【産業天気図・証券業】08年度は「曇り」、サブプライム問題契機の金融市場混乱長期化で収益環境悪化

世界経済や金融市場の先行きについても不透明感が漂う中、既存大手を中心とする証券業の2008年度前半の天気見通しは前回同様「曇り」とし、後半についても「曇り」を予想する。証券各社の今08年3月期第3四半期(07年9月~12月)決算は、ネット専業を含む上場23社のうち14社が営業減益(米国会計基準の野村ホールディングス<8604>は税前減益)となった。昨夏以降から続く、米国のサブプライムローン(信用力が低い個人向け住宅融資)問題に端を発した金融市場の混乱が長期化する中、軟調な株価や対ドルの円高が進行する外国為替市場などの動向から、証券会社の収益環境が悪化している。
 日経平均株価は昨年6~7月には1万8000円台に乗せるなど堅調な展開だった。が、サブプライムローンの焦げ付き問題をきっかけにして世界的な信用収縮が発生し8月、11月に急落、08年に入って米国の景気減速懸念も強まり、3月には1万2000円を割り込む展開が見られるなど、荒れた相場が続いている。
 証券会社にとっては、主力とする株式委託手数料収入が弱含んでいるほか、IPO(新株式公開)や増資引き受けなどの投資銀行業務も苦戦。07年前半は好調だった投資信託や外債などの販売についても、新興国株式市場の悪化や振れ幅の大きい為替市場の動向などを受けて、拡販が鈍ってきている。
 「会社四季報春号」では、今08年3月期業績予想について、中国株関連の収益が好調な東洋証券<8614>の営業益予想を増額した以外は、上場23証券会社のうち22社を営業益段階で減額と見ている。第3四半期で営業増益だった10社についても、第4四半期(08年1月~3月)は急激な落ち込みが見込まれる。結局、上場23社のうち17社が営業益段階で減益もしくは赤字となると予想している。
 今後については、米国経済の景気後退(リセッション)入りが見込まれる中で、輸出を中心とした企業部門が牽引する日本経済にも下振れリスクが生じており、過去5期連続で経常最高益を更新していた日本企業の業績拡大が鈍化、最悪は減益に転じるとの見方が広がっている。
 先行きの株式市況について楽観的な見方ができない中で、来09年3月期については、18社が営業利益段階で減益もしくは赤字を予想する。増益もしくは横ばいを見込む5社も、今08年3月期にサブプライムローン関連の証券化事業で出した巨額損失が消滅する野村やみずほ証券(非上場)と今年5月に合併する予定の新光証券<8606>、昨年起きたオー・エイチ・ティー<6726>株急落事件で発生した、各社の顧客の巨額損失を貸倒引当金として計上した分の費用負担がなくなる藍澤証券<8708>など、特殊要因の面がなければ実質的には収益環境は厳しい。
 足元の業況は別として、今後、証券業界の注目点となるのは、銀行グループによる証券業の囲い込みだろう。
 政府は3月4日、金融商品取引法の改正案を閣議決定した。グループ内の銀行・証券・保険の役職員兼職規制を取り払うなど、ファイアウォール(業務隔壁)規制を欧米並みに緩和する。改正案は08年の通常国会に提出する方向で、早ければ09年にもファイアウォール緩和が実現しそうだ。
 この動きをにらんで、すでに大手銀行グループは動いている。
 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)<8316>が06年にSMBCフレンド証券を、07年9月には三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)<8306>が三菱UFJ証券を、それぞれ100%子会社化した。08年1月には、国内初の三角合併方式となる株式交換で、日興コーディアルグループ<8603>が、米シティグループの完全子会社となった。また、MUFGは、ネット専業のカブドットコム証券<8703>への出資比率を07年4月に40%超に高めたばかりだが、同12月のTOBでさらに50%超にまで持ち株を増やした。MUFGは、ネット専業で独立系の松井証券<8628>とも資本提携の交渉を続けている。ネット専業大手のSBIイー・トレード証券<8701>も、8月に実施される株式交換でSBIホールディングス<8473>の完全子会社となる。
 一方、08年1月に予定されていたみずほ証券と新光証券<8606>の合併は、みずほ証券の巨額損失問題で08年5月に延期されたが、今後、銀行業と証券業の規制上の垣根が緩和される見通しのなか、大手銀行グループの証券分野への侵攻は強まるばかり。野村や、SMFGと法人部門の合弁会社を持つ大和証券グループ本社<8601>が、今後どういう手を打つかが注目される。本格的な業界再編の火種になる可能性もある。
【武政 秀明記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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