“持ち株会社病”に先手打つ三菱ケミカルの人事戦略

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 こうした課題にいち早く直面した旭化成は手を打った。今春、8つの分野にまたがる事業会社間をまたぎ、グループ横断で新ビジネスを「環境・エネルギー」や「医療」などの3テーマでつくりだすプロジェクトを発足したのだ。

三菱ケミカルグループも旭化成と同様の課題に直面する可能性がありうる。たとえば、炭素繊維事業は製法こそ違うが、三菱樹脂と三菱レイヨンがそれぞれに手掛けている。化学系の3メーカーは事業領域が重複している分野が少なくなく、これを効率的に集約していくとともに、各社が自社の収益を優先してグループ全体で非効率化することがない企業体質を構築していかなければならない。

小林社長が打ち出した、トップだけでなく部課長級を含めた大幅な人事交流戦略の裏側には、こうした狙いがあるとみられる。同じ企業グループ内とはいえ、直接の出身母体でない企業からトップが送り込まれる人事に反発したり、混乱したりする可能性もあるが、小林社長が持ち株会社経営の課題にいち早く切り込んだことは間違いない。

(武政 秀明 =東洋経済オンライン)

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