「ロヒンギャ問題」の根本解決に必要な5段階 スーチー政権が最優先ですべきこととは

✎ 1〜 ✎ 386 ✎ 387 ✎ 388 ✎ 最新
拡大
縮小
バングラデシュにはミャンマーから大量のロヒンギャ難民が流入している (写真:Cathal McNaughton/ロイター)

イスラム系少数民族ロヒンギャが直面する人道危機によって、ミャンマーの民主化イメージは砕け散った。事実上の指導者でノーベル平和賞の受賞者、アウンサンスーチー氏の名声は傷つき、ASEAN(東南アジア諸国連合)や国連の危機対応能力にも疑問符がついた。

だが、問題解決の可能性は残されている。そのためには、以下の5段階の措置を遅滞なく進めなければならない。

殺戮と虐殺行為をやめよ

まずは、とにかく殺戮(さつりく)と残虐行為を止めることだ。軍はロヒンギャを国外へ追いやることを目的に民族浄化作戦を継続している。これ以上の流血は止めねばならない。

これを実現するにはロヒンギャの過激派を封じ込める必要がある。西側諸国で広く語られていることとは反対に、軍は挑発されたのだ。ロヒンギャ武装集団が治安維持施設に攻撃を仕掛けたのである。

もちろん、軍の報復が異常に大規模だったのは問題だ。「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)の襲撃にミャンマー軍は焦土作戦で応じ、約3000人を殺害。軍兵士はロヒンギャの村を焼き払い、レイプを行い、イスラム寺院を破壊、多数の難民を生み出した。

一方、スーチー氏は倫理的権威を行使できずにいる。警察を支配下に置く独立した軍部と、仏教徒が大多数を占める国民との間で板挟みになっているのだ。圧倒的に仏教徒が多いミャンマーでは反イスラムの偏見が根強い。

スーチー政権が、西側諸国や国連から発せられる理想主義的な声明に不快感を抱いているのは確かだ。ロヒンギャ過激派は海外のイスラム系テロ組織と長期にわたる関係を築いており、その中には「イスラム国」(IS)も含まれる。シンクタンクの国際危機グループによれば、ARSAはサウジアラビアを拠点とするテロ組織によって指揮されているという。

次ページ利害関係が複雑に絡み合っている
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT