【産業天気図・ガラス/セメント】ガラスは欧州や薄型ディスプレー好調だがリスク要因も。セメントは減益へ

ガラス各社の07年度は、国内板ガラス市場は前年度に続いて厳しい状況となるが、昨年6月に世界2位の板ガラスメーカー、英ピルキントン社を買収した日本板硝子<5202.東証>、急激に市場拡大している薄型パネル・ディスプレー用ガラスを擁する旭硝子<5201.東証>などは過去最高益をうかがう好業績が期待できる。ただ両社ともリスク要因を抱えており、全般的には先行き不透明な「曇り」の状況。また前年度はオフィスビルやマンションなど国内民間需要の活況に引っ張られたセメント各社も、今年度は燃料費や減価償却費用の増加で減益予想。ガラス同様「曇り」の状況となっている。
 国内ガラス各社は、建築用ガラスについて燃料費上昇に伴い、前年度から需要家に対し値上げを要望している。だが主要ユーザーである建設会社の抵抗は強く、価格転嫁は難航、収益は厳しい状態だ。一方で、東欧やロシアでの建築需要拡大を背景にした欧州の板ガラス市場は伸びが続いている。活発な需要に後押しされて比較的価格転嫁がしやすい状況にあり、欧州をお膝元とするピルキントン社を擁する日本板硝子、ベルギー・グラバーベル社を子会社に持つ旭硝子は、欧州の好況を全面的に享受する格好となる。日本板硝子はピルキントン社がフル連結(前期は第2四半期から連結)となることから、営業利益は前期比70%強増加する見通しだ。国内と米国の自動車用ガラス市場が主体のセントラル硝子<4044.東証>は減益になった前年度同様、厳しい展開が予想される。
 また旭硝子は、今年度中に韓国と台湾に液晶とプラズマ用ガラスの専用窯を計3基立ち上げる予定。薄型パネル用ガラスは参入メーカーが少ない寡占状態にあるため、価格低下も小さく、供給力拡大が利益増に直結する。ディスプレー用ガラス専業の日本電気硝子<5214.東証>も収益続伸の見込みだ。
 ただ、好業績を謳歌するはずの旭硝子や日本板硝子に将来的なリスク要因が浮上してきた。今春にEU(欧州連合)の欧州委員会から、ピルキントン社とグラバーベル社が相次いで自動車用、建築用ガラスのカルテル疑惑の通告を受けたからだ。ピルキントン社はすでに前年度に制裁金を800億円と仮定して引当金を計上。同社を連結する日本板硝子は資産の目減り分が加わったのれんを20年で償却する対応策を始めた。現在、カルテルそのものについては審査中だが、最終的にカルテルと判定されれば、さらに巨額の制裁金を科せられる可能性がある。さらに、独禁法違反という事態が今後の両社の欧州事業そのものに影響することも考えられる。
 セメント各社は、民需に牽引された国内市場の活況で、前年度下期からは需給のひっ迫感が強まるほど久々の需要に湧いた。長年の設備縮小で供給余力が細っていたためだ。その状況は少なくとも07年度前半までは続くと見られる。ただ、燃料となる石炭価格が急激に上昇している。また制度改正に伴って減価償却費用が増大することから、業界首位の太平洋セメント<5233.東証>、住友大阪セメント<5232.東証>はそろって営業減益予想だ。
 太平洋セメントは前年度の牽引役でもあった米国事業の好調がどの程度維持できるかによって、収益の下支えができるかが決まる。住友大阪セメントは前期赤字のPDPフィルム事業の止血が課題になる。セメントメーカーの利益予想はもともと保守的ではあるが、現時点では上方修正があったとしても前年度並み程度にとどまる、と見られる。
【鶴見昌憲記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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