ソラコム社長、KDDIへの株譲渡の真相を語る 世界規模のIoT企業になる、そのために選んだ

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ソラコムを創業した玉川社長は、米アマゾン傘下のクラウド会社・アマゾンウェブサービスの日本事業の立ち上げを主導した人物としても知られている(撮影:今井康一)

およそ3年前の2014年11月に設立し、2年ほど前の2015年9月末にサービスを開始したばかりのベンチャーが、巨額の資金と引き換えに大手通信事業者へ株を譲渡することとなった。

NTTドコモのSIM(通信に必要なカード)を借り受けて通信サービスを提供し、あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」プラットフォームを構築するベンチャー・ソラコム。同社はKDDIと8月1日に契約を締結、同下旬に株式の過半を譲渡し、KDDIの子会社となる。

公表されていないが、譲渡価格は約200億円とみられる。株式の過半で200億円だから、ソラコム全株の価値は200億強〜400億円弱と評価されたことになる。過去の資金調達から推測すると、ソラコムの純資産は30億円程度。すると、ソラコムは純資産のざっと6〜13倍の価値があるとKDDIに認められたことになる。

「ソラコムからKDDIに話を持ちかけた」

設立から3年未満のベンチャー株が100億円以上で譲渡されるのは日本では過去に例がないとされる。買収後も社名、本社、社長、ブランド名は従来のまま。「変わるのは自社サイトにKDDIのロゴを入れるかどうかくらい」と玉川憲社長は説明する。ドコモの回線を借りる「MVNO」としての形も変えない。玉川社長ら創業メンバーは、9月以降も株を持ち続ける。

それではなぜ、KDDI傘下入りを決めたのか。話を持ちかけたのはソラコムのほうだった。ソラコムはベンチャーファンドなどから2015年6月に7.3億円、2016年5月に24億円の資金調達に成功。「ベンチャーらしからぬ強い調達力は、高い将来性を裏打ちするもの」(IT企業幹部)として、大きな注目を集めた。

ただ、玉川社長は資金調達の実績に浮かれることなく、次の手を考え始めた。「資金が枯渇しそうになってから動き出すと足元を見られる」。そんな考えがあったからだ。大企業での勤務経験がある40歳前後の人材を中心に設立したシニアベンチャーならではの冷静さといえる。

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