生命科学×情報科学
新たな価値を生むグローバルリーダーの誕生
東京工業大学 情報生命博士教育院
産業界で活躍できる
博士人材の育成に挑む
平成23年度に文部科学省の「博士課程教育リーディングプログラム」に採択された、東京工業大学 情報生命博士教育院(ACLS)。従来の大学院教育と異なる最大の特長は、産業界・官界・国際機関などで活躍できる博士人材の育成を目指している点だ。
ACLSに所属する学生は、生命科学または情報科学の専門家としての軸足をしっかり修得する。そのうえで副専門の基盤知識を学び、問題解決の経験を持つという。興味深いのは、両分野の学生たちがチームを組み、各自の専門性を生かして問題解決に挑む演習を行っていることだ。専門の異なる学生が協力しながら問題解決に取り組むことで、異分野の価値観や考え方に触れながら相互理解を深め、協働のコツを体得するのがその狙いだという。イノベーションの創出に向けて、多くの人を巻き込みながら未踏分野に挑戦するグローバルリーダーを育成する――ACLSはこれまでにない新たな試みで、産業界で活躍できる博士人材の育成に力を注いでいる。
産業界で活躍できる人材を輩出するために欠かせないのが、キャリア教育による学生の意識改革だ。ACLSでは、産業界から若手博士人材をメンター特任教員として迎え入れ、キャリア指導・講演会・共同研究などを行い学生を広くサポートしている。そのほか、学生のキャリアに対する考え方を多様化するためのさまざまな取り組みを展開した結果、産業界の研究現場、コンサルタント、ベンチャー経営者などを志す学生が増えてきたという。
国際的な活動で磨かれる
リーダーシップ
ACLSには多様なバックグラウンドを持った留学生も多い。その一人が、コロンビアから来日した総合理工学研究科のアレハンドラ・メヒア・トバールさんだ。
彼女の研究テーマ「ブレイン・マシン・インターフェース」は、脳で考えていることを機械に伝える技術で、リハビリ分野で注目を集めている。この技術を応用することで、身体機能に障害を抱え車いす生活を送る方が再び歩行できるようになったケースも報告されており、今後の発展が期待されている。母国の大学で医用生体工学を専攻していたトバールさんは、その研究テーマをさらに深めるために日本での進学を決意し、ACLSに出合った。「生命科学に加えて情報科学についても学ぶことができ、語学関連授業が豊富で、海外や産業界でのインターンシップなどさまざまな活動があるACLSは、非常に魅力的でした」(トバールさん)。