兵庫県丹波市が企業立地としても
働く場としても好条件な理由とは
【特別企画】ランサーズ秋好社長が語る地方ビジネスの今
兵庫県丹波市が企業誘致に意欲的だ。特にIT企業に対しては積極的に受け入れ態勢を整備し、実際に同市内にオフィスを設ける企業が現れるなど実績も上がっている。市内には複数の工業団地も整備され、大阪からも神戸からも近いという交通の便と圧倒的な地価の安さが大きな魅力になっている。豊かな自然に囲まれながら都市機能も程よく装備した丹波市は、働く場としてもこれから注目度が高まりそうである。
大阪からも神戸からも約1時間
エンジニアやクリエーターほど、環境のいいところで仕事をしたいというニーズが強いといわれる。確かに喧騒に囲まれた都市のオフィスよりは、木々の緑が鮮やかな環境のほうが、仕事がはかどること請け合いだ。
兵庫県丹波市にはそういう環境がある。これからの季節、清住の里では約7ヘクタールの休耕田を埋め尽くしたコスモスの花が咲き競う。「丹波紅葉三山」のひとつ円通寺では、真っ赤なもみじを楽しむことができる。
それでいて丹波市は意外なほど交通の便がいい。大阪からも神戸からも車ならほぼ1時間。日本海側の舞鶴港へも50分前後で行ける。しかも今はインターネットインフラが整っているため、コミュニケーション品質は全国均一。ビジネスで求められる大容量データのやりとりもストレスなく行えるから、仕事をするには場所を選ばない。
そうした点に着目し、丹波市にオフィスを開設したIT企業からは「自然豊かな環境で通勤のストレスもないため、社員のクリエイティビティが刺激される」という声が出てきている。もちろんその背景には丹波市側の受け入れ態勢が整っていることもある。同市はIT関連事業所振興支援事業補助金制度で、建物賃借料や通信回線使用料を3年間補助するなどの優遇策を設けている。兵庫県にも同様の補助金制度があり、両方を活用すれば建物賃借料はなんと75%も補助されるという手厚さだ。
さらに丹波市へ転入した従業員が市内で住宅を新築・新規購入または改修した場合には、定住促進のための住宅補助金制度を利用することもできる。市は「定住」「移住」を専門に扱う部署も設けており、新住民が早く地域になじめるような支援策も推進している。
また兵庫県内の武庫川女子大学、神戸芸術工科大学、湊川短期大学の3校と就職支援に関する連携協定も結んでおり、学生に市内の企業を積極的に紹介。企業立地において欠かせない、人材の確保の面においても優位性を持っている。
工業団地は坪単価3万円~4万円台
もちろん丹波市が誘致しているのはIT企業だけではない。市内には山南工業団地など複数の工業団地が整備され、すでに大手化学会社や大手食品会社の工場などが立地している。こうした企業が丹波市を選んだ理由としては、(1)交通の便が良くて地価が安い、(2)良質な地下水が豊富、(3)地域住民が勤勉で離職率が低いことなどが挙げられている。(1)については、工業団地でも坪単価は3万円台から4万円台。市内には空き工場や空き倉庫もあり、それを活用すれば低コストでスピーディに工場を稼働させることができる。(2)については、井戸水がそのままでも飲用に適するほど良質で、水量も豊富だから、水を大量に使う工場なら水道料金の削減につながるメリットもある。また(3)については、多くの企業が「とにかくまじめ」「嫌なことでも率先してやる」と口をそろえて評価する。
丹波市は、以前から積極的に企業を誘致しており、固定資産税相当額の5年間補助や工場等の立地に伴う用地費や建設費の補助など、全国有数の優遇制度を備えて立地企業を全力でサポートしている。この秋からは、さらに補助メニューを拡大し、国や県の施策も大きく取り入れ、さまざまな立地ニーズに応えようとしている。
丹波といえば、黒豆や栗の産地として知られるが、こうしてみると企業立地にも好条件がそろっていることがわかる。IT企業の本社やサテライトオフィス、製造業の工場など事業所の移転や新設を計画している企業は、丹波市も候補地に入れて検討してみてはどうだろうか。
地方ビジネスの今をInterview
ランサーズ代表取締役社長CEO 秋好陽介氏に、地方ビジネスの現状とそのメリット、今後の展望について取材した。