日経とFT取り合った独巨大メディアの正体 老舗アクセル・シュプリンガー変貌の軌跡

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出資は直接行う場合もあればベンチャーキャピタルファンドと組んでという場合もある。これにより「(出資先の)企業の戸口に立ち、テーブルを共にすることができるようになる」とミュッフェルマンは言う。「その後、成長が確かめられれば、出資比率を増やしていく」

だが最近、世界の大手メディアグループが競うように若い(そして多くの場合、海のものとも山のものともつかない)ネット企業に出資しているせいで、これらの新興企業の株価はつり上がっている。一部のアナリストからは、まず出資ありきのアクセル・シュプリンガーの戦略は大きな代償を伴うギャンブルになりかねないとの警告の声も聞かれる。

「英語市場」への執着

「アクセル・シュプリンガーは、相手がネット企業だというだけで非常に多くの買収を行ってきた」と言うのは、英調査会社エンダーズ・アナリシスの創業者クレア・エンダースだ。「ネット企業は収益率の高さからよく買われるが、倒産率も高い。光っているがただのホタルに過ぎないというところも多い」。

デップナーはフィナンシャル・タイムズの買収から手を引いたことが、同社が投資において一線を超えないことの証拠だと言う。

「この10年、私たちは無理のない投資を、金を払いすぎるくらいなら自分から手を引くよう心がけてきた」とデップナーは言う。「できることならフィナンシャル・タイムズを買収したかった。一流ブランドだし、デジタル事業も順調に進んでいたからだ」と彼は言う。「買収による成長と、英語圏における事業そのものの成長はわが社にとって戦略的優先課題だ。そしてコンテンツは最優先課題だ」。

欧州には約1億人のドイツ語のネイティブスピーカーがおり「市場においてわが社はすでに非常に強いポジションを築いているが、(ネット事業においても)さらなる成長の限界に近づいている」 と、ミュッフェルマンは言う。

その一方で「世界には英語のネイティブスピーカーは4億人おり、さらに第2の言語として英語を話す人が8億人いる」と彼は言う。英語圏向け事業を展開すれば、規模拡大の可能性は劇的に大きくなるというわけだ。

その一方でアクセル・シュプリンガーは、投機的な投資にも意欲を示してきた。

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