カーネーションの花は咲く--そごう柏店「までい着」販売会までの足取りを追う
3月9日午後4時前、福島市内の松川応急第一仮設住宅に避難している飯舘村の母ちゃんたちを乗せたバスが千葉県柏駅前にある百貨店、そごう柏店の裏門に着いた。バスの後部座席には10人の母ちゃんたちが作った半纏や「までい着」と呼ぶ作業着など“商品”もぎっしりと積まれている。
あいにくの小雨模様の中、若手の母ちゃんたちは近くのホテルで宿泊手続きを済ますと、取って返して、商品を売り場である特設会場に搬入し始めた。
「売れるといいなあ」
高齢メンバーの世話役も務めてきた田中シノブさん、小幡由美子さん、松下清子さんが運搬車を押しながら、やや緊張した面持ちで運び入れる。そごう、セブン&アイ・ホールディングスなどの社員も応援に駆けつけて、あいさつも早々に、売り場の設営を始めた。約2時間後、売り場の正面上に「ご支援に感謝 いいたてカーネーションの会」と手書きした看板が取り付けられた。
「やっぱり、この言葉だよなあ」
古着を寄贈してくれた全国の人たち、ここまでこぎ着けるために協力してくれた東京の支援者たちを思いながら、同会の代表を務める佐野ハツノさんがつぶやくと、田中さん、小幡さん、木下さんが拍手しながらうなずいた。
翌朝9時過ぎ、開店前の静かなそごうのフロアにまでい着で身を包んだ母ちゃんたちがやってきた。一昨日まで、母ちゃんたちがせっせと作り続けた半纏、までい着や、他の仮設住宅の母ちゃんたちが生産した小物類がズラリと並ぶ。緊張した面持ちの菅野ウメさんたち、ベテラン勢は整った会場を「ほー」と声を上げて眺める。
「お客さんが来てくれるとありがたいなあ」
みんな、心の隅に不安を抱いていた。震災後、何ひとつ、いいことがない生活を送ってきた母ちゃんたちにとって、楽観的な発想はなかなか浮かんでこない。ウメさんが「昨日、覚悟は決めたから」とポツリとつぶやいた。
■仮設住宅を出発前の記念写真