抑えようがない組織のグローバル化--『グローバル・エリートの時代』を書いた倉本由香利氏(経営コンサルタント)に聞く

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──中でも、オーナーシップが重要なようです。

物事を組み立てて、前に進ませるためのポイントになる。オーナーシップとは、つねに当事者意識を持ち、自分が積極的に動いて解決しようとすることだ。あらゆる場面で自分の売りや得意技を示して、挑んでいくことになる。

──日本人の「和」重視と矛盾しませんか。

日本人は会議でなぜ話さないのかとしばしば聞かれる。その理由を日本人の和の重視で説明している。日本人はその場の雰囲気を大切にし、対立することを避ける傾向がある。それであえて発言しないのであって、決して意見がないわけではないと。互いに誤解がないように、違いを感じたり違和感を持ったとき、説明する力がグローバル環境では大事になってくる。

──ゼロベース構築力と和の関係も矛盾含みでは。

ゼロベース構築力は、必要な目標や解決方法、戦略などをゼロから論理的に構築する力のことで、グローバル・エリートのスキルとしては両方とも持っていたい。調整する力といえる和で問題が解決しない場合には、掘り下げて、ゼロベースで問題解決をしていかないといけない。調整で済まないときは、ゼロから論理的に積み上げていこうということにおそらくなる。

──日本発のグローバル企業が日本にとどまり続けられますか。

そうさせるには、二つしか方法はない。日本が技術の中心地として、新しいイノベーションを次々に生み、優秀な技術者や研究者を輩出し続ける環境を持つことと、グローバルに活躍できる素地を内外の若者が身に付けられる環境を持つことだ。それができれば好循環となって、日本発のグローバル企業の本社機能をとどまらせることができるだろう。

くらもと・ゆかり
1978年生まれ。東京大学理学部物理学科卒業、東大大学院物理学科修士。米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院にてMBA取得。有力外資系コンサルティングファームにおいて、主に日本企業のグローバル化を支援する仕事に取り組む。ブログ「My Life After MIT Sloan」の筆者。

(聞き手:塚田紀史 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2012年7月21日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


『グローバル・エリートの時代』 講談社 1890円 301ページ


  
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