《プロに聞く!人事労務Q&A》二重就業規則に違反した社員への対応について教えて下さい。

《プロに聞く!人事労務Q&A》二重就業規則に違反した社員への対応について教えて下さい。

質問

退職が決まり、現在有休休暇消化のために長期休暇をとっている社員がいます。この社員は2カ月後に他の会社に転職します。しかし、この社員が長期休暇中に、転職先で既に勤務していることがわかりました。弊社は二重就業を禁じています。

この社員への退職金支払い拒否、退職金減額などをすることはできますか?もし、この長期休暇中に転職先で労災が発生した場合、どのように対処すればいいでしょうか?
(アパレル:総務部)

回答
回答者:社会保険労務士朝比奈事務所 朝比奈睦明所長

【会社における服務規律と懲戒処分】
会社が二重就業を禁止する就業規則は、一般的なものとして捉えることができますが、では、実際に二重就業が発覚した場合の懲戒処分となると、慎重に対応しなければなりません。

リーマンショック後の厳しい社会経済情勢において、企業は、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)を実施することで雇用調整している場合があります。その際には、「他社におけるアルバイトなど認めます」といった内容の措置を取った企業も多いのではないでしょうか。

したがって、いわゆる二重就業そのものが企業秩序を著しく乱すものと判断することはできません。しかし、二重就業することにより、本業の就労への影響、企業の信用や対面への影響が生じる場合には、企業秩序違反として処分対象になるものと判断します。とりわけ、競業会社であったり同業他社でアルバイトするなどといった兼業は、会社への背信性が強く、懲戒処分対象になるものです。

【退職金支払い拒否もしくは減額することは可能か】
では、ご質問にあります、「退職金支払い拒否、退職金減額」についてですが、まず、就業規則に「懲戒解雇に相当する場合には退職金を減額もしくは支給しない。また、退職後であっても、在職中の行為で懲戒解雇にあたる事実が明らかになったときは、すでに支給した退職金の全部もしくは一部を返還させるものとする。」というような定めがあることが前提です。

また、裁判例などによる解釈として、退職金は「功労報償的性格」や「賃金後払的な性格」を有するものであり、永年勤続の功労を抹消させてしまうほどの背信行為がない限り、退職金を全額不支給とすることは許されませんが、背信性の程度によっては減額することが認められる場合もあります。

例えば、今般の二重就業が、会社における「競業避止義務」違反になる場合、さらには「二重就業中において守秘義務漏えい」が発覚した場合などは、その背信性の程度により懲戒処分に価するするものと判断できますが、よっぽどの理由がない限り退職金全額を不支給とするのは難しいでしょう。

よって、競業会社への再就職でもなく、さらに退職が決まってからの年休消化中において、転職先に勤務していることが発覚したとしても、退職金の減額、不支給は難しいものと判断します。

【転職先における労災事故】
転職先において労災事故が発生した場合は、転職先の労働者災害補償保険により災害補償を受けることになります。そもそも労災事故というのは、実際に業務を遂行している過程で生じるものであり、年休消化中に発生するものとは解釈されません。

労災事故が起きた際の災害補償責任は、実際に使用している使用者が負うものであり、転職先における労災事故は、転職先の使用者が災害補償責任を負うため、貴社にその責任が及ぶものではありません。

 

朝比奈睦明(あさひな・むつあき)
東京都社会保険労務士会所属。1990年日本大学文理学部卒業。社会保険労務士事務所勤務を経て、2000年4月に社会保険労務士朝比奈事務所を開設。 主な業務分野は、賃金・評価制度等人事諸制度の構築、就業規則作成、社会保険事務アウトソーシング等。著書に「図解 労働・社会保険の書式・手続完全マニュアル」(共著)。


(東洋経済HRオンライン編集部)

 

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