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新興国進出に必要な3つのケイパビリティ

日本にはものづくりやファイナンスの強みがあり、世界を相手にビジネスを続けてきた実績がある。そう過信していると、新興国では足元をすくわれるかもしれない。新興国ならではの共通点と、そこでビジネスを成功させるために必要なケイパビリティを概観する。

野村 修一(のむら・しゅういち)
デロイト トーマツ コンサルティング ディレクター
新興国市場エントリー戦略を中心とするグローバルビジネス戦略担当。新興国への進出・撤退・再編・買収・戦略提携案件に多数携わる。

ミャンマーで再確認された、日本企業の新興国進出の取り組み方

この1年、新興国でビジネスをしたいという相談のなかでも、「ミャンマーで」という希望を非常に多く受けた。そして、このミャンマーへの進出をめざす日本企業のクライアントの動きを見ていて、気がついた共通点がいくつかある。

まず1点目は、話を聞くと、進出における発想、アイディアが皆、似通っているということ。一言で言うと、ビジネスモデルが掘り下げられていないのである。確かに新興国ビジネスではスタートダッシュが早いほど有利だが、ビジネスモデルがよく練られていないと、いずれ失速してしまうことになる。

次に、どの日本企業も非常にお行儀がいいということ。2011年までの半世紀の間、鎖国政策と軍事政権圧政下のミャンマーには、投資をしようという外国企業がなかったために外資規制そのものがなかった。すなわち先駆者メリットを得られるチャンスなのだが、日本企業は法規制が整備されるまでは様子見のところが多いようだ。法規制がないということは、ビジネスプランを管轄省庁に提示して認可さえ取れれば自社に有利なビジネスができるということであり、ドイツ系をはじめ非日系外資企業は積極的にそういったプランの提示を進めているが、多くの日本企業は「待ち」の姿勢を取っている。制度が未整備なのが新興国であり、そこを生かして攻めるのが新興国ビジネスの妙味であるはずなのだが。

3点目は、ミャンマーのビジネスパートナーに対して日本企業が戦略を語れないこと。せっかく理想的なパートナー候補とのミーティングの場を設けることができても、日本企業は情報収集のための質問ばかりに終始して自らの戦略を語らない。「私たちは日本から来ました。こんなことをしています」と自己紹介さえすれば満足なのか、「ぜひ日本の本社工場でものづくりの現場をご覧になってください」という一言で早々にミーティングを締めくくってしまう。パートナー候補に対し「こんな未来を一緒に描きましょう」という提案がなされていないのだ。

たとえば、ミャンマー企業にとっては2015年のASEAN経済統合後に生き残り、ASEAN市場で影響力を持つ企業となる、という明確かつ差し迫った課題がある。それに対して日本企業としてどういう提案ができるのか。彼らはそういった話を求めているのであり、それに対して「ものづくりの現場を見てください」だけでは不十分だ。最近は、日本企業と話しても意味がない、とまで考えているミャンマーの企業も多いようである。

新興国市場を制するために知っておくべき共通点

スイミングプールで競泳する場合と、海で遠泳する場合では、求められる能力が異なる。これと同じように、日本のような成熟市場で成功する方法と、新興国市場で成功する方法も異なる。それぞれ求められる組織能力が違うのだ。

ただし、実は新興国同士には、大きな共通点がいくつもある。そして、その共通点を踏まえた組織能力を獲得すれば、どの新興国市場でも成功する可能性が高まる。ブラジルで勝つ企業はインドでも勝ち、アフリカでも勝つのである。逆に、そういった組織能力を獲得していない企業は、インドでもナイジェリアでも勝てず、ロシアに行っても勝つことはできない。

新興国市場を攻略するために必要な組織能力とは何かを考えるために、ここではまず新興国市場の共通点を理解しておきたい。

(1)流動性の低いローカル通貨
 新興国のローカル通貨は、国際的な流通性がないだけではなく、自国の国内でも流動性が低いことがほとんどである。調達するための金利が2桁になるようなこともザラで、対ドル、対円で大きく変動するのに為替リスクヘッジの手段もない。

(2)あてにならない決算書
 新興国企業の決算書は、実態を映していないものが多くある。会社によっては5種類もの決算書を用意しており、最も実態を反映しているのが株主用の決算書。そして、不都合な債権・債務、関連会社取引が意図的に隠されている合弁相手向けの決算書。金融機関向けの決算書は利益が過大になっており、税務当局向けは逆に利益が過小になっている。従業員向けの決算書では業績が堅調に伸びていることになっている。このようなことは、日本企業が集積しているタイやインドネシア、そしてインドでも多く見られることだ。

(3)複雑な税務
 新興国では総じて税務が複雑で、特に間接税は、モノやサービスの種類によって税率が異なっていて、仕入税額控除もできるものとできないものがある。中央政府だけではなく州政府や市レベルでも課税をするために税金は混沌をきわめている。その結果、たとえば日本で10種類の税金を納めているメーカーが同じ事業をインドで展開する場合は59種類、ブラジルでは65種類もの税金を支払うことになる。この厄介な税金は二国間FTA(自由貿易協定)やASEAN経済共同体などの地域EPA(経済連携協定)の拡大に伴い、徴税し難くなる関税に代わる歳入確保手段として、新興国ではさらに重く、複雑なものになる可能性があるのだ。

(4)難しい労務管理
 新興国には、過度に労働者の権利が保護され、簡単に雇用調整ができないような硬直的な労働法も多く、労務管理は非常に困難なものになっている。また賃金の上昇ピッチも激しく、年率で15~20%のベースアップという賃金相場に置いてきぼりにされないだけの企業利益を上げていく必要がある。これらは日本とはまったく違う経営環境だろう。

(5)異質な物流事情
 物流コストや時間についても、日本とは感覚が異なる。たとえばサブサハラ・アフリカでは「ロードハラスメント」とでも呼びたいことが平然と行われている。つまり、幹線道路において、警察、税関、憲兵隊、出入国管理局、森林保護局、地方政府などが群がるようにコントロールと称してトラックを止め、領収書のない手数料を要求するのである。都市間を結ぶ往来の激しい最短コースほどよく止められ、“手数料”込みの総輸送コストも高くなり、大きく迂回したほうが早く安く着くケースすらある。これらを考慮してサプライチェーン上の各工程をどの場所に置くのか、在庫をどこに持つのかが大きな問題になっている。アフリカだけではなく、インドやブラジルでも物流は単なるコストではなく、戦略として取り組むべき大きな課題だ。

 

ここで挙げた事例は日本から見ると特殊な世界かもしれない。しかし新興国ではどこも大同小異のことで、たとえばインドビジネスを経験した人がブラジルに行っても、扱う税金の種類が59種類から65種類になるくらいで、それほど違和感はない。ビジネスのやり方や勘所も、だいたい同じである。

このように新興国には大きな共通点がいくつもあるので、それに対応できる組織能力を企業が獲得できているか否かが、どの新興国でビジネスをするにせよ、成否を分けるのである。

イラク復興需要ビジネスやモザンビークなどアフリカにおける資源ビジネスについて協議することが増加しているドバイ。中東・北アフリカの統括拠点として活況を取り戻しつつある。(写真:筆者提供)

新興国ビジネスで必要なケイパビリティ

新興国市場を制するために求められる組織能力(ケイパビリティ)としては、大きく次の3つに集約される。

(1)仮説を現地で素早く検証し、修正・再構築できる能力
(2)事業環境の長期的な変化を織り込んだシナリオ策定力
(3)結論を出せるトップのリーダーシップ

この3つについて、それぞれくわしく見ていくことにしよう。

(1)仮説を現地で素早く検証し、修正・再構築できる能力
  新興国市場への進出に際しては、どの企業でも市場規模などの仮説を立てると思う。しかし、日本企業の多くはその際に、日本国内、あるいは欧米などの先進国でのビジネスで使われる「物差し」を使って仮説を立ててしまいがちだ。着手段階としてはそれでもしかたがないのだが、新興国には先進国にはない共通点があるのは先ほどご紹介したとおりであり、最初に立てた仮説はあくまで仮説として、それを素早く検証・修正する能力が企業には求められる。

流通が組織化されていない新興国では販売網を確立している地場企業との合併・買収案件が増加している。(写真:筆者提供)

たとえばベトナムとナイジェリアは1人当たりのGDPが同じくらいである(ベトナム1374ドル、ナイジェリア1490ドル:IMF2011年)。そして人口はベトナムが8900万人、ナイジェリアは1億6000万人と、ナイジェリアはベトナムの1.8倍の人口を持っている。これからナイジェリアで二輪車を売ろうとするならば、「2010年度にベトナムで売れた二輪車が315万台。ということは315万台かける人口1.8倍で、560万台は見込める」という仮説を立てる人も多いだろう。

しかしこの仮説を持って現地に行くと、それが誤っていることが一目瞭然となる。ナイジェリアの最大の都市ラゴスや首都アブジャを歩いてみると、どちらもショッピングセンターの数は少なく、販売されているものを見ても東南アジアより見劣りすることはすぐにわかる。ショッピングする人を見ても、世界有数の産油国の住民を感じさせる華美な服装に包まれた人は少ない。実はナイジェリアは、1人当たりのGDPはベトナムよりやや高いものの、ほとんどが貧困層であり、ごくわずかな超富裕層が平均値を引っ張り上げているのだ。富裕層の多くはロンドンやパリに行って買い物をしており、ナイジェリア国内は富裕層が買い物を楽しめるようなマーケットではなく、中間下位層をターゲットとしたものになっている。そして、バイクを買う中間所得層も、ベトナムと比べると非常に小さいという現実がある(実際のナイジェリアの販売台数は同年度で100万台〈2010年JETRO〉)。

つまり先ほどの机上の仮説はまったく通用せず、すぐさま修正する必要が生じるのである。

新興国では、そもそも使用に耐えうる統計データが少ない上に、その統計データの見方も、日本の国内市場と同じではない。判断の基本は、実際に見て確かめる市場である。新興国ビジネスでは、当初立てた仮説を、実地見聞をして素早く検証・修正を繰り返す能力が求められる。

(2)事業環境の長期的な変化を織り込んだシナリオ策定力
  新興国市場の魅力の1つは将来性である。現状では市場として小さくても、数年後、数十年後の成長を見越して手を打つという姿勢が新興国市場の開拓には不可欠であり、そのためには、長期的な環境の変化を織り込んだ精度の高いシナリオを策定する力も求められる。

ビジネスプランのシナリオに大きな変化をもたらすものに、その国のインフラ整備がある。ほとんどの国はインフラ整備を、中長期的な投資計画のなかで位置づけていることから、ある程度予測可能な事業環境の変化をもたらす。ミャンマーを例に取ると、全国送電網接続ベースの電化率で全国平均はわずかに26%、最大都市ヤンゴンで67%、首都ネピドーで54%、第2の都市マンダレーで31%にとどまっている(2011年国家計画経済開発省)。経済成長を支える電力は、優先的な投資対象となっているのである。電気は、ある日突然通るわけではなく、最初に発電設備ができて順次、送電、配電設備が整っていくことになるので、電化地域は前もってわかる。電気工事業や家電・電設資材販売が自社事業だとすれば、ビジネス機会を捕捉するための投資のタイミングが読めるわけだ。

ミャンマーのビジネスニーズ 左上:指定席券の残り枚数を示すヤンゴン中央駅切符売り場のホワイトボード(⇒システム化) 右上:田畑を耕しているのはもっぱら水牛(⇒農機導入) 左下:電話取次業(⇒携帯電話) 右下:人力で30キログラムの重量物運搬(⇒フォークリフト) (写真:筆者提供)

なお、長期的な変化を織り込んだビジネスプランを策定するためには、自社の経営資源を踏まえた市場参入戦略を、前もって策定しておくことが求められる。これまでの日本企業は、「まずは駐在員事務所を置き、売れることを見定めてから販売会社をつくり、営業基盤ができてから工場投資」という、その国のマーケット事情を踏まえたマーケットエントリー戦略を特に持たないで新興国進出を試みるケースが多く見られた。一方、LGやサムスンなどの韓国企業は違う。まずその国の需要をつかみ、この需要のうちシェア何%を自分たちがねらうのかを明確にした上で、そのためには必要な工場投資とマーケティング投資がどれくらい必要かという市場参入戦略を緻密に立てて新興国進出を成功させている。ある韓国メーカーのインドの社長は「日本企業は片足を突っ込んで、冷たいのか温かいのか探ってからもう片方を進めようとする」という辛口なコメントをしていたが、これは日本企業の戦略のなさ、新興国への対応の遅さを指摘している。

自社の経営資源を踏まえたエントリー戦略と、長期的な変化を織り込んだビジネスプランを策定する力があれば、スピードのある投資のための意思決定が可能になる。たとえば、新興国の市場参入を果たしたいけれど、100%の現地法人で出るか、買収で出るか、ジョイントベンチャーにするのか、代理店を置くのか、新興国参入形態選択の際の判断の拠り所が欲しいという相談を最近よく受ける。自社の市場参入オプションを、可能な限り定量的に重要性を判断する物差しとともに評価することができれば、経営陣全員が納得した上でスピーディに投資意思決定することができる。逆にいえば、経営執行委員会や取締役会で協議する際の共通物差しがなければ、「なぜそのタイミングで投資をするのか」「なぜそのパートナーと組むのか」、その根拠を示すことは難しく、投資決裁を得ることができなくなる。

今後はターゲットとする新興国もBRICsからネクストイレブンなどといわれるようになり、対象が拡大するとともに、ますます一貫した判断の根拠や納得性が求められるだろう。

(3)結論を出せるトップのリーダーシップ
 求められるケイパビリティの3つ目は、結論を出せるトップのリーダーシップである。たとえば韓国のあるグローバル企業では「権限があるトップが出ていけば結論が早い」という意識の下、本社役員が渡航禁止国であるイラクに年間13回も出張しているという話を聞いたことがある。もちろんそのためには、事前に政府に向けて渡航申請書を書いた上で出張する必要があるのだが、日本の大企業では、渡航禁止国はもちろん、渡航に支障がない新興国でさえも、トップ自らが頻繁に赴き、ビジネスをまとめてくるという話はあまり聞かない。トップのリーダーシップ、行動力の差は、ビジネスの勝敗に直結すると言っても過言ではない。

新興国市場での新たな動き

次に、新興国における新たな動きについても2点、確認しておこう。

(1)日本企業を買いたがっている
 最近、「日本企業を買いたい」という新興国企業が増えている。彼らからすると日本企業は高品質の製品を開発する力を持ちながら、国内に同業者が多すぎるため利益率が低く、時価が低迷しているので「お買い得」なのだ。また日本企業の販売力が強い地域と、新興国企業の得意とする地域は重なることがあまりないので、シナジーも発揮できる。そして何より、日本企業が新興国市場に打って出るためには低いコストで生産するノウハウが要求されるのだが、新興国企業はそれを持っている。だから彼らは、日本企業が自分たちとアライアンスを組むことは非常に効果があると考えているのである。

これまでクロスボーダーM&Aは、先進国企業が新興国企業を買収するというケースがほとんどだったが、今では先進国と新興国、双方向からM&Aが活発になってきている。

(2)日本のファイナンスの影響力低下
 日本は過去に新興国へ向けて多額のODAや、低金利の長期ファイナンスなどの経済協力をしてきた。こうした事実は日本人ビジネスパーソンの間では、新興国市場進出の武器になると信じられていた。ところがいまや、それを上回る魅力的な条件でのファイナンスが他国から提案されているのだ。

日本では2008年に当時の福田康夫首相がアフリカ開発会議TICAD IVで、「5年で40億ドルコミットメントします」といって拍手喝采を受けた。しかしその後、中国の胡錦濤主席は2012年7月の「中国・アフリカ協力フォーラム」で、「3年で200億ドル、それも無利子で融資します」と発表した。中東のオイルマネーも柔軟で迅速にローンが実行されると高く評価されている。一方、日本がこれまでODAを行ってきたアジアでは、そのODAを必要としない「卒業生」が増えている。

これからはファイナンスの力を過信するのではなく、本当に相手国のことを考え尽くした総合提案力─たとえば資源国なら、資源を採り尽くした後の地場産業をどう育成するかという提案までしていくことがより重要になるのである。

日本企業への提言

新興国市場の進出を成功させるために、日本企業は今後どうすればいいのか。最後に、守りと攻めの観点から2点ずつ提言をさせていただきたい。

まず1点目は、新興国の拠点に強いCFOを送ること。日本企業では伝統的に製造業が強いため、海外の拠点には、まず工場長が派遣されるケースが多くある。しかし今、新興国では、ビジネスを始めるスピードを早めるため、100%出資ではなく企業買収や合弁などの形を取ることが増えており、このような合弁会社や買収した会社の実態掌握を、工場長ができるかというと疑問である。

企業統治には、金の動きを見て実態掌握できるCFOの力が必要になる。卑近な例でいうと、交際費を握るだけでも従業員や組織の動きをつかむことができるものだ。こうしたCFOの人材育成は新興国市場を開拓しようとする企業にとって重要かつ急務であるといえる(なお、そのCFOは必ずしも日本人である必要はない)。

2つ目は、国別に異なるリスクを全体的に把握し、重要リスクに対応すること。多くの企業は「新興国で事業を営む以上はリスクを取っているということに違いないが、自社がどのリスクを取っているのかがわからない」状況である。リスクはゼロにすることはできない。しかし、把握することで、どのリスクを取るかを選び、最小化することは可能だ。

たとえば英国に拠点展開する企業は、英国Bribery Actによって、たとえインドにおいて賄賂を贈れば、自社ではなく、代理店や現地コンサルタントがビジネスを円滑に進めるために賄賂を使用した場合であっても、その雇い主である日本企業が処罰の対象になってしまう。新興国ではこのようなリスクをゼロにすることはできないが、ならばこそ、把握し、可能な限りコントロールする必要がある。

リスクマネジメントの要諦は、問題が起こる前に自社のリスクを把握することだが、リスクを網羅的に把握するのは非常に難しいものである。そこで国や地域ごとのリスクを見いだすことがポイントになるのだが、たとえばDeloitteのEnterprise Risk Servicesでは「リスクインテリジェンスマップ」を作成して各国のリスクを分析している(図表1)。

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青色部分はどの国でも当てはまるリスク、緑部分は当該国独自のリスク、黄色部分は最近当該国で新たに焦点となっているリスク(例:『賄賂不正対応』) 出所:Deloitte Enterprise Risk Services

3つ目は、攻めについて。

まず、在外の日本公館を徹底的に活用することが挙げられる。日本政府は「新成長戦略」の目玉として、電力、水、鉄道などのパッケージ型インフラ輸出政策を推進している。その施策の1つが「インフラプロジェクト専門官」であり、現在50カ国、58公館、126名が配置されている(2012年6月現在、外務省)。

私自身、それ以前には大使館を訪問してビジネス協議をすることなどなかったのだが、最近は出張の都度、必ずその国の日本大使館に行くようにしている。そして行くたびに、インフラ・ビジネスにかかわる重要な示唆をいただいている。彼らも民間企業の担当者との情報交換を求めており、専門官たちのビジネスセンスも日増しに高くなってきていると実感する。新興国進出において、彼らの知見を利用しない手はない。

日本企業がターゲットとすべき残された新興国市場は、次第に市場規模が小さくなる。今後は、国単位ではなく、メコン広域経済圏や東アフリカ共同体(EAC)といった地域経済圏が主役になってくるだろう。そこでは、広域経済圏を縦貫する道路や港湾といったインフラ構築支援とともに、当該経済圏と日本との経済連携協定(EPA)などのビジネス環境の整備を交渉していくことが必要となる。新興市場攻略ではますます官民連携が重要になるのである。

そして最後になるが、冒頭で述べたように、日本企業の多くが自らの戦略を語れないことは、今後のグローバル経営競争においては致命的だ。これまでは「ものづくり」「製品」だけで通用したかもしれないが、今後のグローバル経営では、特にグローバル外資企業と激しく競い合う新興国においては、ビジネスプランや戦略の優秀さでアプローチをしてほしいものだ。ビジネスプランさえ確立できていれば、「新興国パートナー候補とこのポイントに合意できれば、合弁事業のFS実施に関する覚書(MoU)を結ぶ」と面談に臨む前に方針を固められ、スピードある投資決定をすることができる。

日本企業、そして官民一体となったオールジャパンでの新興国市場での成功に貢献できれば望外の喜びである。