「安定化」が課題の中国、世界経済の牽引役は返上

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 世界経済の牽引役だった中国の成長が息切れしてきたのではないか、という不安が募っている。

2012年の世界の株式市場は、力強く上昇した1~3月から一転、4月以降は下落に向かった。直接的な要因はもちろん、深刻な欧州の債務問題だ。加えて、米国の経済も停滞し、躍進が続いてきた新興国の経済成長率も低下が目立ってきた。全世界的に景気への悲観論が台頭する中、中国の動向がカギを握る。

期待を先取りした金融緩和

6月8日、中国人民銀行は金融緩和をさらに進めた。引き下げにそれまで慎重だった預金・貸出基準金利を6月8日から0・25%引き下げ、預金金利は3・25%に、貸出金利は6・31%になった。

日中産学官交流機構の田中修特別研究員は「中国政府は、4月の景気指標が軒並み悪化したので、かなり慌てたようだ。通常、経済政策関連の国務院常務会議は、4月に開かれた後は、4~6月期のGDPを受けて7月に開催されるが、急きょ5月にも開いた」と指摘する。

5月には預金準備率の引き下げとともに、公共投資の前倒し執行を指示。凍結していた広東省湛江や武漢の年産1000万トンの製鉄所建設の許可、高速鉄道建設の再開などに踏み切った。温家宝首相も経済の安定成長と物価安定の両にらみの姿勢から、より経済の安定成長に軸足を移した発言をするようになった。

中国のGDP成長率は5四半期連続で減速し、1~3月期は8・1%となった(図)。もともと中国は2ケタ成長の時代は終わったと見ており、今年の公式発表の成長率目標は7・5%、本音の目標は8%台前半。が、政府の予想以上にダウンサイドリスクが高まっている。


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