金融庁検査、新方針は「形式」だけではNGに 新たな「金融行政方針」は実質的効果を追求

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それを受けて、一部の大手資産運用会社では、親会社とは無関係な独立社外取締役を招聘するなどの施策を打ち出している。しかし、今回の金融行政方針は、そうした形式上の要件ではなく、実質的に親会社の影響を排除して顧客志向になっているかどうかを検証すると言っているわけだ。

ただし、金融行政の法的基盤である金融商品取引法体系が金商法業者(銀行、証券、保険会社など)に要請している責任概念と、フィデューシャリー・デューティーは同一ではない。

金融機関の峻別が進む可能性も

この点について金融庁は「金融機関が取るべき行動等について、これを仔細に規定するのではなく」、優良事例の公表などを通じて「プリンシプルの形成・共有」をしていく、と3番目の「金融庁の改革」で触れている。

フィデューシャリー・デューティーを徹底している金融機関を優良事例として公表すれば、そのような金融機関に一般消費者も含めて支持が向かうメカニズムが形成され、その下で「よい金融機関」と「よくない金融機関」の峻別が進む可能性がある。系列下で販売会社の圧力を遮断しきれずにいる資産運用会社は厳しい状況に置かれかねない。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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