フランス人が大統領選前に「焦り始めた」ワケ フェイスブックには悲鳴のような投稿が…

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今回の大統領選には、いつもより多くのフランス人が関心を寄せている(写真:AP/アフロ)

4月24日の朝。前日の夜にワインを飲んでもいないのに、二日酔いを思わせる頭痛で目が覚めた。曇った空もさらなる苦痛を与える。そう、私の国フランスでは、前日、大統領選挙の第1回の投票日で、その夜結果が発表された。その結果を見た瞬間、私は大絶望し、今すぐフランスを出たいという感情に襲われた。

ご存じのように、1回目の選挙で選ばれたのは、エマニュエル・マクロン氏とマリーヌ・ルペン氏だ。ルペン氏といえば、2002年の選挙あたりから頭角を現し始め、支持率を伸ばしている極右政党「国民戦線」の代表(現在は党首を退いている)。一方、マクロン氏は、2年前に突如として政治の表舞台に現れ、経済産業デジタル相を務めた後、瞬く間に注目を集めた、中道政治運動「前進!」所属の若手政治家だ。

ハッキリ言ってろくな候補者がいない

ぶっちゃけた話、今回の選挙までは、私は政治とあまり縁がなかった。18世紀に起きたフランス革命のおかげで、現在のフランスは、一般人でも投票ができる自由の国だ。この国で生まれ育ったからには、投票の大切さを理解しているし、選挙を軽視するのはとても駄目なことだと、子どもの頃から親や先生からたたき込まれて育った。

だから、フランスの標語の「Liberté(リベルテ), Égalité(エガリテ), Fraternité(フラテルニテ)(自由、平等、友愛)」 という旗印のもと、「直接選挙という神様を奉るべし」ということは私の無意識になんとなく漂ってる。幼い頃、おじいちゃんたちがたまに家にご飯を食べに来ると、社会の暗い話題や、文句まみれの政治議論が交わされていた。そういう環境で育ってきたが、大人になって「政治の世界はややこしくて、勉強するのが面倒だな」と感じていた一方、十分に関心を持たないことに対して罪悪感もあった。

しかし、今回の選挙は別だ。「真剣になるべし」と感じたのは、どうやら自分だけではない。同世代の30代のフランス人と話しても、いつもよりも、なんとなく関心が高いと感じる。

長く続く不景気や、今のフランソワ・オランド大統領の人気のなさのせいなのか、はたまた、ネット上にいろいろな候補者の情報が出回っているせいなのか、とにかく「今回こそ何かを変えなければ」というのが周りの人たちの口癖となっていた。アメリカのドナルド・トランプ大統領の勝利にあぜんとしたフランス人も多く、「やっぱり、どうあっても最悪な結果だけは避けたい」という精神で投票した人がかなりいたようだ。

とはいえ、第1回目の結果が発表されるまでは、私の周りでは、誰に投票するかを明かす人は、あまりいなかった。その理由はなんだろうか。

やはり「ろくな候補者がいない」という一言に尽きる。たとえば、有力な候補者だった、フランソワ・フィヨン氏の不正給与疑惑。不思議なことに選挙の直前にスキャンダルが発覚した。そのせいで政治家への信頼がダダ下がりしたこと。一言で言えば、選挙前から混乱した雰囲気が漂っていた。

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