さまざまな市場で注目を集める
「ビジネスエコシステム」とは
目覚ましい勢いで進化を続けるテクノロジーによって、既存のビジネスモデルの破壊が進んでいる。マーケットでは新しいテクノロジーを有するベンチャー企業らによってこれまで存在した業界の秩序や産業の壁が取り払われ、テクノロジー駆動型のビジネスモデルが市場を席巻するようになった。業界を再編するM&Aはかつてないほどに活発化し、ビジネスモデルの多様化とテクノロジー主導による規制の再定義によってビジネスを取り巻く環境は目まぐるしく変わろうとしている。
こうした状況下において、企業はこれまでのコアビジネスを守り続けるだけでは将来に渡って成長することが難しくなった。既存のビジネスにとどまることはすなわち、破壊される側に回ることを意味する。テクノロジーを取り入れることで自社のコアビジネスを見直し、新たなイノベーションを創出することができるかどうか。いま、こうした問題に多くの企業が直面している。
平岡 昭良
破壊する側に回るか、破壊される側にとどまるのか。そうした状況において、第三の道として異業種・競合を問わずビジョンを共にする企業と協業することにより、新たなビジネスモデルを創造する方法を模索する企業がある。ビジネスソリューションを提供する大手ITサービス企業の日本ユニシスだ。同社の平岡昭良 代表取締役社長は「さまざまな企業がそれぞれの得意な領域を持ち合って『ビジネスエコシステム』を作り上げることで、これまで一事業者だけでは困難だった社会課題を解決できるようになります」とその可能性を語る。
日本ユニシスがプラットフォームを
担うことのできる理由
ビジネスエコシステムではオープンイノベーションの考え方にのっとり、複数の企業によって一つの生態系を創ることで新しいビジネスやサービスを創造する。ビジョンを共有することによって企業同士はWin-Winの関係以上に強い結びつきを持つ。またベンチャー企業のように最初は小さく産まれ、徐々に参加するプレーヤーやユーザーが増えていくことで大きく育っていくことが特徴だ。
時間をかけて生態系を構築していくため、それを続けていくことを支えるプラットフォームが必要になる。そしてこのプラットフォームを提供することこそ、日本ユニシスが果たすことのできる役割だと平岡氏は語る。「私たちは、これまで世の中のミッションクリティカルなシステムを提供し続けてきました。ビジネスエコシステムは生態系なので、どこかが止まってしまうとすぐに機能不全に陥る。ずっと動き続けるしっかりとした形のシステムが不可欠です。こうした領域はまさに私たちの得意とするところ。任された仕事は必ず最後までやり通す実行力も兼ね備えています。またオープンイノベーションという観点においても、私たちがこれまでさまざまなベンダーの製品を扱ってきたこと、一つの企業に縛られることなく、つねに門戸を開いてきたことが生かされると考えています」。
さらに企業の規模という点でも、日本ユニシスは他社と協業するのに最適な大きさだと平岡氏は分析する。「これまでエコシステムの構築は、その多くをベンチャー企業が担ってきました。ですからそこに大企業が突然『自分たちでやる』と現れても、警戒されてしまいうまくいかないことが多い。日本でミッションクリティカルなシステムを提供している企業で、私たちくらいのサイズの会社はほとんど存在しません。日本ユニシスはベンダー色やメーカー色のない中立的な企業なため、一緒にビジネスをやろうと声をかけたときに抵抗感が少ない。触媒(カタリスト)になりやすいフリクションフリーの会社なのです」。

クライアントのニーズをはじめ困難な業務に対しても、決して逃げることなく取り組み続ける。そんな社員の人柄の良さも、業界から高い評価を得ている日本ユニシスは現在、ビジネスエコシステムを推進させるため、社内においてさまざまな改革を行っている。
たとえば、これまで社内には納期を守らなければいけない、予算を守らなければいけないというレビュー文化が存在した。しかしそうした中からは自由な発想による新しいビジネスは生まれてこない。そこで社員一人ひとりが主役になり、「誤解を恐れずにいうならば妄想」(平岡氏)を出発点にして事業化に向けて取り組んでいいという雰囲気を根付かせた。
また上司たちにはレビュー文化だけでなくコーチングやバイモーダルな文化を取り入れ、組織の壁も壊すことで連携しやすい組織設計へと変えた。経営陣は情報発信を積極的に行うことで、いま企業が求めていることや目指すべき方向を明示した。
その一つが、コーポレートステートメントの「Foresight in sight」だ。不透明な未来を予見し、見える化してプラットフォームを進化させる力、すなわち予見力という新しいアセットを磨いていくという。こうした取り組みにより、社内では積極的に新しいことへ取り組もうという文化が育まれるようになった。ある社員からは「ここまで経営が本腰を入れて取り組んでいるなら、あとは僕らの問題ですね」と自分事として捉える声も聞こえるようになってきているという。
アメーバのように増殖し進化を続ける
ビジネスエコシステム
日本ユニシスが手掛けたビジネスエコシステムの一つに「バリューカードモール」がある。私たちが日頃コンビニエンスストアで目にするプリペイドカードだ。決済手段を持たない若年層の利用によって火が付いたバリューカードモールだが、小さく産まれたビジネスは今なお進化を続けている。
サービスを開始した当初は使い切りのクローズド型サービスだったバリューカードは、リチャージして再び使うことができるクローズド・ループ型のサービスになった。そこにクレジット機能を付帯させることでオープン型のサービスとなり、リチャージができるようになるとオープン・ループ型へと進化。今ではそのチャージポイントがコンビニで使えるようになったり、カードからデジタルコードに変えて電子マネーにしたりするなど、アメーバのようにエコシステムの増殖を続けている。最初は5種類のプリペイドカードで小さく始まった事業が100種を越え、ビジネスエコシステムによって大きく育った好例だ。
こうした取り組みを今後も日本ユニシスは加速させていく。大切なのは失敗を恐れずチャレンジを続ける姿勢。「失敗の数は成功のKPI」(平岡氏)と捉え、社会課題の解決に向け日本ユニシスの挑戦は、これからも続いていく。
TOPINTERVIEW
社員一人ひとりの夢を出発点に
新たなビジネスに取り組む
代表取締役社長
平岡 昭良
ビジネスエコシステムを推進していくためには、これまで当たり前に存在していた企業の風土や文化を見直す必要があります。私たちの場合はまず自由な発想を持ち、事業を作り出していいという雰囲気づくりから始めました。すると社員一人ひとりが自分事として夢を抱き、良い意味での妄想を描くようになった。この妄想こそが新たなビジネスの出発点だと私たちは考えています。
ある社員はこれからの社会で電気自動車の普及は間違いないと考えました。しかし、そのためには充電スタンドが必要であり、その仕組みも旧来のガソリンスタンドとは異なり利用状況や予約の手続き、決済などがオンライン上で行えるネットワーク型の必要性があると考えたのです。そこでひとつの星が生まれました。
ここで考えることを止めてしまっては星が一つのままですが、この仕組みを応用することで民泊やカーシェアリングのプラットフォームなどに応用できることが分かると新しい星が見つかります。こうして星と星をつなげて星座にしていくことで、小さく産まれたエコシステムが徐々に大きなものへと進化していくのです。電気自動車向けのネットワークスタンドの提供から始まった妄想はシェアリングエコノミーと結びつき、現在ではエネルギーマネジメントまで取り組んでいます。その先にチャレンジしているのは再生可能エネルギーを供給する試み。このようにアメーバ状にビジネスが増殖していく面白さが、ビジネスエコシステムの醍醐味です。
同じ志を持つ企業と共に
活力ある社会を目指したい
ビジネスを始めるときは必ず何かを作り、それが失敗したとしても作ったものは残っています。そうして生け簀に入れて置いたものが後々になってプラットフォームの部品になったり、ほかの星を見つけたときに連携できたりする。仮に赤字撤退したとしても、知財として今までの取り組みは残っている。いわば失敗を繰り返しながらもR&Dを進めているのです。ですから社員には「うちの会社に無駄なことは一つもない、何かやったら必ず何か残るんだ」という気持ちでチャレンジしていこうと呼びかけています。失敗を恐れる必要はまったくない、いまチャレンジしているものだけが未来を変えられるんだと。
変化の激しいビジネス環境の中でいかに自社のコアビジネスを再定義するか、イノベーションを創出していくかはすべての経営者に突きつけられた課題だと思います。私たちも悪戦苦闘しながら日々チャレンジを繰り返していますが、こうした課題は一社だけで解決できるものではありません。
ですからぜひ志を共にする企業の方と一緒になって、さまざまな社会課題を解決していきたい。もちろんベンチャー企業の方々も大歓迎ですので、ぜひビジネスエコシステムを通じて共にチャレンジを続け、再び活力のある社会を目指していければと思います。