co.jp/solutions/workmill/
新たな取り組みが「Sea」から生まれている
現在「Sea」では、ほぼ毎月、「ワークプレイス」や「ワークスタイル」をテーマにしたさまざまなプレゼンテーションやトークセッションなどが行われている。いずれも、単に先進的な企業の事例を紹介するだけでなく、オカムラの研究員などがモデレーターとなり、かなり突っ込んだ議論が交わされるという。さらに、一過性のイベントに終わらず、毎月の「Sea」のプログラムやカンファレンスイベント「SEA DAY」から新たな取り組みも生まれているようだ。
薄氏は、「この10月に、ダイバーシティや働き方変革を研究する『Work in Life Labo. (ワークインライフラボ)』を立ち上げました。『ワークライフバランス』や『ワークライフインテグレーション』といった言葉がありますが、いずれも、ワークとライフを分けて、そのバランスを取るという意味合いが感じられます。そうではなく、ワークインライフ=自分のライフ(人生)がまずあり、それを実現する手段の一つとしてワーク(仕事)がある、ととらえています。そうとらえ、自分のライフとワークに責任を持ち、組織や社会に貢献していくことが、本来の「はたらく」ということではないかと考え、その「はたらく」を実現させる組織や制度などについて研究したいと考えています」と話す。
同ラボは「Sea」の一つのプログラムから発展したものだ。今後1年をかけて協力企業とともに研究を行い、報告や提言などを行う予定だ。
ところで、企業にとって人材の採用や定着が大きなテーマになっているが、「Sea」では興味深い取り組みも生まれている。「『SEA DAY01』でご一緒したローソン様と中央大学・文学部松下ゼミと共同でコンビニエンスストアにアルバイトで勤務する大学生の意識調査を行いました」(薄氏)。
かつて、コンビニエンスストアのアルバイトは大学生の定番だったが、最近では人気が低いという。そこで学生へのインタビューなどを行って研究したところ、学生に人気があり定着率のよいコンビニエンスストアの条件が明らかになったというのだ。「たとえば、家庭的な雰囲気で、自分の自然な姿を出せるところは長く勤めるという傾向が出ました」と薄氏は紹介する。
現在、ローソンでは「ロカボ(緩やかに糖脂質を制限する食事法)」の提案に力を入れており、糖質を80%カットした「ブランパン」なども商品化している。2016年1月に行われた「SEA DAY01」では、同社と他の企業がコラボレーションした「ロカボチャレンジ」の取り組みや成果について発表している。
大阪、名古屋にも共創空間を開設
庵原氏は、「オフィスでの置き総菜サービスを手がけるおかん様も『Sea』で講演をお願いしたことがご縁で、ワーク・フード・バランス(仕事と食事摂取の最適なバランス)を推進する活動を一緒に始めました。9月には当社もパートナーとなる、一般社団法人『ワーク・フード・バランス協会』が設立されました」と話す。健康経営推進に向けた多業種連携に期待がかかる。「Sea」からはこのほか、上智大学経済学部の川西 諭教授らと連携したまちづくりのプロジェクトなども生まれている。
オカムラでは東京の「Sea」の実績を元に、今後は大阪に「bee(ビー)」、名古屋に「Cue(キュー)」と呼ばれる共創空間を展開していく。関西デザインセンターの長内氏は「拠点ならではの特色のある動きを出したい」と抱負を語る。
関西デザインセンター
所長 長内浩樹
K!ZUK! LABO センター長
大矢明日香
マーケティング課
久岡伸功
マーケティング課
田中優子
今後、「共創」により、日本企業の価値創造と課題解決を支援しようとするオカムラの取り組みに期待がかかる。薄氏は「『Sea』は、働き方や働く空間に関するヒントをみんなで考える場です。何でもぜひお声がけいただきたいと願っています」と結んだ。
Conference Event in Tokyo&Nagoya
「働き方変革」と「オープンイノベーション」の交差点
開催日:2016 年12 月5 日(月)、6 日(火)
場所:Open Innovation Biotope “Sea”
東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート3 階
オカムラ ガーデンコートショールーム内
Sea公式Webサイト▷sea.okamura.jp
「はたらく」のワクワク、みつけた。
開催日:2016 年12 月14 日(水)
場所:Open Innovation Biotope “Cue”
愛知県名古屋市中村区名駅3-28-12 大名古屋ビルヂング14 階
株式会社岡村製作所 中部支社 MENNOLU LABO(みのるらぼ)内
申し込みはこちら ▷ ourfutures.net/pages/cue_okamura
対象:組織変革にかかわる新規事業部門、管理部門、経営企画部門の方
参加費:無料

「はたらく」に興味、問題意識を持つ企業、組織、学生の方々や、パートナーとして協力関係を築いていこうと考える企業、機関が一堂に集まり、コラボレーションによる価値創造の重要な機会を創出します。