【産業天気図 家電・AV】消費減速と円独歩高でどしゃ降り続く。同業再編・撤退の気配濃厚

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月
 

世界的な消費減速と円独歩高を受け、家電・AV業界は主要企業が2009年度も赤字に陥る大雨状態が続きそうだ。ソニー<6758>、パナソニック<6752>を筆頭に、各社は人員削減や生産拠点再編などの構造改革を断行し、09年3月期は大幅赤字が不可避。さらに来期も消費と為替の大幅な回復は期待薄。プラズマテレビからの完全撤退を決めたパイオニア<6773>に続き、製品・事業分野ごとの同業再編や撤退が起こる気配が濃厚だ。

財務省輸出貿易統計によると、薄型テレビやカーオーディオなどの民生用電子機器の輸出実績は12月、668億円にとどまり、前年同月比50.2%にとどまった。薄型テレビは実に6割減。この分野に巨額の投資を重ねてきた主要メーカーの収益を大きく損ねる要因となっている。また、自動車販売の急落を受け、カーオーディオも6割減に落ち込んでいる。

この環境の中、ソニーは今期2600億円の営業赤字に陥るとしており、非正規社員含め世界1万6000人規模の人員削減を軸とした構造改革に着手した。だが少なくとも1700億円に上る改革費用は主に10年3月期に計上する見通しのため、10年3月期も赤字が続く公算が大きい。パナソニックは09年3月期に構造改革費用3450億円を一挙に計上するため、来期の浮上効果はソニーより高いといえそうだ。ただ、両社が構造改革を行ったITバブル崩壊直後の状況と比べると、今回の方がより環境が厳しい。ITバブル後は基本的に円安が続き、構造改革の効果が出やすい追い風局面だったからだ。今回は為替動向次第で、構造改革効果が目減りする展開も否定できない。

中位以下のブランドでは、合従連衡や撤退の節目となりそうだ。薄型テレビの赤字が続く日立製作所<6501>は16日、社長・会長の引責辞任に合わせて、テレビを含む家電事業の本体からの切り離しを発表した。当面は完全子会社化として機動的経営を図るとしているが、日立本体にあった従来よりも、製品ごとの採算を透明化した上で撤退判断を下すことが容易になる。また、同業との合弁化など外部資本の導入も容易になる。こういった事業見直しの動きが、2009年度は複数起こりそうだ。

注意点は主要企業の財務状況だ。たとえばパイオニアは株主持ち分比率が急落しているなど資本強化が喫緊の課題。JVC・ケンウッド・ホールディングス<6632>は9月に社債償還を控えている。こういった財務課題への処方は資本提携などの形で同業他社に影響する可能性も大きく、注視が必要だ。

(杉本 りうこ)

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