スクウェア・エニックス「ドラクエ」生みの親・堀井雄二がオンライン化を決断したワケ--「将来はスマホ展開もありうる」
■スマホ vs.家庭用ゲーム機
ドラクエシリーズは、1986年の第1作発売以来、全世界で累計5900万本以上の出荷実績を誇る“お化けタイトル”だ。パッケージゲーム以外にも、業務用カードゲーム機(「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」)やグッズ(鉛筆の「バトエン」)などを総合展開し、国民的IP(Intellectual Property:知的財産)といっても過言ではない。
ただ、11年の国内家庭用ゲームの市場規模は、前年比5.7%減の5018.95億円と前年割れが定着(コンピュータエンターテイメント協会調べ)。ハード、ソフトともに国内首位に君臨する任天堂も、12年3月期は上場来初の営業赤字に沈み、直近の第1四半期(12年4~6月期)も赤字が続いている。
背景には、ユーザーがゲームを行う環境の劇的変化がある。わざわざ据置型ゲーム機や携帯型ゲーム機を買わなくとも、今やスマートフォン上で簡単にゲームが遊べる。
コアなゲーマーはソーシャルゲームに流れないという見方もあるが、市場統計や各社の決算数値を見るかぎり、従来型の家庭用ゲーム機(携帯型含む)は、スマホと比較して、ユーザーの時間を奪い合う競争に負けている状況だ。今後はスマホより画面の大きいタブレット端末の普及も予測されており、なおさら家庭用ゲーム機は劣勢に立たされる。
「ドラゴンクエストX」もオンライン対応とはいえ、まずは据置型ゲーム機の購入が必要となる。そのため、スマホ全盛期の中、1作400万~600万本という過去の出荷水準に到達する可能性は低いだろう。複数のゲーム業界関係者からは、「出荷本数自体、従来作品よりかなり抑えているが、予約の受け付けはその半分程度にとどまっている」との声も聞こえる(出荷本数や予約状況について、会社側は非開示)。
それでも、ドラクエのタイトルが、オンライン化に舵を切った意味は大きい。実際、堀井氏は今回のオンライン化の狙いについて「ドラクエシリーズで1本くらいそういうものがあってもいいのではと思った」とお茶を濁す一方、「どんなハードでも遊べればいいと思ってる。スマホで展開することも、環境的にそれがメインになっていけば、ありだと思っている」と踏み込んだ発言をした。
市場低迷が続く中、家庭用ゲーム機の特徴や性能に依存せず、タイトルのマルチ展開を進めていかなければ生き残りは厳しい--そんな判断が堀井氏ら開発チームにあったことが透けて見えてくる。
「ドラゴンクエストX」の発売は、日本のゲーム業界の構造を変える転換点となるのか。発売後のユーザーの評価と、それにどう対応していくかが、行方を大きく左右する。
発売を心待ちにしていたドラクエユーザーがレジに殺到した
(二階堂 遼馬 =東洋経済オンライン)
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