■ブランドの中核価値を捨て、付随機能の香り付けに焦点をあて大ヒットに
先頃発表された日経MJ(流通新聞)紙の「2012年上期ヒット商品番付」。その西の前頭三枚目に異色の商品が列せられた。P&Gの「レノアハピネス アロマジュエル」である。「レノア」といえば多くの人が知る同社の衣類柔軟仕上げ剤のブランドだ。だが、この商品は衣類をふんわりと仕上げるという機能、つまり柔軟仕上げ剤の機能がない。「香り付け専用」なのである。
「レノアハピネス アロマジュエル」の売上は凄まじい。2012年2月中旬より発売開始をしたところ、「発売後1カ月半で年間販売数量の半分を売り切り」(2012年4月11日付 日経MJ 「1~3月ヒット商品--定番にひと工夫、ニーズ取り込む。」)、「生産が追いつかず発売1カ月で出荷停止に」(2012年6月20日付 日経MJ 「2012年上記ヒット商品番付-ひとつ上へ価値磨く」)までなった。ヒット商品番付で前頭三枚目に列せられた理由もそのあたりにあるのだろう。
フィリップ・コトラー氏の「製品特性分析」に則るなら、柔軟仕上げ剤の「中核」価値は、「衣類をふんわりと仕上げること」にあり、それを実現する「実体」価値である「より肌触りの良い仕上げ」に各社がしのぎを削る。しかし、P&Gが米国を中心に販売していた柔軟仕上げ剤「ダウニー」の香りが日本でも大ヒットしたことから、近年、「付随機能」である「良い香りの仕上げ」が注目されるようになってきた。 実際、「この数年は香りが長く残る商品がけん引役となり、市場規模は10年間で約2割増えるなど拡大傾向にある」(2012年5月11日付 日経MJ 「衣料用柔軟剤、香る「フレア」鼻差で首位、花王、水分に反応の新技術(ヒットを狙え)」という。コモディティ、成熟市場である柔軟仕上げ剤は、もはや中核価値、実体価値での差別化は困難になっていたため、主戦場が付随機能に移っているのだ。
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