【産業天気図・スーパー/コンビニ】食品の買い控えがでスーパーは「雨」へ悪化、コンビニはタスポ効果も前半のみで後半は「曇り」へ

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予想天気(スーパー)
 09年4月~09年9月   09年10月~10年3月

 
 2009年度のスーパーは年度を通じて「雨」へと前回の「曇り」予想から天気は悪化する。衣料品、住居用品の売れ行き悪化に加え、食品にも買い控えの波が押し寄せそうだ。一方、コンビニ業界の前半は「晴れ」、後半は「曇り」。消費不況とタスポ効果の一巡で、後半は厳しい戦いを強いられるだろう。

総合スーパー(以下GMS)最大手のイオン<8267>は09年度が正念場だ。不採算店を中心に約30店のGMS閉鎖を予定する一方で、GMSの出店を当初計画の7店から3店へ半減。ショッピングセンターも出店を一部を先延ばしするなど、大型出店投資を抑え、収益改善を目指す。
 
 商品面では、上期中にPB「トップバリュ」の1700品目(全5000品目)を1~3割値下げする。また、トップバリュより低価格の「ベストプライスbyトップバリュ」も拡充し、新たに500品目を投入する予定だ。さらに、商品数を絞り込み、1商品あたりの仕入れ量を増やすなど、仕入れコストの低減にも取り組む。苦戦が続く衣料品では、機能性肌着を中心に新商品を投入。食品の低価格化と衣料の新商品強化で需要喚起を図る。
 
 ところが、最大の懸念はこれまで売り上げを下支えした食品も昨年後半から前年割れし始めたことだ。非食品も前年比で減少幅が拡大しており、消費減退のトレンドを打ち破るのは容易ではなさそうだ。

セブン&アイホールディングス<3382>傘下の総合スーパー、「イトーヨーカ堂」も業績悪化に歯止めがかからない。食品は値上げの効果などで比較的堅調だが、衣料、住関連の落ち込みは想定以上だ。09年度は新規出店を抑え、不採算店の食品ディスカウント「ザ・プライス」転換を進める。期中に20店前後の転換もありそうだ。ディスカウントはどの店も好調を維持しており、赤字店の「止血」効果も期待できる。ただし、衣料、住関連はいまだ打開策を打ち出せていないだけに、同社の業績停滞は今後も続くだろう。
 
 昨年まで比較的堅調だった食品スーパーにも変化が出てきた。大手スーパーが低価格品を強化する中、調達力に乏しい中小スーパーは、価格競争から離脱せざるを得ない状況だ。ムダを省いた小分け販売や自然食品、無添加・無着色などの「付加価値商品」で対応するが集客力の衰えは隠せない。一方、首都圏の食品スーパーも、イオンの「まいばすけっと」や「アコレ」など、小型スーパーの出店加速で競合環境は激化するだろう。先行きは厳しくなりそうだ。

一方、コンビニ業界は、09年度前半まで「タスポ効果」によるたばこ増加が業績を押し上げる。タスポが関東圏に導入されたのは昨年7月。今年6月で効果が一巡する見込みだ。今年の既存店の動向に関しては、「上期は前年を上回るが、下期は横ばいもしくは微減」というのが各社の共通する見方だ。
 
 また、今年2月にローソン<2651>がエーエム・ピーエム・ジャパン<未上場>を買収したように、再編に向けた動きもより加速する見通し。コンビニは店舗システムや新サービスの開発、店舗改装など、つねに多額の投資を重ねなければ店舗の新鮮味を失う業態だ。規模の小さい地域チェーンは大手に比べ、投資面の不利は否めない。買収意欲の旺盛なローソンを筆頭に、さらなる合従連衡が進む可能性もあるだろう。

(鈴木 良英、田邉 佳介)

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