たそがれの日本IBM、56年ぶり外国人社長

拡大
縮小

日本における顧客企業のIT予算は縮小傾向。得意とするメインフレーム(大型汎用コンピュータ)は“レガシー(遺産)”と呼ばれ、すっかり時代遅れになった。成長分野のクラウド事業などが、その落ち込みを補うまでにはなっていない。インドや中国のような新興国は2ケタ成長を続ける中、米本社における日本の地位は低下。それに歯止めをかけることのできる「米本社の眼鏡にかなう人物が育っていない」(日本IBMのOB)。今回の社長交代は、米本社の主導で立て直す、との意思表示だろう。

もっとも、本社による支配は以前から進んでいた。きっかけは05年に発覚した日本IBM社員による不正会計問題だ。これによって米IBMは04年決算の修正を余儀なくされ、経営を見直そうと米本社から次々と人材が派遣された。その結果、独立色は薄まっていった。

そのひずみといえるのが、スルガ銀行のシステム開発の失敗だ。同行は04年、業務全般のシステム刷新を日本IBMに依頼したが完成させることができず、開発は中止に。スルガ銀行は日本IBMに約115億円の支払いを求めて提訴。今年3月29日、東京地方裁判所は日本IBMに74億円の支払いを命じた。

この開発で日本IBMは、海外製パッケージソフト「コアバンク」を日本向けにカスタマイズしようとした。これを使えば高性能のシステムを安く開発できるからだ。ただ、海外ソフトを日本独自の仕組みに対応させるのは難しい。成功すれば他の銀行にも販売するチャンスが生まれる一方、うまくいかなければ追加のコストが発生し、採算が悪化する可能性があった。

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