「エモい」という言葉をご存じでしょうか?
決して「エロい+キモい」という意味ではありません。一部、新聞などでは「エモいとはヤバいの代用としての新しい若者言葉」と紹介されていましたが、それも正しくありません。「エモい」は新語というわけでもなく、すでに1980年代から使われている言葉です。
エモい=うまく説明できないけれどなんかいい
「エモ」とは「エモーショナル」の略ですが、もともとは、音楽のジャンルの一つである「イーモウ(Emo)」からきており、メロディアスで哀愁的な音楽性と切ない心情を吐露する歌詞が特徴的なロックミュージックを指します。基本的には「心が動いた」「心に刺さった」という感動的な意味合いで、「なんか、うまく説明できないけど良い」という論理的なものを超越した情感でもあります。
「エモい」を、おそらく日本で一番よく使っているのは、現代の魔法使いことメディアアーティストの落合陽一さんです。彼によれば、「エモいとは、ロジカルの対極にあるもの。“もののあはれ”や“いとをかし”」と定義しています。
“もののあはれ”とは、単に「哀れ」という意味だけではなく、喜怒哀楽や恋しさ、愛おしさなども含め、深く心に感じるあまり言葉にならない状態です。ありのままに見て、そして感じることとでも言えばいいでしょうか。
さて、今回はこの「エモい」がソロ社会での消費のカギとなるお話をしましょう。かつて、大量生産・大量消費時代には、統一性・標準性がある商品を大衆みんなが所有すること自体に価値がありました。「モノ消費」の時代です。ブランド品を持ち、いいクルマに乗るのは、ある意味ひとつの自己表現でもありました。
それが1990年代後半、携帯電話やネットの普及に伴って、自己表現的な消費から徐々にコミュニケーションのための消費という形へ変化していきます。いわゆる「コト消費」と言われる体験価値の時代です。体験価値というと、旅行やテーマパークなどの非日常体験をイメージされる方も多いですが、決してそうではなく、消費の目的がモノの所有から、その使用によって得られる体験価値へとシフトしていったという意味です。
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