武田に戻ってきた追徴課税500億円、海外進出増加で移転価格課税リスクが急拡大

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以下のグラフは国税庁が毎年11月に公表している統計資料から作成したものだが、直近の平成22事務年度(10年7月~11年6月)の課税件数は146件。119件だった平成17事務年度を大きく上回る。1件当たりの課税所得金額は、武田、ソニーを除くと平成17事務年度には7.4億円だったが、平成22事務年度は4.8億円。巨額の課税処分が影を潜めただけで、近年の課税件数はむしろ増加傾向にある。
 

今や中小企業でも当然のように海外進出を図る。先進国の中でも日本は海外に進出する企業数が圧倒的に多く、その分、移転価格課税リスクは高い。特に相互協議の歴史が浅い新興国で移転価格課税を受けるケースが増加傾向にあり、相互協議を日本の税務当局に申請しても、相互協議そのものがなかなか進まない。

さりとて、海外進出によってグローバル企業のような利益を生み出せれば、ビッグ4をコンサルとして雇うコストにも合理性が生まれるが、中小企業の場合はそれもままならない。それどころか、すでに海外に進出している中小企業が、移転価格課税リスクをどの程度自覚しているのかも疑問というレベルであるだけに、民間レベルでのサポート体制の確立が急がれる。
(ジャーナリスト・伊藤歩 撮影:今井康一 =東洋経済オンライン)

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